「アビガン」を無償提供‐菅官房長官「約30カ国に治験目的で」

菅義偉官房長官は3日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬としての治験が始まった富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)について、新型コロナウイルスに対する治験実施のために約30カ国を対象に無償提供する考えを示した。 アビガンをめぐっては、安倍晋三首相が新型コロナウイルス感染症治療薬としての正式承認に向け、必要な治験プロセスを開始する考えを示し、富士フイルム富山化学は3月31日に同ウイルスの患者を対象に国内第III相試験を開始したことを発表している。


アビガン、週内にも供与開始 外相「70カ国以上要請」

政府は新型コロナウイルスの感染拡大に関し、インフルエンザ薬「アビガン」の各国への無償供与を週内にも始める。茂木敏充外相が28日の閣議後の記者会見で明らかにした。70カ国以上から要請を受け、38カ国は調整を終えたと説明した。

手続きを終えた国から国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)を通じて輸送する。茂木氏は「治療薬の開発は極めて重要だ。官民の取り組み強化と国際協力を一層進めていく」と述べた。茂木氏は7日に無償供与の方針を発表した段階で約50カ国から要請があると話していた。外務省によるとフィリピン、マレーシア、オランダ、ポーランド、クウェートなどへの供与を新たに固めた。


原料から中間体まで、化学業界が総力で治療薬「アビガン」増産をサポート

新型コロナウイルス感染症の治療薬として効果が期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」で化学メーカー各社が原料や中間体、原薬の供給体制を整えている。 

JNCは中間体を水俣製造所(熊本県水俣市)内のプラントで4月末から製造し、供給する。富士フイルムからの製造協力要請に対応した。

デンカは原料となるマロン酸ジエチルの生産を、青海工場(新潟県糸魚川市)で5月に再開。

宇部興産は宇部ケミカル工場(山口県宇部市)内で、中間体の製造と供給を始める。

カネカは原薬の製造体制を整え、7月に供給を始める。

シミックホールディングスは新型コロナ患者を対象とした臨床試験や製造を支援する。 

アビガンは富士フイルム子会社の富士フイルム富山化学(東京都中央区)が開発。原薬は富士フイルム富山化学や富士化学工業(富山県上市町)が生産している。富士化学工業の郷柿沢工場で生産した原薬を富士フイルム富山化学に供給して製剤している。 

茂木敏充外相は28日の会見で、「アビガン」をインドネシアやフィリピン、サウジアラビアなど38カ国に供与することを明らかにした。国連プロジェクト・サービス機関を通じて、大型連休前後に輸送を開始できるよう調整を進めている。70カ国から外交ルートを通じて要請があったという。 

茂木外相は「治療薬の開発はきわめて重要。開発の官民の取り組み強化と国際協力を一層進めていきたい」と話す。

外務省は、国際的な臨床研究を行うため、合計100万ドル(約1億円)の緊急無償資金協力を実施する。オールジャパンの体制で期待の治療薬で世界に貢献していく。

 日刊工業新聞2020年4月29日の記事を加筆






抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」に関する特許ライセンス契約(*1)を中国大手製薬会社 浙江海正薬業股份有限公司と締結2016年6月22日富士フイルム株式会社

富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」(以下、「アビガン錠」)の有効成分「ファビピラビル」に関する特許ライセンス契約を、中国大手製薬会社の浙江海正薬業股份有限公司(董事長・CEO:白 驊、以下 海正薬業)と6月21日に締結しました。富士フイルムは、本契約に基づき、海正薬業が、中国における「ファビピラビル」の関連特許(*2)を用いて抗インフルエンザウイルス薬の開発・製造・販売を中国で行う権利を同社に対して許諾します。また、それに伴い、同社より一時金および販売開始後のロイヤリティを受け取ります。「アビガン錠」は、富士フイルムグループの富山化学工業株式会社が創製したもので、2014年3月に日本で製造販売承認を取得した抗インフルエンザウイルス薬です。インフルエンザウイルスは、感染した細胞内で遺伝子を複製し、増殖・放出することで他の細胞に感染を拡大します。既存薬の多くは、増殖したウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐノイラミニダーゼ阻害剤ですが、「アビガン錠」は、既存薬とは作用メカニズムが異なり、細胞内でのウイルスの遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤です。「アビガン錠」は、この新しい作用メカニズムから、実験動物で各種鳥インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス作用が確認されています。今回、特許ライセンス契約を締結する海正薬業は、抗がん剤や抗生物質などの原薬や医薬品の研究開発・生産・販売を行う、中国大手の製薬会社で、世界70以上の国・地域でビジネスを展開しています。昨今では、大手製薬企業とのグローバルな提携も積極的に進めています。海正薬業は、中国内で懸念されているインフルエンザのパンデミックなどへの対応として、日本で製造販売承認を取得している「アビガン錠」に注目。インフルエンザウイルスと同じ分類に属するエボラウイルスなどの各種一本鎖RNAマイナスウイルスに対する「アビガン錠」の有効性にも期待して、昨年、富士フイルムにその有効成分である「ファビピラビル」に関する特許のライセンス要請を行ってきました。中国では、通常の季節性インフルエンザ以外にも、鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9など)のヒトへの感染が確認されています。さらに今後、鳥インフルエンザウイルスが、ヒトからヒトへ感染する能力を獲得し、新型インフルエンザウイルスへと変異することで、パンデミックに繋がることが懸念されており、新たな治療薬の開発ニーズが高まっています。富士フイルムは、化合物の合成力・設計力や解析技術、ナノテクノロジーなど、写真フィルムなどで培った技術・ノウハウと富山化学工業などの医薬分野のグループ中核会社の技術を結集・融合させ、画期的な医薬品を開発、提供していくことで、社会課題の解決に取り組んでいきます。*1 「アビガン錠」の有効成分「ファビピラビル」に関するもの。*2 物質特許や用途特許などを含む。

CEO・董事長白 驊
所在地浙江省台州市椒江区外沙路46号
設立1956年
資本金9.66億元
年間売上高101億元(2014年12月期)
従業員数約9,000名





新型肺炎の初の潜在的治療薬、販売を許可 中国国家薬監局2020年2月18日 19:12 

【2月18日 CNS】中国・浙江省(Zhejiang)台州市(Taizhou)宣伝部の微信(ウィーチャット、WeChat)公式アカウントによると、
「浙江海正薬業(Zhejiang Hisun Pharmaceutical)」が製造する「法維拉韋(ファビピラビル、Favipiravir)」が国家薬監局の販売許可を正式に得た。これは新型コロナウイルス感染による肺炎の流行が始まって以来、中国で初めて販売許可を得た新型ウイルスに対して潜在的治療効果のある薬で、感染の予防と抑制に重要な役割を担うとされる。 中国科学技術部の15日の発表によると、ファビピラビルは現在、新型肺炎の治療の臨床試験で使われている薬3種のうちの一つで、比較的高い治療効果と副作用が少ないことを示しているとされる。残りの2種は「リン酸クロロキン」と「瑞德西韋(レムデシビル、Remdesivir)」。