#3851『マジすか学園4』 | 第7シーズン

第7シーズン

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新説『マジすか学園4』


#3851『🆕そのアイドル、天然につき01 ロケバスの本音』



スタッフが大声で叫ぶ『はい、カットー!』が響き渡り、「SF翼のない白雪姫」の撮影が終わった。カメラの背後で見守っていた欅坂6期生と美音や萌夏らのキャスト陣が駆け寄ると、ラストシーンに登場していた舞香とせなたんを囲み、『お疲れさまでしたー』と声を掛け合う。その中には人間に扮したミュータントを演じた男女10人の劇団員も含まれている。


発表会の舞台となった体育館は、近くにある小学校の施設を借りて撮影した。出演者たちの周辺はエキストラが演じ、体育館を埋めた群衆や、警察隊とミュータントの衝突は大部分をCGで再現する。辺りはすっかり暗くなっているが、真昼の場面なのでバックの映像をあとで加工する。


ここでスタッフから『早めの移動をお願いしまーす!』と、再び声が掛かったので、みんなはロケバスが停まっている空き地へと歩き始めた。


その途中、ミュータントの被り物を運ぶスタッフを見つけた萌夏が、『あーっ!ミュータントがいる〜!』と言いながら嬉しそうに駆け出した。他のみんなも加わり、数人ずつでスマホによる記念撮影を始めた。個人のSNSや番組ホームページに、この回の放送が終了した直後に上げる予定だ。


そこを切り上げて空き地に着くと、街の人々として出演したエキストラがロケバスに乗り込むところなので、『お疲れさまでしたー』と挨拶した。そのあとドラマの衣装をスタッフに手渡し、急いで着替えを済ませてから、もう1台のバスに乗り込んだ。番組スタッフが誰も乗っていないので、ここからは一段とリラックスできるし、気を使わずに会話ができる。


各自がいつもの"指定席"に座ってロケバスが走り出すと、早速由依が喋り始める。

『ついにこのドラマも、ミュータントが登場しちゃったねー。これまでに生き霊も宇宙人もレプリカントも出ていたし』

今泉が続ける。

『妖精とマーメイドもいたよ。まっ、SFと付いてるんだから何でもありだよね』

茜がそれに乗る。

『だけどさぁ、ミュータントまで登場しちゃったら、さすがにドラマとしてやばくない?』

ここで前田が加わる。

『平気平気。だって今や女子高生がタイムスリップして、戦時中の特攻隊員と出会って恋に落ちるくらいだから。かと思えば、大昔の中国で有名な武将がハロウィンの渋谷に転生して、シンガーソングライターに出会ったり、未来人のパトロール隊が現代に毎週現れて騒動を起こすとか、バスに乗ったり、トイレのポスターを剥がすだけで1986年と行ったり来たりするなんてのもあるよね。あとは、あの世から案内人が現れて、事故死した男の命を救う代わりに恋人が五感を1つずつ失うとか、感情の起伏が激しくなると過去に戻ってしまう病気を抱えてる話とか、相手の目を見ると心の声が聞こえるヒロインってのも普通にいるじゃない。ましてや、てちが弁護士になってしまうなんてドラマがあるんだから、ミュータントくらい全然問題ないでしょ。あははっ♪』

『さすがにあっちゃんは、ドラマについて詳しいね…』


そう言いながらも、高笑いする前田の言い草が気になる茜。揶揄された平手の反応を窺うと、相手が最年長の前田だからなのか、嫌な顔をするどころか一緒になって笑っているのを見て、ひと安心だ。そこから始まったミュータントの被り物についての談義がひと段落ついたところで、有紀奈が名前を挙げる。

『だけど今週もゆうゆがおいしいところを持っていったよね。私たちは最初からずっと出ていて準備も移動も大変だったのに、クライマックスでいきなり登場して真相を暴露する役なんだから、印象度はNo.1じゃない』

みんなに振り向かれ、ゆうゆが仕方なく喋り始める。



◇続く