日銀保有国債の含み損9.4兆円と大幅増、金利上昇が影響-23年度決算
 伊藤純夫
2024年5月29日 17:38 JST

 ETF評価益37兆円に拡大、当期剰余金2.3兆円-いずれも過去最高
国庫納付金も2兆1728億円と最高記録、自己資本比率11.17%に上昇

日本銀行が保有する国債の2023年度末の含み損は前年度から大きく膨らんだ。日銀が金融政策の正常化を進める中、物価上昇などを背景とした金利の上昇(価格は下落)が影響した。評価損は2期連続。

  日銀が29日発表した23年度決算によると、保有国債の含み損益は9兆4337億円のマイナスとなった。上半期(9月末)時点で10兆5000億円のマイナスと過去最大に膨らんでいた。22年度末の含み損は1571億円だった。

  日銀は保有国債の評価方法として償却原価法を採用しており、時価が変動しても損益には反映されない。

  日銀は昨年7月にイールドカーブコントロール(YCC)の運用を柔軟化し、国債買い入れの指し値オペ水準を従来の0.5%から1%に引き上げた。10月には1%を「めど」とし、1%を超える取引を容認した。今年3月には利上げを決定し、マイナス金利を解除。長期金利は23年3月末の0.3%台から11月には一時0.97%までに上昇。今年3月末は0.7%台だった。
植田和男総裁は2月22日の衆院予算委員会で、金利全般が1%上昇した場合、日銀が保有する「国債の評価損は約40兆円程度発生する」と説明していた。

  一方、保有する上場投資信託(ETF)の含み益は3月末時点で37兆3120億円に拡大。日本株がバブル崩壊後の高値を付ける中で過去最高となった。

  23年度の最終利益に当たる当期剰余金は2兆2872億円と、前年度に続き1998年の新日銀法の施行以降で最高を更新した。ETFの運用益や国債の利息収入、円安進行に伴い外国為替関係益が増加した。この結果、剰余金から法定準備金積み立てと配当金を除いた国庫納付金は2兆1728億円と過去最高となった。自己資本比率は11.17%に上昇した。