クラスⅢa | 秘密の扉

秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

性交後出血があったので婦人科に行って検査をしてもらった。今までにそんなことはなかった。そんなに激しかったわけでもないのに。


当初、診察の所見は問題無しだったが、細胞診の結果がクラスⅢa と出て、少なからずショックを受けた。まだ異形成の段階だから、クラスⅡに戻るまで、これから3ヶ月に一度の検診ということになった。


狭山湖へのドライブ。不安で一杯になる。


「なんか自分が死ぬとか、病気になるなんて私あんまり実感してなかった」
「まだ病気じゃないよ」
「うん」
ドライブの途中ずっと手を握っていてくれた。


「仮にがんになっても、そうやって検診していればすぐにわかるわけだから大丈夫だって頭ではわかっているの」
「うん」
「でもなんか、やっぱり不安」

狭山湖を望む公園をたかしと歩く。3,4ヶ月前もここに来た。
「うわ~まだセミが鳴いてるね」

さすがに盛りの頃とは違うがあちこちから聞こえてくる。


3年前、ここには他の男性と来た。日にちまで覚えている。11月3日だ。あの時寒空の下、季節外れのセミが1匹だけ、死んだように鳴くこともせずじっと木の切り株にしがみついていた。
そのセミと自分を重ね合わせて哀れに感じたものだ。

前は「死」は怖くなかった。今は「生きたい」と強く思うゆえに「死」を恐れる。



帰りのドライブも痛いほど手を握ってくれた。
「door、大丈夫だから」


不安に対処するやり方は自分でもわかっている。


たかしの父親も先週倒れた。幸い処置が早くてそれほど深刻ではない模様だ。


私たちの周りも少しずつ変わっていく。そして私たちも。