1993年1月8日〜3月19日 全11話
毎週金曜22:00 - 22:54
TBS系列「金曜ドラマ」枠
「永遠の眠りの中で」
こちらはリアルタイムでは観ておらず、小学5年か6年生のころに再放送で初めて観た。
衝撃的な内容に心底驚くとともに、主演の新任教師役 真田広之の格好良さを初めて知った作品だった。真田広之はこの時32歳。
そう言えば、この物語には主人公二人の性描写はあっただろうか?
性描写無しにこの物語を書き終えたのだとしたら流石は野島伸司だな、と突然思い、観直すことにした。
大好きな作品なので観直すのはこれで確か7回目。
TBS野島三部作
1993年『高校教師』
1994年『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』
1995年『未成年』
全てTBS金曜ドラマ(22時台)枠
今も「愛」についてひたすらに書き続けている〈脚本家〉野島伸司のTBSで書いた、1990年代の代表的な作品がこの三部作。
第2回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞しメジャーデビューしたことから、それまではフジテレビで脚本を書くことが主だった。
このあとの野島伸司作品の多くで、挿入歌や主題歌に昔の洋楽が多々使われるようになるのだが、わたしはその選曲センスが非常に好きで、そこも野島伸司作品を好きな理由のひとつである。
主人公 二宮繭
当初は違う役者を予定していたようだが、主人公の女生徒 二宮繭役に桜井幸子が抜擢される。当時彼女は19歳。
19歳とは思えぬ色気、そして透明感がありながらどこか影を持つ彼女を抜擢したことが、この作品が大ヒットした一番の要因であるように思う。
「心配いらないよ。あたしがいるもん。あたしが全部守ってあげるよ」
冒頭でそう屈託のない笑顔で新任教師の羽村隆夫(真田広之)に言ったかと思えば、
羽村隆夫(真田広之)の家の前で雨でずぶ濡れになりながら切ない表情で
「会いたかったの。 先生に会いたかったの」
いきなりそう伝えるなどと、様々な表情を見せた。
これがすべて第1話でのシーンというのが驚きだ。
当時観ていた者は男女問わず、桜井幸子の可愛さに胸を掴まれたことだろう。
第5話 衝撃の一夜
サブタイトルの通り、この第5話で二人の関係が一気に進む。
二人は旅館の同じ部屋に泊まることになり、ここで教師と生徒という関係を越えて、初めて男と女として愛し合う。
それぞれの布団に入った二人は小指を繋ぎ、そのまま二宮繭(桜井幸子)が不安を語り始める。
「この前、言ったでしょ? 人間は3つの顔があるって。」
「ほんとのあたしを知っても… 嫌いにならないでね」
それを聞いた羽村隆夫(真田広之)は二宮繭(桜井幸子)の腕の傷にキスをする。
そこで場面は変わり、羽村隆夫(真田広之)のコートが二宮繭(桜井幸子)のコートの上に覆い被さるように落ちる。
実に〈脚本家〉野島伸司らしい描き方である。
そして後に、羽村隆夫(真田広之)は同僚の体育教師 新庄徹(赤井英和)に問いただされ、二宮繭(桜井幸子)と男女の関係になったことを告げた。
禁断の愛を越えて
それからは男女の関係を思わせるようなシーンは一切なく、第6話ではプロジェクターを使って影絵でキスをしたり、第10話では電車のドア越しにキスをしたりと、二人はプラトニックに禁断の愛を育んでいった。
二人の思いが通じ合えば合うほど、切なさを感じずにはいられない。
そして第9話、羽村隆夫(真田広之)は以前から近親相姦していた実父 二宮耕介(峰岸徹)のもとから二宮繭(桜井幸子)を助け出す。
しかし、父と娘がそのような関係だったことを羽村隆夫(真田広之)は結局心から許すことが出来ないまま、時が過ぎてゆく。
「生まれて初めて、愛しているという言葉を口にした。あの時の僕は、一方で君に、まだ拭いきれない嫌悪感を、抱いていた。」
ラスト
「あたし先生と普通の恋がしたかった。」
「バカだねあたし、自分はちっとも普通じゃなかったのにね」
羽村隆夫(真田広之)は空港で二宮耕介(峰岸徹)を刺してしまう。
刺した後、何かから解放されたような表情で少し微笑む羽村隆夫(真田広之)は、どこか寂しげにも見えた。
そして、刺された二宮耕介(峰岸徹)は羽村隆夫(真田広之)にこう指示する。
「このまま家に連れて帰ってくれ。誰にも気付かれないように。早く」
家に着いた二宮耕介(峰岸徹)は自ら家を燃やし、死んでしまう。
それは今まで苦しめていた二宮繭(桜井幸子)を解放するためだったのか。自分への戒めだったのか。
おわりに
「いつか君と僕は、同じ一線で結ばれた、優しい放浪者だった」
最終話の新潟でのラストシーンについては、当時から謎とされ、さまざまな解釈がなされている。
二宮繭(桜井幸子)を置き去りにして、駅のホームに一人現れた羽村隆夫(真田広之)を見送りに来た新庄徹(赤井英和)とのやり取りが、最後とても印象的だった。
「お前まさか死ぬつもりやないやろな」
「僕にはそんな勇気はありません」
わたしには彼のこの言葉は本心だったように思える。
本当に一人で死ぬ気は無かったのではないかと。
そして、新潟へ向かう車内に突然、二宮繭(桜井幸子)が制服姿で現れる。
この時に彼は死を決意したのではないだろうか。
一人では死ねなかった彼の背中を押したのが、彼女の存在だったように思えてならない。
「僕は今、本当の自分が何なのか分かったような気がする。いや、僕だけじゃなく人は皆、恐怖も怒りも悲しみもない。まして名誉や地位や、すべての有形無形のものへの執着もない。」
「ただそこに、たった一人からの永遠に愛し、愛されることの息吹を感じていたい。そう、ただそれだけの無邪気な子供にすぎなかったんだと…」
by.ドラまいまい