＃3850(15/15話)『マジすか学園４』

新説『マジすか学園４』

＃3850(15/15話)『アイドルに転職は難しい200 "せなたん"からのメッセージ』

「ＳＦ翼のない白雪姫」(最終話)

みんなの前に現れたせなたん。

『もうこの街には来ないよ。今度はもっと遠く離れた別の土地に行こうと思ってる』などと口にするので、茜と愛佳が呆れて言葉を失うと、代わりにモエが話し掛ける。

『じゃあ聞くけど、どうしてカプセルを盗むフリしてまで、モエたちに近付いたの？』

せなたんがモエの方を向く。

『この街のことをこっそり下調べしてる時に、モエちゃんたちの路上ライブを見掛けたの。私たちが住む世界には歌もギターもないから、みんなの歌が素敵だなぁと思って仲良くなりたかったから、あんなことを考えたの。ごめんね。でもみんなと一緒に過ごしてる時は本当に楽しかった。みんな優しかったし』

モエが思い切って聞いてみる。

『せなたんが住んでる世界って、どんなところ？』

『太陽の光も僅かしか届かないし、薄暗くて寒いところだよ』

『そんなところで暮らしてるの！？だったら、せなたんだけでもモエたちと一緒に暮せばいいじゃない』

せなたんのことを思う優しい気持ちのモエだが、さすがに姉のユキが『モエ！』と注意する。さらに由依が警戒する。

『ちょっと待ってよ。その話、何か変じゃない。あんな凄いカプセルを発明してるのに、どうしてそんな薄暗くて寒いところに住んでるの？もしかして、またうちらのことを騙そうとしてるんじゃないの』

由依の発言で、せなたんの目つきが険しくなる。

『だったら、私が暮らしてる世界を見せてあげようか』

『えっ…』

こんなせなたんを、白雪姫は初めて見た。これはもしかして危険なことが起こるかもしれないと、嫌な予感がする。すぐにさーなんの方を見て意思の疎通を図るが、既に遅かった。せなたんが『こういうところだよ！』と言った直後、床に大きな亀裂が走り、すぐ真っ二つに割れた。急に立ち位置を失った白雪姫。自分だけではないということは、何人もの悲鳴で分かる。何とか床の端を両手で掴んで持ちこたえが、次々と底に落ちて行く仲間の姿が目に入る。

さらに視界に入ったのは、地中から浮上してくる緑色の生物たちだ。ミュータントが自分たちと入れ替わってしまうのだろうかと思った時、とうとう力尽きて手を離してしまい、猛烈な速さで落下し始めた。白雪姫は怖くなってたまらず目を閉じた。風圧を感じて気が遠くなりかけた時、ようやくどこかの地面にたどり着いた。なぜか強い衝撃がなかったことに安堵し、恐る恐る目を開けてみると、そこはついさっきみんなと一緒にいた部屋だ。違っているのは、全員がしゃがみ込んで呆然としている点だ。これで同じ目に遭ったのだと理解した。せなたんの姿を探したが、付近には見当たらない。そして亀裂はどこにもない。一体自分は何を見させられたのだろうと、思わず頭を抱えた。

寮の外で、人間の姿をしてたたずんでいるミュータントたち。その中の"せなたん"が呟く。

『ちょっとやり過ぎたかな』

"舞香"が声を掛ける。

『あの人たちに服を返したいって話だったのに、何か言われてついカッとなったんでしょ。まぁ、しょうがないね』

"せなたん"が笑みを浮かべる。

『これまでに飲んだカプセルの中に、地面や床が割れて転落するという幻想を見る効果を組み入れておいたのが、凄く役に立ったね』

『その通り。もうここに留まっている理由はないから、早く次の土地を見つけて移動しなきゃ。今度は肝心な時に邪魔が入らないよう、ずっと遠くの場所を見つけないとね。人間たちの腐敗した脳を浄化してあげようとしてるのに、分かってない奴らばっかりで嫌になるわ。連中にこの地上を滅ぼされる前にやらないとね』

せなたんには気になることがある。

『あの体育館で吹き飛ばされたのは、一体何だったの？』

『あーっ。あれは不思議だったね。私も見ていてびっくりしたわ。私たちがまだ知らないことがあるのかも』

せなたんはまだ言いたいことがある。

『ところで、今度は私に舞香をやらせてくれない？』