#3200(16/16話)『マジすか学園4』 | 第7シーズン

第7シーズン

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新説『マジすか学園4』


#3200(16/16)『君のことをもっと知りたい150 嘆きのマーメイド』



「SF翼のない白雪姫(最終話)」


由依が群衆たちに命を狙われたのは、「3D体感シアター」で観た映像だった。

店の外に出ると、レプリカントとして映像に出ていたひな乃と君江が、声を掛けて来た。どうやら実際は、ホテルの従業員らしい。

『さっきと雰囲気が違いますね。声を掛けてもらわなかったら、気付かなかったです。お仕事、終わったんですか?』と梨加に聞かれ、背が高い方の女性がハキハキと答える。
『はい。私たち今日は遅番で、ついさっき終わりました』
菜々香も声を掛ける。
『夜遅くまで、お疲れさまです。あのう、私たちとここで会ったことは、ホテルに残ってる子たちには黙っててくださいね』
今度はもう1人の女性が丁寧に応じる。
『はい。かしこまりました。もちろん黙っています。みなさんはこれからホテルに帰られるんですか?』
モエが即答する。
『違うのー。今から何か食べに行くの。お姉さんたちは?』
『私たち、実はこれからクラブに行くんです』
首を傾げるモエ。
『クラブ?こんな夜遅くに運動するの?』

ホテルのお客が相手なので、笑うのは失礼だと思ったのか、最初の女性が真顔で教えてくれる。
『クラブというのは、好きなドリンクを注文して、自由に好きな場所で飲みながら、音楽に合わせて踊るフロアがあるところです』
モエが目を輝かせ、『モエも行きた~い』などと言い出すと、他の者たちも初めてのクラブに興味津々だ。

一方で由依は、この展開はいったい何だと思わずにいられない。2人がホテルのフロント係だということは、思い出した。今日ホテルに入った時、都会らしくて洗練された綺麗なお姉さんだなと、強く印象に残ったからだ。ホテルの制服を着ていたし、きちんと髪を束ねていたので、自分よりも年上だろうと思っていたが、仕事を終えたプライベートの姿を見たら、逆に少し年下に見える。それにもっと奇妙なことは、2人がこれから行くと言ったクラブの説明が、3D映像で観たあの店の店内とそっくりだ。由依は嫌な予感がしてしまう。2人の服装こそ、3D映像では身体のラインに密着したニットに革ジャンだったのに比べ、今はごく普通のセーター姿だが…。

そんなことを由依が考えているうちに、みんなもクラブに行くという流れになった。これはこの先とんでもない事件か事故に巻き込まれるのではないだろうかと、不安に襲われる。あの3D映像が、実は不吉な予知夢だったのではないかと…。それで歩き始めたみんなから、ポツンと取り残されてしまった。今泉が『ゆいぽん、どうしたの~。一緒に行かないの~?』と呼んでいる。そこで由依は閃いた。真実を突き止める良い方法があることに。すぐに駆け出し、ポカンとしている今泉を追い越して先頭に出る。そして問題の2人に聞いてみる。
『あのー、2人のあだ名って、ひなぴよときみちゃんですか?』
3D映像で何度も聞いていたのと同じで、ひな乃が良く通る声で喋り出す。
『はい、そうです。でもどうして知ってるんですか?2人で呼び合っているあだ名なんですよ』
君江の方は、3D映像で観たクールな瞳を大きく見開き、言葉もないという感じだ。周りもざわつく中で、由依は最後の切り札を突き付ける。
『2人って、1つだけ夢を叶えてくれる妖精がいるって話を知ってるんじゃないですか!?』

ひな乃と君江が顔を見合わせる。そのあと君江が喋り出した。今までと口調が違う。
『何で妖精のこと、知ってるの…』
君江の様子が変わり、由依は腰が引ける。そして今度はひな乃だ。
『妖精が1つだけ夢を叶えてくれるってことは、絶対人に話しちゃいけないって約束したじゃない!どうして破るの🗯️破ったらどうなるか覚えてる?』
似たような会話を、映像の中でひな乃がモエとしていた記憶のある由依だが、約束を破ったらどうなるかなんて話は、していなかったはずだ。いったいどう答えたらいいのか、頭が混乱する。すると君江が怖い顔をして迫って来た。
『おまえをレプリカントにしてやる!!』

とうとう3D映像の内容と現実が一致し、由依はこの不可解な謎が怖くなった。君江に対して恐怖を感じ、一目散に逃げ出した。君江が追い掛けてくるかは分からないが、後ろの方から届く、ひな乃のよく通る甲高い笑い声が耳に残ってたまらないので、聞こえなくなるくらい遠くに逃げようと、思い切り駆け出した。


「SF翼のない白雪姫」

              <終>