主にディナータイムで働いていたのは、専門学校や短大,四大の学生だった。気配りや目配りが高校生とはこんなに違うものかと、非常に驚いた。トレーニングされてたことがきちんと身についているし、それを褒めたら、「他店より高い時給を貰っているのだから、それなりにきちんと仕事をしなくちゃ。」という返事が、異口同音に返ってきた。
そんな彼等もやはり人の子、ちらりと「お腹空いた…」と本音がこぼれる。そこで私は、職場の或るイベントで、個人的に作っている“おやつ袋”を、支配人以下全員分を用意して、店に持参した。思いがけない差し入れに、両腕で抱きしめながら礼を言いに来た学生スタッフが何人もあった。

また、意外にも、ランチタイムのパートスタッフにも好評だった。日頃、茶菓子を貰っても、“お子さんたちに”とか“ご家族でどうぞ”と言われて渡されたら、彼女達は、まず、運搬役にならなければならない。食べられる順番は後回しになってしまう。
それが、“自分専用に独占なさってください”なんてメッセージ付きで受け取ったものだから、(瞬間的に)ギャルに戻って嬌声をあげたお母ちゃんスタッフもいたとか。


結局、“おやつ袋”は18人分を2回、作った。
支配人は、高校の文化祭の縁日などで扱っているような、駄菓子屋の出来合いだと思ったらしい。徳用袋などからの小分けだと説明したら、目を丸くして驚いたΣ(゚ロ゚ノ)ノ。
あまり気を遣わないでくれ、と支配人やスタッフたちから言われたが、私としては、いつも何時でも、気持ち良く、笑顔で接客してくれることへの
感謝の一片でしかない、と返事をした。


それから少し経って、ランチタイムのスタッフたちと支配人と主任は、“ちょ~、ビックリ!!”する差し入れを二つ、受け取ることになる…。


そう、「スーパーの棚に並んでたから、買ってきた。」だけのことでしかないのだが。
桃屋の「辛そうで辛くない…」の『食べラー』を、すんなりゲットしてきた。ひとりにつき1個ずつ、謹呈させて頂いた。

約ひと月後、売れ筋2番手、S&Bの「ぶっかけ…」も別のスーパーですんなりゲットした。ので、同様にプレゼントさせてもらった。



価格設定の基本形は、前回挙げた通りだが、実際は、この大手スーパーが毎月上旬に設定している「グルメウィーク」だの「お客様感謝デー」、店独自に・「感謝デー」(月に3回)・「レディースデー」(毎週水曜日)などがあり、“通常料金での営業”が、月に何日できたことやら。

目立って客足が減り始めたのは、首都圏の桜の開花が近づいてきた頃だったか。
ランチタイムは常連客でそこそこ埋まっても、夕刻からさっぱりぱったり、オーダーストップの30分前で閑古鳥が鳴くこともあった。

この店のみならず、周りの飲食店もそれなりに低迷状態だった。いや、現在進行形かも知れない。


私は自分のペースで、母の介護を終えると、店へ足を運んだ。朝も昼も、仕事に追われてしまうので固形物を口にすることもままならず、夕食が唯一の「自分に戻れて気持ちがほどける食事の時間」だ。
通い始めたのは、レディースデーの料金が、通常の半額にもかかわらず、食べ放題の範囲が同じこと,自分なりにしゃぶしゃぶの食べ方を考えながら箸を進める楽しさに気付いたことだった。
しかも、つけダレの薬味に大根おろしと下ろしニンニクが常置されていて、非常に重宝した。私の身体には、食後の血糖値の上昇を抑える貴重な食材だからだ。

次第に、通常料金でも足を運ぶようになった。
味に慣れて来ながら、飽きなかったのは、客の誰にも公平に,迅速に,丁寧に,そして笑顔で対応しているスタッフのありように支えられたからだ。
初めて行った日に、仕事上、過去に繋がりがあったスタッフの女の子に遭遇した。私のほうはすっかり忘れていたが、先方が覚えていた挙げ句に、キチンと様になった挨拶をしてきたので、驚いた。
彼女のお陰で私の職業がバレバレになったが、返って彼女達はリラックスして私と会話を楽しむようになった。
駅に隣接した、大手スーパーの中、いわゆる、レストラン街に位置していた。

駅…十数年前に、東京メトロ東西線直通で、西船橋から途中、北習志野(新京成線)を経由して勝田台(京成線)までの路線で開通。この駅に、上りの快速は止まらない。
また、後発の新路線ゆえ、初乗り料金が210円 と高い。東西線直通で都内に出ると、料金の3分の2がこの路線の額だ。

・駅が開業して、スーパーとは違う方向の徒歩圏内に、西洋風長屋群や一戸建ての住宅街が出来た。つまり、世帯主=(イコール)住宅ローンの返済者である。

・駅前に発着する路線バスや、スーパーが独自で運行する、団地の住民を主な対象としたバスは、コースによっては隣の政令指定都市にある団地まで、行かないと、集客数がままならない。これら住民の中には、この鉄道や駅の開業を待ちくたびれて、他所に転居して“代替わり”してしまった世帯も多い。
また、賃貸と分譲の両方を持ってもいるが、入居開始年の古さから、賃貸は建て替えの話、分譲は駐車場不足がネックとなって、空き家が埋まらない。


こういった、交通費や住宅環境,住民の経済力,家族構成,年齢層…外食に掛けられる金額や回数は、推して知るべし、となってくる。

更に。

“それはそれでいいんじゃない?”と言ってしまえばそれまでだが…

ファストフードも普通の飲食店も、共通点は“口に運ぶだけの状態で提供される”ことだ。

ところが、彼の所は鍋に入れる食材(主に野菜。肉は、注文した分をスタッフが持って来る。)を、客自身が量を考えながら選択して席に運び、鍋つゆの温まり具合を見計らいながら思い思いに食べる、言わば「客の自己責任の食事」だ。
食べ頃を見定めながら会話も楽しむ“余裕”も、大事な隠し味となる。

そして、自分の身体への投資の具体的な数字、つまり料金として、大人1人につきランチタイムで約1500円,ディナータイムが約2200円。

客単価が………違い………過ぎ………た。