#3808 『マジすか学園4』 | 第7シーズン

第7シーズン

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新説『マジすか学園4』


#3808『アイドルに転職は難しい158 桜花の願い』



午後5時からの生放送を控える日テレの楽屋に、出演者たちが集結した。


今日が2度目の出演になるあなんとみれいに、瑠夏が尋ねる。

『あなんちゃんとみれいちゃん。今日は最初の方で2人のコーナーがあるんだって。ユニット名の発表をするんだよね。可愛い名前にしたの?』


みれいが目を輝かせながら、瑠夏を見る。

『はい。あなんちゃんと2人で決めました✨』

『どんな名前だろう?まさか、"みーなん"ではないよね』

『みーなんだと思いますか?』

『違うんでしょ』

『はい。違います』

『だよねー。そのまんま過ぎるもんね。何て名前なの?』

『名前は…』


みれいが言い掛けた時、MCの美音が止める。

『ちょっと待ったぁ!ユニット名の発表は放送の中でってことになってるから、フライングは禁止だよ。私も楽しみにしてるんだから、もうちょっと待つ』

『あー。そうなんですね。分かりました』


瑠夏が引き下がったところで、ピースが気になっていることを桜花に指摘する。

『桜花ちゃん。今日の格好は凄いね。そのまんまでリニアに乗って、名古屋からここまで来たの?』


桜花がポーズを取る。

『さっきもあなんちゃんに聞かれたの。もちろんこの服でリニアに乗ったんだけど、何か問題ある?』

『いや。別にないけど…』


ここでリオンが会話に加わる。

『桜花ちゃんて、先週は駅員の制服でやって来て、本番中にはお巡りの制服でテレビに出てたくらいだから、少しくらいおかしな格好で移動するのも平気な子なんだよ』

桜花が注意する。

『リオン先輩!駅員の制服ではなく、JR東海様の制服です!それにお巡りの制服ではなく、愛知県警様の制服ですから、そこのところは呼び方に注意してもらえますか。あとおかしな格好ではなく、リスペクトを込めた制服ですから』

リオンが『はい、はい』と肩をすくめたのを見て、桜花がピースに矛先を向ける。

『ねぇ、ピース。あなんちゃんとみれいちゃんが今日も1曲歌うんだってね。だったら私にも1曲も歌わせて欲しいんだけど』


"ヤレヤレまたか"と思いながら、ピースが対応する。

『同じことをカムカムフレイバーの子たちにも言ったんだけど、歌いたいなら持ち込み企画の中でやって。かなりの尺をあげてるんでね。そういうことだから』


諦めない桜花。

『持ち込み企画とは違う枠で歌いたい。そのために今日はこの衣装を着て、気合を入れてきたんだから。私の「好きになっちゃった」だけ、1度もテレビで歌えなかったの。ピースがいた頃は、こんなこと有り得なかったでしょ。もう諦めちゃおうかなと思ったんだけど、よく考えたら全国ネットで人気のこの番組があるじゃないっ。だからお願い、歌わせて!』

一定の理解を示すピース。

『うーん。それは可哀想だと思うし気持ちも分かるけど、桜花ちゃん1人だけで歌うとなったら、すちーずのメンバーから文句が出ない?』

『それだったら平気。亜柚香と愛理と特別に初夏がバックコーラスをやってくれるの。名古屋で練習してきたからバッチリなんだけど』

『へぇー。よく3人がバックコーラスで我慢したね』 


桜花が言葉に力を込める。

『私の仲間だからよ!アイドルたるもの、常に仲間意識を持って活動すべし!』

『じゃあさぁ、シャチホコセブンの番組で歌えばいいじゃない。向こうが本拠地なんだし』

『向こうはローカルで30分しかなくて短い上に、来週は水泳大会なの。水着にならないと競技に参加できないそうだから、水着なんかになりたくない。水着になる気があったら、もうとっくになってるよ!』

『なるほどね。だけど1つ気になることがあるんだな。リオンは先輩呼びで敬語なのに、何で私のことはピース呼びでタメ口なの?それが納得できない。私はリオンよりずっと先輩なのに』

思わぬ指摘を受けた桜花だが、すぐに切り返す。

『えっ、そこ!?リオン先輩には私が研究生だった頃、親切にしてもらったの。でもピースとはすれ違ってて交流がなかったよね。ツーショットを探しても見つからないし。タメ口なのは、この番組で初めて挨拶した時、「私のことはピースと呼んで、気楽に喋って」と言ったからじゃない。それにピースはニックネームでしょ。リオン先輩はリオンって名前なんだから』





『う〜ん。そんなようなことを言った覚えもあるから、その件はもういいよ。でも歌の方は時間がないんだから、どうしても歌いたいなら、持ち込み企画のスタートを遅らせるしかないよね。よこにゃんや優莉奈が何て言うか知らないけど』

あっさり引き下がる桜花。

『あー。分かりました。もういいです。諦めます。お騒がせしました!』

『そうなんだ…』

桜花に何か魂胆がありそうだが、いちいち気にしていられないので、ピースはもう放っておく。


桜花もこの結果は想定内だ。枠を用意してもらった方がインパクトがあって歓迎だが、それは諦めた。他に方法がある。持ち込み企画の後半はぶっつけのアドリブで進めることになっているので、何とかするつもりだ。



◇続く