ボリ子通信Θ第6号
「高地で生活する動物たち」

復活!さえの細腕繁盛記第7回-「ジェットコースター」-
昨日の私は、落ち込みモードだった。
人には誰でも苦手な分野があると思う。
両親との関係が上手くいかない人や、異性となかなか付き合えない人、新しいことを始めても長続きしない人などなど、それぞれみんな苦手な分野がある。
私の場合は「仕事」。これ、ホント苦手。
新しい会社に転職して4ヶ月。周りはいい人達だし、「できない奴」とは全く思われていない。むしろ私の仕事を評価してくれる人の方が多い。
でも私の中でいつも「自分は本当に仕事のできない人間だ」「他の人の方が上手くできている」「そのうち必要ないと言われるのではないか?」とびくびくしている。私の勝手な思い込みだということは、冷静になればすぐ分かる事だ。でもそのスパイラルに入るとなかなか抜けられない。
このモードのまま、昨日はどん底会 のメンバーが集まる飲み会に参加した。その場で会う人、会う人すべてに自分の今の状況をしゃべりまくった。
得たものは以下の通り。
えみ姉
に「さえちゃんは会社の人が好きなんでしょ?それでいいじゃん。今日もみんなのことが好きだから会社行こうって、そういう気持ちだけあればいいんじゃない?」と言われ、気持ちが楽になったり、
「トレックアメリカに参加して欧米人が本当に人生を楽しんでいる気がしたんだよね。日本人は会社や仕事を中心に考えるんじゃなくて、もっと自分を中心に考えるべきなんじゃないかな?」と菅野さんが教え
てくれたり、
「私は自分が落ち込んでいた時、さえさんと話してすごく励まされたよ」と素直に話してくれる由梨ちゃんの言葉に嬉しくなったり、
「地方に行くのは不安だけど、就職活動でベストは尽くしたよ。だからさえさんも頑張りなよ」と胸を張って言う堀切くん が偉いな~と思ったり、
なかなか落ち込みモードから抜けられない私の長~い話に付き合ってくれる175くん や、
「悩み聞けなくてごめんね、元気になった?」とメールをくれるC-manに感謝したりと、
とっても忙しい夜だった。
みんな、いろんなことを考えながら、日常と戦いながら、頑張っているんだよねと思ったら、ちょっと元気になった気がした。
これからもジェットコースターのようにアップダウンする自分を客観的に受け入れることができるようになる日は来るのだろうか?
うーん、たぶんそんな日は来ないだろうなぁ。
一生この性格と付き合っていくんだよね~。
だったら、気長にいかないとね。
月末金曜日担当:さえ
『翼を広げて』 SIDE-A

その13
(前回までの話は、こちら
)
~旅の日記~
【4月18日
言葉を超えた固い絆。それがこのツアーの醍醐味だ。言葉も、文化も、宗教も、風習も、何もかもが違う。でも感動する心は世界共通。笑顔も、涙も、世界共通なのだ。】
あたりはまだ暗闇に包まれている。焚き火を取り囲むように立てられたテントの中では人が動く気配がする。懐中電灯のほの明るい光だけがちらちらと揺れている。
テントの中から眠そうな目をこすり、寒そうに身を縮めながら焚き火の周りに人が集まってくる。
グランド・キャニオンのトレッキングは、行きは谷底に向けて下っていく。帰りは逆に谷底からの登りになる。体力が消耗しないよう、ペース配分が大事なのだ。
ブライトエンジェルトレイルを歩いてプラトーポイントを目指す。予定では往復12時間。体力をできるだけ消耗しないようにゆっくり下れば、それ以上の時間がかかりそうだ。
体力にあまり自信がないというマユはちょっと不安そうだが、僕が「おはよう」と周囲に響かないよう小声で声を掛けると、「おはよう」とにっこり笑顔で応えてくれた。体調はいい様子だ。
「心配しなくて大丈夫だよ。ちゃんと最後までついていってあげるから」
「うん。ありがとう」マユは湯気が上る熱いコーヒーを両手で支えて、身体を温めながら言った。
「午後は直射日光を浴びて暑くなるから、なるべく体力を消耗しないように自分のペースで歩きなよ」
「そうね。わかった。稲田くんとリリーは?」
「あいつらは割と体力ありそうだから、案外早いペースで下りて行っちゃうんじゃないかな。他の人たちも、日本人と違って体力ありそうだから、さくさく歩いちゃうかもね」
「あたしたちがグループの最後かな?」
「そうなるかも知れないな。大丈夫、気にしないで。大事なのは着いて行くことじゃなくて、自分のペースを守ることだから」
マユはこくんと頷いた。
まだ暗い中を静かに谷底目指して歩き始める。ザッザッという足音だけが、耳に響く。背負ったリュックには2リットルもの水が入っている。重い。
時折聞こえる鳥の声と、風の声が静寂のグランド・キャニオンに響き渡る。
下り始めて30分もすると、案の定、僕とユリはグループ最後の人たちとなった。でもペースは順調、マユも立ち止まることなく歩いている。
「もうすぐ夜明けだね」
「もうそんな時間?」
「そろそろだと思うけど」
東の空を眺めてみる。うっすらと稜線が浮かび上がっている。もう数十分もすれば太陽が顔を出す。
「今日もお天気みたいだね。雲がほとんどない」
「そっか。じゃ暑くなるね。早く下りないと」
「ダメだよ。気持ちだけ先走っちゃ。帰りのほうがはるかに辛いんだからさ」
足音が今までのペースと同じように刻まれている。「大丈夫」僕は再度声に出して言った。自分自身に言い聞かせるように言ったつもりだったが、「うん」とマユも答えてくれた。
突然ぱぁっと明るくなった。太陽が顔を出したのだ。照らされる谷の複雑な地形は、夕陽よりも陰影を色濃く描き出しながら、神々しくオレンジ色に光っている。
空から神様が降りてくるかのような見事な朝陽だ。
それはこの世のものとは思えないほど幻想的で美しく、静寂の闇夜を切り裂き、平等に、平和に、いきとしいけるすべてのものに光のシャワーを浴びせかけている。
「すごくきれいね」
「昨日の夕陽も見事だったけど、朝陽もたまらないな。生きてて良かったって思うよ」
マユを見ると、胸の前でささやかに手を合わせていた。僕も同じように手を合わせた。何事もなく無事に今日一日が終わりますように、と願いを込めて。
休憩地点まで辿り着くと、稲田とリリーが待っていてくれた。
「どうだよ、調子は?」稲田が笑顔で聞いてくる。
「うん、悪くない。今のところ順調だよ。リリーはどう?」
「ブラジルで毎日肉体労働で鍛えてるから、これくらいたいしたことないわ」
強気な発言だ。
「マユは?無理しないでいいからな」稲田がマユを気遣って言った。
「隆志がついていてくれるから大丈夫。安心して歩いてる」そういうと稲田が「最後になってマユにおんぶにだっこじゃカッコ悪いから、隆志も頑張れよ」と茶化した。
「稲田もね。東京じゃこんなに歩いたことないからな。リリーに迷惑かけないようにな」と言い返したやった。
「まだまだ冗談言える元気があるから、みんな大丈夫だね」マユが笑顔で楽しそうに笑った。みんなもそれにつられて大笑いした。誰もがいい顔をしていた。
「じゃ、俺たち先に行くから」稲田とリリーはプラトーポイント目指して歩き始めた。
歩き始めてまだ四分の一の距離だ。しかしリュックの中の水はもうすぐ1リットルを飲み干してしまいそうだ。この分だとプラトーポイントに着く前に飲み干してしまいそうだ。
10分後、僕らもまた歩き始めた。少し休んだせいか、マユの表情も明るく、柔らかくなっていた。
大丈夫、自分に言い聞かせながらマユは独り言を呟きながら歩く。その隣にいる僕もその言葉に勇気付けられながら歩いていた。
こうして二人で一つの目標に向かって進んでいると、それまでにはなかった信頼の絆が強くなってくるのがわかる。
それはどこか恋心にも似ている。次第次第に二人の会話は自分のことを語り始める。
旅を出る前のこと、旅で出会った人たちのこと、このツアーに参加して思ったこと、両親のこと、恋愛のこと、さまざまなことが脳裏を去来する。
いつしか二人は出会って間もない二人ではなくなる。ずっと前から相手を知っていたかのような錯覚に陥る。そして二人で築き上げた「同じ体験」という絆が二人の心を強く結びつけるのだ。
インディアン・ガーデンに辿り着く頃、日差しはだいぶ高くなり、ところどころ直射日光を浴びるようになっていた。マユの体力もかなり消費しているようだ。
ちょっと長い休憩を取ろうと、僕はマユに言った。僕自身も水がなくなり、給水しなくてはならない。着ていたTシャツも汗でびっしょりと濡れていたので、着替えることにした。
「あとどれくらいかしら」マユが聞く。
「あとはもう平坦な道を進むだけだから、そんなにきつくはないよ。ただこの日差しがダイレクトに当たるから、それがちょっと辛いかも」
僕は俯いているマユの顔を覗き込んだ。
「大丈夫? 引き返す?」
マユは俯いたまま首を横に振った。
「大丈夫。行けるから。もうちょっと休ませて」
マユが顔を上げて、いきましょう、と行ったのはそれから20分後だった。
直射日光が照りつける。もうあと少しでプラトーポイントに到着する。先に行ったメンバーはとっくに着いているはずだ。おそらく一番早いメンバーは少なくとも一時間近くは先に着いているだろう。どこかで出会うかなと思っていたが、まだ誰ともすれ違っていない。僕ら二人の到着を待っているのだろうか?
プラトーポイントが見えた。そしてメンバーの姿も見えた。みんな両手を振っている。待っていてくれたのだ。
「みんな待ってる。さぁ行こう」
マユを見ると目に涙が溜まっている。ただ頷くしかできない。声にならないのだ。
よくやった、おめでとう、みんなに見守られながら到着するとマユは声を上げて泣いていた。嬉し泣きだ。感動の涙。
マユはみんなに抱きしめられていた。見ていたリリーももらい泣きしていた。アメリカ人のアンも、オーストラリアのカップル、キャッシーとボブも涙をぬぐっていた。
言葉が違うメンバー同士が今輪になって僕とマユを祝福してくれている。言葉を超えた固い繋がりがそこにはあった。
「あと10分待ってこなかったら引き返したものと判断して戻ろうって言ってたんだよ」稲田が言った。
一時間前に着いていた最年少のベックとマルコが一番乗りだった。戻ろうとする彼らをリリーが引き止めたのだ。
「リリーが絶対に来るから、みんなで待ってようって、みんなに言ってくれたんだ」ベックが言った。
「待っててよかったよ。君たちの勇気には感動したよ。ありがとう」マルコが僕に手を差し伸べた。僕は迷うことなくその手を握り返した。固い握手だった。
眼下にはエメラルド・グリーンのコロラド川が悠然と流れている。太陽も僕らを精一杯祝福してくれるかのように光り輝いていた。
僕は天に向かって両手を突き上げ、全身に太陽の光りを浴びた。達成感で一杯だった。
「隆志、ありがとう」そう言うとマユは僕に抱きついてきた。僕もマユを抱きしめた。僕にもマユの感動が伝わり、目に溜まった涙をこぼさないように上を向くのが精一杯だった。
その14に続く…。
(written by yass
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この連載は真奈美側に視点を変えたSIDE-Bもあります。
SIDE-Bはこちら
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関西ミステリーツアー 其の三
みんな~、安心して!
うちもちゃんと、ビリケンさん 、拝んできたで!
でも通天閣って、ほんま不思議なとこやったわぁ。
だって、入場料払って、展望エレベータに
乗るとこの前に、卓球台があんねんで?!
誰が卓球すんねんな!
「ほな、ひと勝負してから、ビリケンさん拝もか~。」
って、んなアホな!
あと、卓球台のそばに、手品グッズも売ってたで!
きったないショーケースの中に、乱雑に並べてあってん。
誰が買うねんな~!!
それから、通天閣のあるとこって、
『新世界 』っていう、めっちゃ下町やねんな。
この辺に住んでる人たちって、
通天閣の塔に付いてる宣伝文、
“日立ITソリューション” なんて、
意味分るんかなぁ。。。
いろいろ気になるわぁ。
火曜担当:たこ焼