新型コロナワクチンの「8・8億回分契約」は根拠不十分…会計検査院が指摘、改善求める


 会計検査院は29日、新型コロナウイルスワクチンの接種事業に関する検査報告書を公表した。検査院は、政府が製薬会社と契約した計8億8200万回分のワクチンについて、数量の算定根拠を示す資料が不十分と指摘。コロナワクチンのように緊急確保が必要な場合も根拠となる資料を作成・保存し、契約の妥当性を検証できるよう改善を求めた。


 検査院がワクチン事業について指摘するのは初めて。検査院は「数量が著しく過大な場合、キャンセル料の支払いや保管期限切れによる廃棄など不経済な事態が生じかねない」としている。


 検査院によると、ワクチン事業の決算状況は2020年度が7728億円、21年度が3兆4298億円の計4兆2026億円で、予算に対する執行率は68・4%。このうちワクチン確保には2兆4718億円かかった。


 ワクチンは政府が製薬会社と供給契約を結び、都道府県の人口や流行状況などに応じて割当量を決める。政府は20年10月~22年3月に、米ファイザー製3億9900万回分、米モデルナ製2億1300万回分、英アストラゼネカ製1億2000万回分、米ノババックス製1億5000万回分を契約。一方、27日現在の接種回数は計約3億8000万回で、実際に現場では廃棄も相次いでいる。


 検査院によると、厚生労働省は4社の供給可能数量や開発失敗の可能性などを考慮したとしているが、資料には契約の経緯や算定根拠の記述が不足し、妥当性を検証できないという。また、同省がワクチンの在庫数量を記録していなかったことも判明。検査院は「適時適切な在庫の把握は管理の基本」と不備を指摘した。


 同省は取材に対し、「世界的なワクチン獲得競争の中、国民が速やかに接種できるよう確保に努めた。指摘を受け止め、根拠資料の作成・保存などで改善を図っていく」としている。


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