この3人、50年代はもっぱらヴァーブよりアルバムを発表していて、それぞれ素晴らしいカルテット編成の作品を残しているのだが、そのうちコールマンとベンのものは既にこのコーナーで紹介は終わっている。
その前にこの3人について、あのオスカー ピーターソンがあるインタビューで語った話が僕は忘れられない。
それによると、オスカーはヴァーヴ時代にスタジオやJATPなどでこの3人と何度も共演しているが、その経験を通して様々な事を学ぶに至った。しかし同時にとうてい彼らのレベルには自分が及ばないのを悟る。彼らこそがクリエイティブと呼ばれるにふさわしい人達だ、とのこと。
あのオスカーでさえもが自分はまだクリエイティブと呼ばれる資格はないと語った件は、ちょうどクリエイティブという言葉が単に流行として横行し、猫もシャクシも本来の意味を考えずに自らをそう語り出した時期だったので特別に考えさせられた。
僕は安易にこういう言葉を使う傾向が嫌いだ。しかしオスカーの話を考えるまでもなく、確かにこの3人に対してはその通りだと言う事が出来る。その中でも特にレスター ヤングの研ぎすまされた感性は、その言葉でさえももの足りないという境地にたどりついたものだろう。
名ピアニストであるテディ ウィルソンを迎えた本作は、言うまでもなくジャズ史に残る名盤として今も愛されている。晩年のレスターは心が不安定であり、演奏に覇気が感じられなくなる場面も多かったらしいが、ここではテディの絶品なる好サポートを得て奇跡的に最盛期を思わせる颯爽たる演奏をくり広げた。しかしこの話でさえ現在のファンの間では常識として知られている様だ。
したがって今さらこの名演を僕がとやかく語っても大して新しい見解が出てくる訳ではない。僕が本作に対して持った思いは誰もが一回聴いたおりに感じるそれと全く同じだ。聴けばわかるという事でもある。
ただレスターの数多い魅力の中でも、彼の歩んだ道のりや後進に多大な影響を与えた独自のフレージングなどを差し置いて、僕は特別に彼の音色にすっかり魅了されてしまう。先日Doodlin'でいつものように本作を流していたら、聴いていたある若者が言った。「レスター ヤングの音を聴いたらサックスが木管楽器やていうのがよく解りますね」何と言う名言であろうか。レスターの音はまるで木と木がこすれ合った様な繊細で大らかで、心地良さに満ちている。まるで木で出来たサックスを吹いているみたいに。
レスターの出す音色はレスターの人生そのものであり、それが真の芸術となり得た。芸術という言葉を使うのに抵抗を感じる僕でもお手上げだ。ジャズから世界遺産に相応しいものを一つ選べと問われれば、僕はレスターの音色だと答えたい。









