ただし、個人的に好きかどうかと問われれば、これがそれほど好きなドラマーではない。理由は一つ、やたら難解で真面目すぎるから。何というか彼のドラミングには、僕がつい求めてしまうユーモアを含んだ痛快さや、ジャズ本来持っていなくてはならない楽しさが欠けている気がするのだ。多分性格自体がストイックなんでしょう。とにかくお固いイメージがあって僕には合わない。
と、この作品にめぐり合うまでは思っていました。
1982年にECMから発表された本作は、恐らくジャック自身が組んだグループ、スペシャルエディションの最も初期のものであろう。僕はこのグループには何の思い入れもないので、中古レコード屋で発見しても普通なら名前を見ただけで素通りしてしまうはずだった。でもその時は、いかにもガラの悪そうな街でストリート演奏しているジャケット写真にまず目がいった。何かピピピと来たんでしょうな。そしてメンバーを見るとリードのジョンパーセルとトランペットのバイキダキャロルが加わっているではないか?この二人、僕の大好きな楽しい楽しいデヴィッドマレイのオクテットで大活躍してるメンバーなのよね。そして流石ハックルベリー、ここはナイスプライスの500円!デジョネットは嫌いだがこれだとはずしても痛くない。ソニーフィリップスを買うついでに購入とあいなった次第。
さて、店に帰って聴いてみた本作。恐らく当時のロフトなんかで活躍してたメンバーを従えて、よっぽど気があったのだろうか、またはよっぽど普段から気心が知れたメンツだったのだろうか?いつもの固いデジョネットよりも楽しく演奏している様にうかがえる。音楽自体もそれほど難解さはない。このあたりは流石ニューヨークの強者といったところか?なかなかいいやん、500円にしては。
そんな感じで聴き流していたところに衝撃が走ったのはB面に移って2曲目のタイトル曲だった。スットコスットコという始まりから聴こえてきたのは正にレゲエ。しかもあのボブマーリーそのものの様なのり。録音前年に亡くなったボブに捧げたのだろうか。恐らく高嶋忠雄のドレミファドンでかかると、数人はボブマーレーとフライングしているであろう。正解がジャックデジョネットの「インフレーション ブルーズ」と聞いても納得できないだろう。しかもジャックは歌まで歌っている。それにクレジットを見るとクラビネットも演奏してるので多分多重録音だろう。これにどんどんとホーンプレイヤーが音を重ねていく。明らかに楽しい。ジャック楽しいぞ!と叫びたくなったのも当然。
それにしても今までハードなジャズを展開していて、いきなり180度回転するこの面白さ、そして全員のレゲエの上手さ。恐らく人種のるつぼとうたわれたニューヨークでの音楽生活がそのまま表れているのだろう。高級ジャズクラブではない、ガラの悪い下町の、色んな要素が混じった生きたリズム。これこそロフトミュージシャンの本領発揮であり、そもそも僕が本作を聴くきっかけとなったジャケット写真の意味だったのだろう。







