11000年間孤立していたアマゾンの原住民、ヤノマミ族に抗生物質耐性を持つ遺伝子が多数発見される(米研究)

2015年04月28日

ベネズエラに広がるアマゾンの熱帯雨林の奥深くで暮らす南米の先住民、ヤノマミ族の人々を検査したところ、体内の細菌叢から驚きの発見がなされた。

 ヤノマミ族は、人間で確認された中では最も多様性に富んだ微生物群を保有しているのだ。さらに、彼らの微生物群ゲノムには抗生物質耐性を持つ遺伝子まで含まれていた。こうした遺伝子の中には、最近開発された合成薬への耐性を示すものもあるという。

 村人が外の世界や抗生物質との接触経験がないことを鑑みると、憂慮すべき発見であると研究者は述べている。

調査の対象は、2008年、上空から初めてその存在が確認されたヤノマミ族だ。その後、ベネズエラ政府は違法採掘者などから持ち込まれる疫病から村人を守るため、彼らに対して定期的な医療サービスを提供していた。2009年には許可を得たうえで、4~50歳までの34名の村人の腕、口内、便などからサンプルが採取された。

 ここから入手した細菌のDNAをアメリカ人および他の2グループ(ベネズエラおよびアフリカの先住民族。現代文明と一定の接触がある)のものと比較した結果、ヤノマミ族はアメリカ人の2倍、ベネズエラおよびアフリカ先住民の1.3~1.4倍程度の多様性を有していることが判明した。

 また、一部の便サンプルから抗生物質耐性がある細菌が28種も発見された。これらが獲得された経緯は不明であるが、土壌微生物に由来するのではないかと研究者は考えている。土壌微生物の中にも耐性を持つ種があり、これまで市場に登場した抗生物質の大半はこれらに由来しているのだ。

 こうした遺伝子が細菌内で別の機能を担っている可能性、あるいはヤノマミ族の中にはTシャツ、鉈、缶を所有する者がいることから、文明との間接的な接触があったという可能性もある。さらには、ヤノマミ族には発酵させたキャッサバを飲む習慣があるため、食事が原因ということも考えられるようだ。

実は細菌は人間の生理機能に決定的な役割を果たしており、免疫反応や代謝機能、さらには行動にすらも影響を及ぼすことが分かっている。しかし、近代的な衛生環境や生活様式が、人間の微生物群ゲノムに与えた変化については明らかとなっていない。ヤノマミ族の微生物群ゲノムの研究からそれを解き明かす手がかりが得られる可能性があるという。

via:livescience・hiroching
ヤノマミ族とは?

ブラジルとベネズエラの国境付近、ネグロ川の左岸支流とオリノコ川上流部に住む南アメリカに残った文化変容の度合いが少ない最後の大きな先住民集団である。言語の違いと居住地に基づいて4つの下位集団に分けられる。

衣服はほとんど着ておらず、シャボノと呼ばれる巨大な木と藁葺きの家に住んでいる。女子は平均14歳で妊娠・出産する。出産は森の中で行われ、へその緒がついた状態(=精霊)のまま返すか、人間の子供として育てるかの選択を迫られる。精霊のまま返すときは、へその緒がついた状態でバナナの葉にくるみ、白アリのアリ塚に放り込む。その後、白アリが食べつくすのを見計らい、そのアリ塚を焼いて精霊になったことを神に報告する。 また、寿命や病気などで民族が亡くなった場合も精霊に戻すため、同じことが行われる。

anomami Tribes Amazon 2015