新説『マジすか学園4』
#3983『そのアイドル、天然につき133 捜査本部との対面』
山荘から欅署に戻った一行が、会議室に向かった。先頭の茜がドアを3回ノックして『失礼します』と言いながら室内に入って行く。
北川も室内に入るとまずはドアの横にボストンバッグを置き、待ち受ける顔触れを確認する。今回の捜査で上からの指示を直接聞いたのは茜と愛佳だけなので、顔を合わせるのは初めてだが、男性6人のうち3人は予想していた通りだ。茜の先輩に当たる古株の警部が2人。あとは捜査本部の本部長を含む合計3人が、正面の長机についている。カーテンが閉められた窓際には、初めて見る男性3人が座っている。ただでさえコワモテの顔が一層険しく見える。恐らくこの心霊捜査に携わっている本庁のトップクラスで、キャリア組なんだろうと思う。そして自分たちは、上司と対面する長机に3個ずつ並べられた椅子に座った。
警部や本部長の目が、ある1点に集中している。北川が確認すると、ゆうゆ、瑠夏、成美の3人だ。1人は心霊捜査の高校生だと認識しているはずだが、茜が知らせていないと、友達2人が同行していることは知らないはずだ。この重要な会議への同席が認められるかどうか気掛かりだ。するとそんな事情を察したのか、茜が自ら切り出した。
『この子たち3人の中でツインテールにしているのが、ゆうゆです。心霊捜査に協力してくれました。あとの2人はゆうゆと仲良しの瑠夏と成美です。ゆうゆが一緒にいて欲しいと言うので、今日の捜査にずっと同席していました』
すると茜よりずっと年上の警部が渋い顔になる。
『そうか。部外者の友達2人が一緒だったのか。まぁいいが、今から始まる会議は席を外してもらおうか』
これには茜がどう出るのだろうかと北川は耳を傾ける。
『この2人は心霊捜査の場にずっと立ち会っていましたから、詳しいことを全部知っています。もしここで席を外したとしても、あとからゆうゆに話を聞けば同じことだと思うので、同席を認めてもらえませんか』
『だったら好きなようにしろ』
『はい。ではそうします』
茜の主張が通ったなと、北川は思う。一方で記者のねると平手の存在について何も触れてこないが、恐らく2人のうち、ねるが持ち前のコミュ力を発揮して普段から上司たちに取り入っているので、その成果だろうと思う。心霊捜査に記録係として立ち会うことが認められていたくらいだし。すると今度は『じゃあ早速、心霊捜査の詳しい内容を話してもらおうか』と、警部が切り出した。
ついにこの時が来たと、茜が身構える。心霊捜査で分かったことを全部話すつもりでいる。それで本部がどんな判断に出るかを待つ。もし隠蔽を選ぶのであれば、自分は取りあえず反対するつもりだ。山荘で起きた災難に、ここで再び襲われてはたまらない。
◇続く