元々子供が笑っている様なピアノを弾くモンクだが、本作を録音した時はよほど機嫌が良かったのか、まるで子供がはしゃぎまわっているかの様に無邪気に鍵盤とたわむれている姿が伺える。たまに手におえない所までいってしまっているが、それでも純粋に音楽と遊んでいる様はあくまでも心が和むものだ。僕は常々モンクのピアノを聴くと春の如く楽しい気分になるのだけれど、本作は特にその特徴が際立っていると思う。42歳のモンクはこの時絶好調だったのだろう。
映画「ストレート ノーチェイサー」でのモンクの息子であるセロニアス モンク ジュニアの証言によると、モンクの奇行がいよいよ怪しくなり最初の入院に至ったのは60年代の中程だという。したがってリバーサイドを離れてCBSに移ってからの最もあぶらの乗った時期を捉えた1つが本作だったのではないだろうか。もちろん入院以降のモンクも素晴らしい演奏を続けていたのは映画を観ても十分に理解は出来るのだけれど、やはり本作のウキウキ感は特別で、どうしても心身共に充実していた姿を想像してしまうというもの。収録曲の全てがトリッキーでユーモラスだし、おなじみのピアノソロによる「ジャスト ア ジゴロ」にしても気持ちの高揚ぶりが実に心地よく伝わってくる。同曲の収録が何度目かなど、全く気にしているそぶりもない。多分こんな気分の時はこの曲だったのだろう。
ところでCBSでのモンクの評価ってのはどうなのだろう?本作と飛行帽をかぶった絵の「ソロ モンク」は名盤として人気が高いのは知ってはいる。でもこの2枚以外の評判はとんと聞かない。
人は何でもひとつの区切りでその人の評価を分けて考えてしまうもの。だからモンクが大変な傑作を世に送り続けたリバーサイド時代とその後のCBS時代を比べた結果として、後者がモンクの音楽家としての頂点を過ぎた後のものと捉えられるのは無理もないと思う。
実際モンクの代表的な楽曲のほとんどがリバーサイド時代が終わるまでに作られたものだし、以降は過去の曲を再演する頻度が高くなっている。編成などでも実験をしなくなり、ほとんどがテナーカルテットによる自己のグループでのものであるのも悪い印象を与えている様だ。
そんな印象が邪魔してか、僕自身もCBSの諸作は本作以外は全くといっていい程聴いていないのをここに白状しなければならない。しかし、本作の充実ぶりを聴くと、他のCBSの諸作も絶対に聴き応えのあるものばかりである気がする。また今回はその不当評価に対してのコメントを控えたものの、テナーサックスのチャーリー ラウズのあまりにもな素晴らしさを考えても、これからは晩年に向かっていくモンクも楽しみながら追っていこうと思う。









