そしてこの2レーヴェルのオルガンジャズのほとんどをルディ ヴァン ゲルダーが録音を担当している。よって我々にとってオルガンジャズのサウンドはヴァン ゲルダーの録音をもって最高峰と捉えられていると言ってもいいと思う。
しかしオルガンジャズの録音を行ったのはヴァン ゲルダーだけではない。そしてハモンドB3に代表される電子オルガンはジャズだけに使用されたのではない。
どういう事かというと、今回紹介するSUEというレーヴェルから発表されたジミー マクグリフの「ブルーズ フォー ミスター ジミー」というアルバムの音全体がヴァン ゲルダーとは全く違う音であるのにもかかわらず、独特で最強な響きを出しているのだ。
その前に1936年フィラデルフィアに生まれたマクグリフはジミー スミスに惹きつけられて、その奏法を徹底的に研究したオルガンプレイヤーだ。事実マクグリフのキャリアでは初期にあたるSUEでの録音の数々ではジミー スミスを彷佛とさせる、叩きのめすかの様に凶暴であり、あの全身に突き刺さる様な刺激的なサウンドを再現している。当然すべてが傾聴に値する強烈なものばかりだ。
しかし、このSUEの音自体はジミー スミスでお馴染みのヴァン ゲルダー サウンドとはあまりにも異質だ。そしてそれはやはりSUEというレーヴェルの本来のカラーに原因があると言える。
SUEは1957年にヘンリー シャギー マーレイという人がニューヨークで興したインディー レーヴェルで、そのほとんどがアイク&ティナ ターナーを代表とする様にR&Bを手がけるレーヴェルだった。ジャズではレイ ブライアントのものなんかも出している様ではあるが、この頃のカタログではやはりアーネスティン アンダーソンといった女性シンガーのものが目立つ。
そんなSUEはやがてロンドンでアイランドやブラックスワンといった小レーヴェルを営むクリス ブラックウェルという人に権利の一部を共有するに至り、ここにSUEのUSとUKに分かれる展開を見せる様になる。そしてUKの方はその後ガイ スティーブンスという人に多くをまかす事になり、彼の好みであるMODSの色を濃くしていく事になる。
ジミー マクグリフのSUEはそんな背景があった通り、オルガンジャズにしてはヴァン ゲルダーとは全く違うR&Bそのものの響きを有している。絶妙な加減でリバーブが効いているこの独特の音は、ヴァン ゲルダーに録れと言っても録れないのではないか?
マクグリフはジミー スミスに憧れて研究したオルガンプレイヤーであるのに、インタビューでは自分をジャズプレイヤーと言ってくれるなと語ったらしい。この発言がいつ誰に話したのかは判らないし、本気で言ったのか冗談まじりに言ったのかも判らない。しかし、R&Bの色が濃いスタイルを持つマクグリフは確かにそんなSUEのサウンドがあもりにもピッタリだ。
また僕の個人的な思い出を述べると、実はヴァン ゲルダーのオルガンの音は心底感動はするものの、僕には常にジャズのスタイルとして大事に追求する対象だ。しかしSUEのマクグリフのサウンドは何か幼少時代にテレビなどを通して自分の中に入って来ていた音と同様に感じる。少年時代にはまだ存在した所謂外人BARから漏れ聴こえた音でもある気もする。事実R&Bサウンドという事であれば、若い頃にいちびってムーンライトなどのソウルBARでさんざん酔っぱらっていた頃に体内に染み付いていた音と何ら変わりはない。つまりヴァン ゲルダーと違って、こちらは僕にとっては何かリアルタイムで生活と密着していた懐かしい響きを感じさせてくれるものだ。
「ブルーズ フォー ミスター ジミー」はマクグリフがSUEに残した作品の7枚目で、どうやら最後にあたるものらしい。そして1枚に全9曲が収録されていて、それらがとてもコンパクトにまとめられているという点からして、本作は元々シングルレコードとして発表されたものをまとめたものではないかと思う。Doodlin'はその7枚のうち4枚を所有している。ただしこのレーヴェル、どれにも参加メンバーのクレジットは無いし、プロデューサーもエンジニアも名前が記載されてたりされてなかったりな状況だ。「ブルーズ フォー~」にはエンジニアの記載は無い。しかし、オルガン、ギター、ドラムのシンプルな編成でまとめられた本作の音が一番強烈だし、マクグリフの強烈で凶暴なプレイにはただただ圧倒されっぱなしだ。
もしこれがシングル盤で出ていて、当時アメリカ中に見られたジュークジョイントやホンキートンクBARのジュークボックスから流されているのを想像すると、もうぞくぞくして居ても立ってもいられなくなるのは必至だ。R&Bサウンドで聴くマクグリフは正にソウルのスターそのものの輝きを発している。これがジャズなのかポップなのかは知らん。どうでもいいと言いたい。
