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Doodlin' Records

神戸元町のバー「Doodlin'」店主がチョイスするジャズレコード紹介。
勝手気ままに書かせていただきます。

今もバリバリの最前線で活躍する名ドラマー、ジャックデジョネット氏。マイルズ、チャールズロイド、キースジャレットなどのグループでの錚々たる活躍は、常にジャズの進むべき方向性を示しており、正に時代をリードし続けた偉大な人物といっていいでしょう。

ただし、個人的に好きかどうかと問われれば、これがそれほど好きなドラマーではない。理由は一つ、やたら難解で真面目すぎるから。何というか彼のドラミングには、僕がつい求めてしまうユーモアを含んだ痛快さや、ジャズ本来持っていなくてはならない楽しさが欠けている気がするのだ。多分性格自体がストイックなんでしょう。とにかくお固いイメージがあって僕には合わない。

と、この作品にめぐり合うまでは思っていました。

1982年にECMから発表された本作は、恐らくジャック自身が組んだグループ、スペシャルエディションの最も初期のものであろう。僕はこのグループには何の思い入れもないので、中古レコード屋で発見しても普通なら名前を見ただけで素通りしてしまうはずだった。でもその時は、いかにもガラの悪そうな街でストリート演奏しているジャケット写真にまず目がいった。何かピピピと来たんでしょうな。そしてメンバーを見るとリードのジョンパーセルとトランペットのバイキダキャロルが加わっているではないか?この二人、僕の大好きな楽しい楽しいデヴィッドマレイのオクテットで大活躍してるメンバーなのよね。そして流石ハックルベリー、ここはナイスプライスの500円!デジョネットは嫌いだがこれだとはずしても痛くない。ソニーフィリップスを買うついでに購入とあいなった次第。

さて、店に帰って聴いてみた本作。恐らく当時のロフトなんかで活躍してたメンバーを従えて、よっぽど気があったのだろうか、またはよっぽど普段から気心が知れたメンツだったのだろうか?いつもの固いデジョネットよりも楽しく演奏している様にうかがえる。音楽自体もそれほど難解さはない。このあたりは流石ニューヨークの強者といったところか?なかなかいいやん、500円にしては。

そんな感じで聴き流していたところに衝撃が走ったのはB面に移って2曲目のタイトル曲だった。スットコスットコという始まりから聴こえてきたのは正にレゲエ。しかもあのボブマーリーそのものの様なのり。録音前年に亡くなったボブに捧げたのだろうか。恐らく高嶋忠雄のドレミファドンでかかると、数人はボブマーレーとフライングしているであろう。正解がジャックデジョネットの「インフレーション ブルーズ」と聞いても納得できないだろう。しかもジャックは歌まで歌っている。それにクレジットを見るとクラビネットも演奏してるので多分多重録音だろう。これにどんどんとホーンプレイヤーが音を重ねていく。明らかに楽しい。ジャック楽しいぞ!と叫びたくなったのも当然。

それにしても今までハードなジャズを展開していて、いきなり180度回転するこの面白さ、そして全員のレゲエの上手さ。恐らく人種のるつぼとうたわれたニューヨークでの音楽生活がそのまま表れているのだろう。高級ジャズクラブではない、ガラの悪い下町の、色んな要素が混じった生きたリズム。これこそロフトミュージシャンの本領発揮であり、そもそも僕が本作を聴くきっかけとなったジャケット写真の意味だったのだろう。

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「時は来たれり」と題された本作が発表されたのは1961年。

あの「フォーバス知事の寓話」を生んだアーカンソー州リトルロックの大学事件や、ローザパークスとキング牧師達によるアラバマ州バーニンハムのバスボイコット運動。そしてニューヨークはハーレムを舞台に過激な白人批判で名を高めたブラックモスレム代表マルコムXの登場などを経て、公民権運動の嵐が、それこそ「今こそか」と吹き荒れようとした「正にその時」を捉えた録音だ。

タイトル曲での限りなく力強い男女コーラスに、強烈なクリフジョーダンのブローを煽り立てるマックスのドラミングには「もう黙ってはいねえぜ」という彼の確信的といえる決意を感じさせられずにはおられん。

実際にこれほどまでに問題意識を全面に押し出したアルバムというのは、それまでのロックやファークの足取りをみても、所謂ジャズというジャンルに属する本作が最も初期のものであっただろう。後のソウルやフラワーチルドレン等にみられるこういった公民権を主張する運動やヒッピー文化などの大雑把なカルチャーも、当時はまだ形作られていなかったのではないか。
少女や子供を含む黒人デモ隊にホースで水をぶっかける白人警官。白人専用食堂に座り込む黒人達と、それをなじる白人グループなど、「映像の世紀」なんかで見た当時の混沌としたアメリカのニュース映像が、自然とそのままフラッシュバックしてくるこの音楽こそ、この運動のプロパガンダジャズとしての発端とみて誤りではなかろう。

そしてその音楽は今聴いてもリアリティーに溢れている。それも果てしなく深い機知にとんだ素晴らしい音楽性を持っての事であるのが本当に凄い。事実クリフジョーダン以下、リチャードウィリアムズ、マルウォルドロン、ジュリアンプリースター、アートデイヴィスといった当時の超俊英達をまとめあげた手腕は今では想像を絶するあまり。並大抵では考えられまい。

よって僕にはあの有名なワシントン演説のキング牧師と同じくらいの偉大さをマックスに感じるのだ。

マックスの勇気と才能に最大限の敬意を示したい。

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ホレスシルバー、1958年1月録音の大傑作アルバムの登場です。

アート ファーマーとクリフ ジョーダンがフロントに立った本作は、順番でいうと57年5月に録音されたアート ファーマーとハンク モブレイがフロントをうけもった「スタイリングス オブ シルバー」と、所謂黄金のクインテットとうたわれたブルー ミッチェル、ジュニア クックからなるフロントで59年2月に録られた「フィンガーポッピン」の中間に位置するもの。
ただ、後に発表された未発表のコンサート録音や、シングル用に録られた曲なんかをみるとトランペットがルイ スミスだったり、テナーが一足早くクックだったりと、この地点だけはメンバーが流動的だったみたい。よってこのフロントで本当にライブ活動などを行っていたのかは今考えると少し怪しい点もあり。でもお先に結論的に申しますと、ここでのクリフ ジョーダンがあんまりにも素晴らしく、頭ひとつ抜き出た存在感を放っているため、正直そんな事どうだってよくなってくるんですけどもね。

さて「未来への探求」という仰々しいタイトルがつけられた本作。かなり変わった進行を持つ「ジ アウトロー」などにその実験性が認められるのは確か。

しかしその意欲がありありと発揮されたナンバーがB面の1曲目に収められた「ムーンレイ」でしょう。優雅なテーマからシルバーグループの本領を発揮したグルービーなソロの応酬、そのうえかるく2曲分はあるセカンドリフでたたみかけ、そして優雅なテーマに戻る。その構成はまるで組曲。そしてその持って行きかたの上手さは正に絶品。これをファンキージャズの範囲内でやってのけているというのは信じがたい驚異といえましょう。あえて言えば格調高いスペクタクル娯楽大作映画を一本観たくらいの満足感が味わえると行ったところか。

B面ではその後、超アップテンポで大迫力の「サファリ」。清々しくスイングするスタンダードナンバー「イルウィンドウ」と流れていきます。B面のこの3曲を聴き終わるとまるで湊川温泉地下劇場でたっぷり映画を3本観たような達成感をえられること必至。3本も観たことないけど。

フロントが長続きしなかったためか、今いち評価が少ない本作。しかし今あえて宣言します。これこそがシルバー、これこそがブルーノートだと。

さてそんなシルバーの大特集。Doodlin'の第4回BLUENOTE MONDAYはいよいよ明日7月2日開催。まる1晩ブルーノートのホレス シルバーでお送りいたします。レア盤もたっぷり、ゲップが出るほどNシリーズも揃ってる。ぜひお立ち寄り下さい。

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※余談ですが、こないだアーネットコブのレコードを紹介した後、一体このAmebaにどのくらいコブの事を取り上げている人がいるのだろうと急に気になり、検索してみたら、ものの見事にたった今更新した自分のブログしか出てこなかった。悔しいので今度はホンカーで検索。出て来たのはテレホンカードのコレクションブログ1件でありました。まだまだ正しいジャズとしてのホンカーの認知度低し。ホンカーファン、ならびにテレホンカードファンのみなさん、まだまだがんばらないといけません!
全国の心ある音楽ファンのみなさま、お待たせいたしました。アーネットコブ先生のご登場でございます。

テキサス出身のとんでもないテナー吹きのこのおっさん。レスターヤング、コールマンホーキンス、デクスターゴードンなど、たいていのテナージャイアンツは後に研究され後継者が現れるものだけど、このおっさんの真似をしてる、いや真似が出来る人というのは今までにとんとお目にかかったためしがない。一体何を食うたらそんな音が出るのか。それほど個性的でごっついサウンドの持ち主といえるのであります。

そんな個性ゆえにか、はたまた性格の問題なのかはわからんのですが、残されたおっさんのレコードというのは、初期のビッグバンド物を除いて大半がワンホーンものかブローイングセッションもの。多分細かい決め事が嫌いだったのでしょうな。顔に書いてもある。

そんな中で僕の知ってるうちの唯一の例外がこの作品。オルガントリオにバスタークーパーというトロンボーンを加えてなかなかイカした、ソウルフルなバンドサウンドに仕上がっている。多少だが2管編成ゆえのアレンジがそこには存在しているのだ。これは常識的にはどう考えても普通なのだけど、おっさん的には意外や意外な一面なのである。やれば出来るやん、おっさん。といった所。

だけど一番大事なのは、それでもおっさんは全く小さくならずに、いつもの様に豪快に歌いまくっているという点。変わらないところはとことん変わらない。こんなおっさんがもし日本の総理大臣だったら、いいような悪いようなである。

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来週です!7月2日はBLUENOTE MONDAY

我が店の名前の由来になったホレス シルバー特集。もー好きすぎて今から興奮状態なり。
ポスターも出来た。レア盤も揃った。

それでは7月2日にお待ちしてます。ブロウ イン ザ ブルーズ アウェイ!

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マウントフジ ジャズ祭に初めて行ったのが、忘れもしない1987年。この時に出演したジャズメッセンジャーズのメンバーで、唯一その地点で名前を知らなかったメンバーがアルトのボビーワトソンだった。

テキサス男のワトソンはその地点のメンバーより数年前のメンバーで、このジャズ祭のJMでは特別ゲストでの参加であったみたい。そして僕はその数年前のJMに関してはまだ録音も聴いたことがなかったのである。そりゃ知らない訳だ。

しかし初めて聴いたワトソンのソロときたら凄いのなんの。とんでもなく早く、猛烈なエモーションで吹ききるその迫力に、ビックリしてひっくりかえってドイン!てな事になったのである。ワトソンは恐らくまだ場数をふんでいない若いメンバー(ジャボンジャクソン、ベニーグリーン、ピーターワシントン等)にカツを入れるためにアートブレイキーに参加を要請されたのだろう。その姿は正に大監督の下、容赦なしに千本ノックをくらわす鬼コーチにかぶって見えたのは言うまでもない。

結局このフェスティバルはこのワトソンの大活躍に終始し、祭の終了後には僕らはもうすっかりワトソンフリークになってしまってた次第。

ワトソンの方もこの活躍で当時バブリーだった日本のレコード界や、新生ブルーノートから次々にレコーディングの機会を得る事になった。しかも以前から契約していたイタリアのレッド レーベルなどからもリリースされていたので、またたく世界のジャズ界の時の人となったのである。

僕はフリークとして、その内から少ない小遣いながらも出来るだけのレコードを聴いてみる事にした。
するとどれもが考えぬかれた、非常に優れたアルバムに仕上がっていて、どれも満足のいくものであった。しかもワトソンはなかなかの曲を書く作曲家でもあったとも知るに至る。しかしスタジオ録音では当然ながらあのフェスティバルでみた、なりふりかまわず周りを蹴り倒すというヤクザの勇姿を再現出来ているものにはめぐりあえなかった。どうしても1枚は欲しい。

そこで手にいれたのが、もう少し前に録音された、その名も「ライブ イン ヨーロッパ」まったく知らないリズムセクションだ。

しかし聴いてみると、これこそが僕が求めてるワトソンそのもの。ここでのワトソンは吹きたおすことのみに己の信念のすべてをぶつけている。まさに鬼である。あまりの吹きっぷりに心底から呆れ返る事が何回あるやら。恐るべし孫悟空といった所だ。

ただしお世辞にも優れたアルバムとはいえませんけど。

その鬼ワトソンは今も世界のどこかで吹きまくっているのだろうか。出来ればもう一度生の姿を拝見したいものだ。

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本日24日、日曜日ですがDoodlin'は通常通り営業いたします。観光などで神戸におこしの方、今日はどこ行こかいなとお考えの方、お待ちしております。
宝塚記念が終了後から開店。コーヒーもあるでな。
またまた出ました凄い顔。目が顔から横にはみ出してるところなど、どおくまんの漫画に出てくるキャラそっくり。なつかしい「花の応援団」クエ!クエ!

冗談はさておき、この人は誰かと申しますと、現在活躍しているメシオパーカーやデビッドサンボーンの手本となったファンキーアルトプレイヤー、ハンククロフォード氏であります。惜しまれつつ他界したファットヘッド ニューマンと共にレイチャールズの楽団で名をあげた一人。

そういう関係でレイと同じくアトランティックから発表された本アルバム。タイトルがいいではないか「ブルーズさん」。
ようするに、この人にとっては一も二もなくとにかくブルーズありきという事か。といっても流石レイのバンドでならしただけあって、実にあっけらかんとしたポップなブルーズにしあがっております。

その意味では多分以後のポップス、R&B、フージョンなどに少なからずの影響を与えたであろうこの音楽。ただ聴きようによっては歌のない歌謡曲的な部分もあって、同時代の、例えばマイルスやミンガス、エバンス等の演奏こそをジャズと呼ぶのであれば、間違いなくジャズではないでしょう。これは単に街の普通の黒人ピープルを喜ばすための音楽にしかすぎないと思う。

でもジャズを生んだ人種の人達が喜ぶ音楽なのだから、ジャズが好きでたまらない僕らにも嬉しい音楽といえるのは当然なのであります。

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二重丸をみたら鬼太郎の親父を思い出すのは日本人だけ。これはどうやら雪のつもった鉄道の引き込み線にみられる照明みたいなものの様です。

昔からジャズと鉄道は切っても切れない仲のようですが、こんな雪の積もった淋しいロケーションのジャケットはあまり見た事がない。と思ってジャケットをしげしげとながめると、録音はニューヨークではあるのだけれど、リリースはシカゴに本拠地を置くカデットからの発売。シカゴといえば緯度は北海道の函館と同じ。なるほどなー。

1966年に録音された本作はレイ ブライアント、リチャード デイヴィス、フレディー ウェイツからなるトリオを基本に、アート ファーマー、スヌーキー ヤングという二人のトランペット、フリューゲルホーン奏者をアンサンブルだけに起用したアルバム。
こういった手法のアルバムは一体誰が初めて試みたのか、僕にはわからないのだけれど、この作りで真っ先に思い出すのはハービー ハンコックの名盤「スピーク ライク ア チャイルド」でしょう。でもそれは1968年の録音。という事は本作の方が2年も先に生まれている事になる。そう考えると当時ではかなり斬新な演奏であったのかも知れない。実際もしニューヨークに本社を持つレーベルからのリリースであれば運命も違っていたかも。

といってもそれが負の要素なのかと言えばとんでもない。このいかにもシカゴくんだりでウケそうなR&Bを受け継いだような、変なヴォーカルも加わるタイトル曲なんかは、シカゴとレイの個性がひと際合致したものの様に聴こえる。おまけにB面なんかはまるで昔の日本の淋しいテレビドラマの主題歌の様な響きを持っていて、それはほんとに僕らの世代なら笑ってしまうくらい。これなんか他ではそう聴けたものではない。

ここで冒頭に戻るが、ジャケットを見ながらそれを聴いて「網走番外地」シリーズや「北の国から」を連想してしまうのは僕だけか?ひょっとしてこのレコードは日本人向けにこしらえたのかと勘違いもしたくなるほど。

ついでにもうひとつ。ファンの多いベースのリチャード デイヴィスですが、彼のソロではこのアルバム収録の「サテンドール」でのものこそが今のところ最強と睨んでおります。

とにかく聴き所は満載の本作。シカゴとレイ ブライアントとテレビドラマの主題歌を甘くみてはいかんと教えられる1枚であります。

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元町の名店「M&M」のママさんがお亡くなりになった。

僕はジャズがどーのこーのとは関係なく、以前からこの店はよく休憩のコーヒーを飲むのに利用していた。めったに行かないジャズ関係の店だが、ここだけは普通の喫茶店として、またほどよくマニア的で僕にとっては一番いいバランスを保っていたのだ。

ママさんとは直接お話はした事はないが、難しい事は言わなさそうで、そんなところも寛げた一因だったのだろう。こんな普通の女性がどうしてこんなにジャズに精通しているのか今でも不思議だ。

先日ジャズのフリーペーパー「WAY OUT WEST」でも、ジャズの街として元町が取り上げられていた。Doodlin'はまだまだ新参者なので、こんな事を言うのはあつかましいのだけれども、本当に街はこれからという時に残念極まりない。

謹んでご冥福をお祈りいたします。