新説『マジすか学園4』
#3990『そのアイドル、天然につき140 ゆうゆの行き先』
ねるの返事を聞いた本部長が、満足そうな笑みを浮かべる。
『よーし、これでお互い合意に至ったな。一件落着だ。我々はもう戻る。あとのことはまた連絡する。守屋たちはこのあとどうする?』
茜が感情を押し殺して答える。
『そうですね。私たちだけでもう少し話したいことがありますから、この部屋を使ってもいいですか』
『ああ。構わん。ただし考えが変わったというのは勘弁してくれよ。それとゆうゆたち3人を自宅まで送ってあげてくれ。パトカーはこっちで用意する』
『はい。承知しました。それではお疲れさまでした』
茜は本部長たち6人に、すぐ会議室から出て行ってもらいたかった。一刻も早くゆうゆに聞きたいことがある。
6人が出て行くと、自然の流れでみんながゆうゆを囲むような形になった。すると茜が聞く前に、ゆうゆの方から喋り始める。
『どういうことなのか教えて欲しいって顔していますね。じゃあ、今から話します。前にも言いましたが、ゆうがもう1度七瀬さんたちに会いに行くことは不可能なんですけど、その代わりにあることを思い付きました。そのためには、目を閉じて集中しなくちゃいけません。でもここで突然そんなことはできませんから、どうしようと思っていたんです。そうしたら本部長が七瀬さんたちのフルネームを聞いてこいと言ってくるので、それに乗っかりました。ゆうが戻ったのは、今から2時間くらい前の欅署です。七瀬さんたちの遺体が消えた直後で、報告を受けた本部長たちが別の会議室に集まり、あの6人で相談しているところに現れました。実際に会うのは初めてなんですけど、ゆうが心霊能力を持っていることは、ある理由で分かってくれました。警戒されている中、鍵の掛かった部屋に侵入できるはずないし、何よりも決め手になったのは、ゆうの身体を触ろうとしても、手が通り抜けてしまうことです。これで完璧でした。こうしてゆうのことを分かってもらってから、山荘で起きたことを話すと、すぐに信じてくれました。ゆうは今から2時間くらいあとに茜さんたちと欅署に到着し、会議室にやって来ますと教えてから、会議での流れを確認しました。これでうまくいったんです。なかなかいい方法だと思いませんかー』
ゆうゆの長い説明を聞いて、茜はこういう手があったのかと感心してしまう。突然現れたゆうゆが、身体の中を手が通り抜ける幽体のような存在になっていたら、頭が固いあの人たちも信じないはずがないだろう。会議の最中、やけにあっさりと話が進んでいくなと感じたのも、こういう理由だったのだと今になって納得だ。
◇続く