新説『マジすか学園4』
#3991『そのアイドル、天然につき141 ゆうゆの気持ち』
『ゆうゆの考えたことって凄いと思う。だけど七瀬さんたちはどうなったの?山荘ではあんなことになったくらいだから、こんな結果を許してくれないんじゃないの!?』
肝心な部分を、ゆうゆが深刻な表情で伝える。
『それなんですけど、ゆうはもう七瀬さんたちに会いに行くことは無理なんですが、意識の交流はできています。七瀬さんたち、山荘ではあんな行為に出てしまったんですけど、あれから時間が経って冷静に考えられるようになったせいか、もう同じことはしないからという気持ちを伝えてくれました。運命を受け入れたのだと思います。それから茜さんや刑事さんたちに酷いことをしてしまったと、謝罪の気持ちを表しています』
今さら謝罪と言われても、茜は返す言葉が見つからない。何しろ相手はもう生きていない人たちなのだ…。それは今泉たちも同じ気持ちのようで、誰もが神妙な顔つきで黙っている。するとゆうゆが再び喋り出した。
『七瀬さんたちは、もう地上から離れる決意をしたようです。ゆうも今後交流を図ることはないと思います』
そのあとゆうゆがくるりと顔をそむけ、背中を見せた。短い時間だったが、最期の時間を過ごしただけに込み上げるものがあるのだろうと、茜はゆうゆの心中を察した。あとは友達の瑠夏と成美に任せておけばいいだろうと判断し、ここで切り上げることにする。席を立ってみんなで会議室の机と椅子を元の位置に戻す。
そのあと会議室を出ようとしたら、ねるが話し掛けてきた。
『今回のこと、私たちは黙ってることにしたけど、警察はこのままダンマリで乗り切れると思ってるの?』
茜が気楽に答えておく。
『さぁー、ここからあとは私たちの仕事じゃないから知らないよ。でも次から次へと新しい事件や事故が起きてるんだから、これ以上何も新しい発見がなかったら、徐々にみんなの記憶から薄れていくでしょ。現に世の中には未解決事件なんて山ほどある訳だし、そういうもんだから』
『ふぅ〜ん。まぁ、そうだといいけどね。それより今回の件で酷い目に遭わされたんだから、食事くらい奢ってよ。そのくらいしてもらわないと気が済まない』
『はぁ?何を言ってるの。口止め料としてガッポリ頂くんでしょ。こっちが奢ってもらいたいくらいだわ』
そんな軽口を叩いていたら、気を取り直したゆうゆがリュックを背負い、瑠夏たちと前に立ったので、茜が声を掛ける。
『3人ともお疲れさまでした。捜査に協力してくれて、本当にありがとう。数日中にきちんとした形でお礼をするからね』
するとゆうゆではなく、瑠夏が目を輝かせる。
『ホントですかぁ!でしたら食事をご馳走してもらえたら嬉しいです♫』
『食事くらい好きな物をお腹いっぱい食べさせてあげるわ』
成美からも希望が出る。
◇続く