米連邦準備理事会(FRB)の当局者は、6000億ドルの国債買い入れ策に対する厳しい批判を受け、反撃に出ており、一部はこの計画に取り組む姿勢を強化している。
ガイトナー米財務長官(左)、バーナンキ米FRB議長
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ガイトナー米財務長官(左)、バーナンキ米FRB議長


 FRBの緩和策を強く支持するシカゴ連銀のエバンズ総裁は、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、景気低迷とインフレ率の低さを考える とFRBの措置は当然であり、景気見通しが変わらなければ、今後数カ月で追加購入が必要になるかもしれないと指摘。「今後も緩和的な金融政策の適用を望む。状況が変化しているとある程度思えるまでだ」と述べた。6000億ドルは緩和プログラムの「スタートとして良好だ」という。

 やはり緩和支持派のボストン連銀のローゼングレン総裁も同様の発言をしている。「景気見通しが劇的に改善しない限り、買い入れは満額になりそうだ」との 考えを示し、「景気が悪化し、ディスインフレーション(物価上昇率が低下していくこと)が深化し、失業率が上がるようであれば、追加措置に踏み切るべきか どうか検討が必要になるだろう」と語った。

 イエレンFRB副議長ニューヨーク連銀のダドリー総裁 などの高官は先に、FRBの政策が米経済に必要なステップだと擁護している。

 FRBは数カ月にわたる内部での議論の末、現在かなり居心地の悪い状況に置かれている。ウォーシュFRB理事、リッチモンド連銀のラッカー総裁、カンザ スシティ連銀のホーニグ総裁など複数の高官が、ここ数日に買い入れ策をめぐる懸念を表明し、インフレ率が上がりすぎる兆しがあれば短期で切り上げる用意があるとしている。

 議会や海外では、買い入れ策がさほど成長に寄与しない上、(悪性)インフレや資産バブルを引き起こす恐れがあるとの批判や、FRBがこれをやめるべきだとする意見がある。買い入れ策への期待から当初は価格が上昇した債券市場は、勢いを失った。商品相場主導の物価上昇や日本型のデフレが米経済を待ち受けて いるかどうかについては根本的な意見が分かれている。

 こうした意見の不一致は、FRBの政策について国民が混乱する一因となっている。債券や株の下落にもつながった可能性がある。FRBが次にどう出るか、投資家はヒントを求めて耳を澄ましているが、現在は特にこうしたヒントが読み取りづらい。

 インドのアウトソーシング会社ジェンパクトのバシン最高経営責任者(CEO)は、買い入れ策は支持するが、FRBの伝達方法が「悪い」と述べた。何を達成しようとしているのか、いつまで続くのかをもっと明確にする必要があるという。

 FRBに対する批判は16日に高まった。共和党のボブ・コーカー上院議員(テネシー州)とマイク・ペンス下院議員(インディアナ州)は、法律で定められ たFRBへの責務を議会が正式に縮小し、雇用を対象外にして物価だけに集中するよう呼びかけている。バーナンキ議長は15日にコーカー議員と会い、FRB の最近の措置を説明した。同議員は、FRBがインフレ率を低く抑えることに明確な焦点を置くよう望む、と語った。

 FRBのスポークスマンは「FRBには法律による責務を変える意向はない」と述べ、現在の責務が「適切」だとした。

 エバンズ総裁は、物価だけに焦点を狭めても、経済に対する自身の対応は現在と変わらないと語った。インフレ率は年率約1%で推移しているが、同総裁によ るとFRBの目標は2%。そのため、目標の2%に向かい始めるまで緩和政策を続けるのがいいとみている。同総裁は「インフレ目標が2%であることを本当に 真剣にみている」と語った。「わたしに言わせれば約1ポイントの乖離(かいり)だ」という。インフレ率が低すぎれば、次にデフレに見舞われかねないという のが総裁らの懸念だ。

 議論はますます耳障りになっているが、今度はバーナンキ議長自身がこれに加わるようだ。議長は19日にフランクフルトの欧州中央銀行(ECB)会合で講演する。

 ドイツをはじめ海外の当局者は、FRBがドル相場を押し下げ商品相場高騰を招くと非難している。同議長は世界の貿易不均衡について講演する予定だが、ドイツや中国など貿易黒字の大きい国が世界経済の問題の一因だとやり返すかもしれない。

 FRBその他当局者は、急速な経済成長ペースに合わせて人民元の上昇ペースを加速させることを渋る中国当局にいら立っている。FRBの一部当局者に言わ せると、人民元の過小評価は他の新興諸国が自国通貨の相場を低く維持する圧力となっており、インフレをあおっているという。

 ローゼングレン総裁は「中国が人民元の変動をもっと自由にすればプラスだろう」としている。

 上院の銀行委員会は16日、マサチューセッツ工科大学(MIT)のノーベル経済学者ピーター・ダイヤモンド教授 のFRB理事指名を16対7で可決した。

(11月17日 WSJより引用)

ドルを刷りまくって、インフレ率をあげるとかなんとか怪しげな学説を振りかざしているが、要はドルを紙くずにしてしまおうと言う魂胆である。アメリカには来年一月に迫った借金の返済期日が近づいている。それまでに、ドルの価値をがんがんと落としてしまおうと考えている訳である。下手をすれば、ハイパーインフレーションにしてしまおうとさえ考えているようである。それでなければ、アメロは世の中に登場できないからである。カナダと北米の通貨統合及びドルの下落を狙ったQE2はいったいどこまで続くのか?今後も良い訳を言いながら継続させる通貨コントロールを利用した経済変動操作には目が離せない所であろう。