執着 | 秘密の扉

秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

何度自分に言い聞かせても、どうしても若さに対する執着が捨てきれない。その執着がある為に、無駄に傷ついたり散財したりすることに自分で気がついている。
現実を見つめるのは辛いけれど、それに目をつぶって既に失ったものにしがみ付いていることのほうが痛々しいと知っている。


何歳になったから若くないとは思わないけど、肉体だけでなく気力や好奇心まで失われてしまっては自分のアイデンティティに関わってくる。それが辛かった。
髪の生え際、分け目のところにイキナリ白髪が10本近くまとめて生えて追い討ちをかけてきた。


若かった頃は何も失うものはないし、いくらでもやり直しが利くと自分も周囲も思っている。
何も持たない若さが唯一の武器だった。
今はいろいろな経験を積んで知恵や教訓を学んだ。それを生かしていけば良いだけのこと。
武器が変わったのだ。
ほら、こんな風に自分に言い聞かせている。


この間の誕生祝の別れ際、美味しかった魚の話をしていた。
「doorも脂が乗って美味しく熟した○歳になるんだよ」
と、たかしが言う。
「まだ熟していない?」
自分ではもう発酵してきているんじゃないかと思っていた。
「うん、まだまだもっと美味しく熟すから」


確かに私は未熟だ。そして未熟で上等と思っているくらいまだ青い。
うん、それぐらいの気力は残っている。


好きな人の言葉は魔法だ。