育成探求シリーズvol.4 個の育成の限界? | ドングリクンパパのブログ

まず例えば野洲高校、静岡学園、聖和学園と並べて、これらを一緒くたにして「要するに個人技でしょ?ドリブルとかリフティングとかショートパスでしょ?」と言ってしまうことに問題があることは百も承知、ともう一度断っておきたい。ミクロとマクロだからさ。

 

近寄ってみれば全部まったく違う、でも遠くから眺めると似た色してる。サッカーやってない人から見たら全チーム「要するにサッカーやってるんでしょ?」だし、猿から見たら全員「人間でしょ?」だし。鹿児島のおばあちゃんと秋田のおじいちゃんが会話したらなかなか話通じないかもしれないけど、外人から見たら「日本語でしょ?」となる。

 

「要するにドリブルでしょ?」とあえて括ってみる。そこから見えてくるものもある。ちなみにだからと言ってテーマがドリブルってことじゃない。裏テーマはディフェンスっだったりね。サッカー素人のパパさんママさんでもごく簡単に出来る、子供のディフェンス力アップ法、なんて記事もこのシリーズのずっと先に出てきます。単に入口がドリブルなんですね。

 

あ、ちなみにパパもど素人です(笑)。

 

-------------------------------------------------------------------------

 

NIKE MOST WANTEDというナイキのプロジェクトってあったよね?(もうやってないのかな?)

 

大がかりなプロジェクトだ、ナイキがまだプロ選手ではない子に対し世界中でセレクションやって最終的に20人くらいが選ばれてイギリスで半年間のエリートプログラム「ナイキアカデミー」に参加する。

https://nike.jp/nikebiz-archive/news/other_160916-1.html

 

ナイキチャレンジという名称の頃から参加者の半数以上はヨーロッパでプロデビューしてきたと言う。2年前、このセレクションのファイナルに見事合格し、ナイキアカデミー入りした日本人がいたのを覚えてるだろうか?元聖和学園の波多野海君だ。

 

前回取り上げたジュニアユースのチームがやっているドリブル的育成を高校でもまだやっているという超異端チーム。正直いくらなんでも中学まででしょ~とは思う。海外では18くらいで普通にA代表入ってくる奴いるよね?ムバッペを出すまでもなくね。それなのに高校でまだ普通にサッカーやんないの?そりゃさすがになんだかムリがないかい?とは思うんだよ。

 

でもさ、それでも、、、そういう子たちも当たり前だけど毎日毎日一生懸命やってんだよな。聖和学園の子達の1日のスケジュールとかいうの、見たことあるんだけど、やっぱ早朝から自主練、自主練でさ。もうすべてをドリブルに賭けてるんだよな。

 

無謀と分かってても、俺はこの道を行く、そんな子がたくさんいるのかなって思ってさ。全ての道はローマに通ず、を思ってね。パパはさ、どんな道を歩んだとしても、一生懸命必死になってやったならさ、その先に何かがあってもいいんじゃないかって。

 

だから波多野君がナイキ合格したのはなんだか嬉しかったんだよね。聖和学園ってプロ選手がほとんど出てないんだよね。でもナイキアカデミーからは半数以上がヨーロッパでプロデビューするらしいし、波多野君がこれを機にヨーロッパデビューしたりしたら、ああ、こんな道もやっぱりあるんだ、と全国のドリブラー君も励みになるかもね。

 

、、、と、思ったりもしてたんだけどな。現実はやはり甘くないのな。ヨーロッパではどこからも声掛からず、その後日本でもJの練習にあちこち行ってたみたいだけど結局、、、県リーグレベルの社会人チームでプレーしたりしてたみたいだ。それでも今年ようやくドイツ5部のチームに入団が決まったらしいけどね。

 

まだまだ若いし、ここからの巻き返しを応援したいと心から思うよ。でもやっぱり、、、聖和の育て方にはムリがあるんじゃないかなと感じてしまうよね。ただ、無茶でめちゃくちゃ偏ってるということを百も承知で、それでもこれで行くんだ、俺はメッシになるんだ、みたいな無謀なチャレンジをしている子がいるなら、青春だなあって思う。映画にするんならそう言う子を主人公にしたいもん。

 

地元小学校の少年団に2人の逸材がいる。親友でありライバルなんだ。でも彼らは中学から別々の道を歩む。ひとりはJ下部に、ひとりはJ下部に入れる実力がありながら個人技にこだわるチームを選ぶ。

 

手堅く着実に階段を上るJに行った友達を尻目に、圧倒的な才能を持ちながら最後まで個人技にこだわり、結局陽の目を見ることのなかった主人公。セレッソに入団が決まった友人を地元運送会社に就職した主人公がトラックで大阪まで送って行くんだ。友情は変わらない、主人公はちっとも後悔なんてしてないんだ。

 

大坂に到着したらな、「おい、ちょっと行くか?」って主人公が言うんだ。指差した先に小さな公園がある。友人は察してバックからボールを取りだす。最後の1対1だよ。スポーティな格好の友人に対し、主人公は運送会社のつなぎさ。ボールを挟んで向かい合う。お互いの顔から笑顔が消え、目に殺気が宿る。主人公が鮮やかに友人を抜き去る。

 

「まだまだやな~、そんなんじゃセレッソでレギュラー取れんで。精進しろよ~」

 

そう言ってあばよと去って行く。もしそんな主人公がいたら行く高校は聖和学園しかねえだろ?(笑)きっとみんな分かってるんだよな。それがいかに無謀なチャレンジであるか。中途半端な選手を全部飛ばしてメッシになってやろう、世界のてっぺん取ってやろうって、本気で思ってるんだ。でもなれない。ドラマだなあって思う。

 

波多野君にもぜひここから這い上がってもらいたい。だが現時点ではやはり「高校までそれやっちゃうとプロはかなり難しい」というのは間違いないと言わざるを得ない。え?静学があるじゃないかって?確かに静学はいまだにプロを生み続けている。大島遼太などトップレベルの若手も排出し続けているね。

 

でもね、静学は足元をもちろん徹底して鍛えているけど、やっていることはサッカーだから。下記の試合見たけどめっちゃいい試合しているもん。良いタイミングで逆サイドに大きな展開もできるし、チャンスと見るとシンプルに裏も狙ってくるし、ディフェンスもきちんと臨機応変に対応するから安心してみてられる。それでいて仕掛ける時は一級品の足技を見せてくれる。サッカーをするために足元を鍛えてるんだよな。

https://www.youtube.com/watch?v=W-H6DxCA_EA

 

聖和は違うね、サッカー自体が異質、聖和サッカーなんだ。純粋にプロ目指すならやっぱり断然静学、でも映画の主人公にするなら聖和だよ。静学じゃダメよ、サッカーやってない一般人から見たら普通すぎてキャラが立たないもん(笑)。無謀すぎるところが美学なんだから。

 

でもね?さあ、本題ですよ。じゃあ一般的に「個の育成」と謳って足元の技術にこだわるようなジュニアユースは聖和寄り?もしくは静学寄り?これ、不思議なことに大概聖和寄りなんだよね。時には自陣前からでもドリブルで抜いていく、みたいな聖和サッカーをやっているチームばかり目にするね。

 

と、するとだよ?ここで素朴な疑問が生まれるよね?高校までやったら無謀すぎると思われる育成を、中学までだったらやらせてもいいのかな?他にもここまでの話の中でいくつかの疑問が生じてきているのでまとめてみよう。

 

1)個の育成と謳い、テクニック重視で育てているジュニアユースはきちんと結果を出しているのか?

2)静岡学園と聖和学園の差とは具体的になんなのか?

3)波多野海君に足りなかったものとは具体的になんなのか?

 

波多野君の足元のテクニックはナイキアカデミーが門戸を開くレベルだ。身長も175cmあり、高いとは言えないが低すぎることはない。そして瞬発力にはかなり自信があるそうだ。更に実は彼は体力においても世界水準である。最終選考におけるyo-yoテストという体力要素を図るテストにおいて、候補者の中でトップだったのだ。

 

では一体何が足りなかったんだろうね?犯人は誰だ?

 

真犯人の推定に入る前に、まずは疑問の1)である「個にこだわるジュニアユースの育成の成果」を問うことから始めてみたい。「飛びぬけて磨かれるものもあるが、失うものもある」というのが聖和的な育成だとすると、中学年代で同じようにやってもやはり「得るものと失うもの」があるはずだが、「失うもの」は高校3年間できちんと取り戻せるものなのかどうかが気になる。

 

そこが取り戻せないなら最初からきちんとサッカーした方がいいということになるよね。逆を考えると、育成におけるテクニックの重要度、あるべき時間配分の度合いも多少見えてくるかもしれないね。ただ、それを判断するにはある程度客観的な事実から見て行く必要がある。

 

そこでパパは試しに現在のU18日本代表メンバーおよそ30人が中学年代にどのチームに所属していたのか、全員調べてみたのである。サンプルとしては少なすぎるが、何かしら見えてくるものはあるだろう。そして実際なかなかに興味深かったのである。果たしてそこには「個にこだわるジュニアユース」が出てくるだろうか?

 

続く