帽子の匂い

一週末逢えないと2週間間逢えない事になる。
年末で忙しくて2週逢えないということは3週間逢えないということだ。
ずいぶん前から分かっていて、お互いに一緒に有給を取ろうとしていたけれど、やはり仕事は忙しく休めなかった。帽子などはとっくに編みあがっていて、渡す日を待つばかり。

あと一週間の辛抱を覚悟していたら、金曜の夜、私のアパートの前から電話がかかってきた。
ちょうど「Calling You」の記事を書いていた。

とても嬉しかった。

車の中から見える夜空には星が瞬いて、電話じゃないたかしの声が耳に優しい。

私が編み上がった帽子をたかしの頭にかぶせた。
「少し小さい？」
「いや、丁度良いよ」
束の間の抱擁、優しく甘い短い時間。
かじかんだ心を暖め合って、来る週に向けて発進するたかしの車を私は見送った。

翌日のメッセ。
「帽子、doorのうちの匂いがして、しみじみ嗅いじゃう」
「うちの匂いってどんな匂い？」
「お香の匂い」
日頃焚いているＣｈａｎｄａｎやＲｏｓｅのお香の匂いだろう。
「匂いを嗅いでたら切なくなった」

忙しければあっという間に時間が経つはずなのに。たかしとの時間もまたあっという間に過ぎてしまう。

一緒に行きたいところ、したいことはたくさんあるのにね。

秘密の扉