新説『マジすか学園4』
#3985『そのアイドル、天然につき135 会議の駆け引き』
欅署の会議室で、茜が心霊捜査の結果をトップたちに報告した。
今は全員が腕を組み、『うーん』などと唸っている。頭から否定されると思ったが意外とそうでもないのは、消えた遺体のことが影響しているのだろうと茜は推測する。あるいはゆうゆがかつて通り魔事件を解決したので、その能力が信頼されているのかもしれない。もしかすると、自分たちに黙っている別の情報を掴んでいる可能性もある。そこで先輩の警部が喋り始めた。
『やっぱりそんなところか。実際、我々もこの事件は常識では考えられない裏があると読んでいる。遺体が消えたということも含めてな。それでも話の内容は想像以上だったが、その一定期間というのはどのくらいなんだ?』
茜が即答する。
『ざっと、25年だと思います』
『25年かー。身元が分かれば追跡することも可能なんだが、どこの誰なのかもさっぱり分からんからなー。遺体の顔写真を加工して公開すれば身元はすぐに判明するだろうが、そんな訳にいかんし』
ここで茜が補足する。
『ただゆうゆの話では、その女性たちの25年間というのは、実際に暮らしていた訳ではなく、脳の中で幻想を見せられていたか、それともニセの記憶を埋め込まれた可能性があるそうです。6人の中には山荘に来る前、自分の小さい頃の遺影が部屋に飾ってあるのを見た人が何人かいたそうです』
『ふーむ。まるでSFの世界だな。その6人というのは、どういう人たちなのか聞いたか!?』
ここで茜が目線でゆうゆに返答を促す。そしてゆうゆが立ち上がって話し始める。
『はい。名前は聞きました。七瀬さん、美彩さん、玲香さん、沙友理さん、一実さん、佑美さんです。職業も話しているのを聞きました。中には「オズの魔法使い」でドロシー役のミュージカル女優さんや、デザイナー兼モデルさんの人がいましたが、ゆうの記憶では実際に見た覚えがありません』
『やはり現実の世界で25年間暮らしていた訳ではなさそうだな』
『あっ、でもゆうが知らないだけかもしれません…』
『6人の名前が分かっているのなら、調べてみれば該当する事故があるだろう。死亡届も出ているだろうし、遺族に電話して裏を取るという方法もあるが、名字は聞いていないのか!?』
ゆうゆが首を左右に振る。
『名字までは聞いていないです』
『そうか。この件はあとで調べさせることにする。小さな子供の死亡事故なんてたくさんある訳じゃないから、すぐに分かるだろう。肝心なのはこれからどうするかだ。守屋、おまえはどうしたらいいと思う!?』
それをこっちに聞いてくるのかと茜が思う。つまりこれは上層部でもこの奇想天外な出来事について、どう対応するべきなのか決めかねているのだろう。それならこちらも探りを入れてみる。
『現実に起こったことを、そのまま発表してみてはどうですか。霊安室から6人の遺体が突然消えて、何の形跡もないってことが分かってマスコミに面白おかしく書き立てられるくらいなら、心霊捜査のことも含めて全部公開するんです。ここにいるねると平手もそのつもりみたいですけど』
これで茜は言いたいことを全部言えた。
◇続く