驚きというほかはない。日本銀行が物価上昇見通しを上方修正したからだ。

驚きでない? しかし、この日銀見通しは大半のエコノミストの予想とかなり食い違っているのだ。

REUTERS

日本銀行本店(東京・中央区)

 日銀は28日発表した半年次の「展望リポート」で、生鮮食品を除くコアの消費者物価指数上昇率見通しを引き上げた。日銀は2012年4月から始まる12年度の同指数上昇率を0.6%と予想した。これはエコノミストらの予想0.1%上昇を大幅に上回っている。

 日銀の強気の見方が同年度の経済成長率を強めの2.1%とした予測に基づいているのは明らかだ。日銀はどうやら、2.1%成長の結果、需給ギャップが縮小する、つまり日本の工場やサービス部門の生産能力の稼働率が上昇すると考えているようだ。

 しかし、この物価上方修正の示唆するところは、日銀が時期尚早の金融引き締めに動くかもしれないということだ。日銀は以前、こうした行動をとったことがある。あまりに早急にデフレ終息を宣言したり、あまりに早い時期にバブルを心配したりした。

 日銀は1%前後の消費者物価上昇率を適切とみているが、これをどうみるべきか。他の多くの先進国のデファクトスタンダード(事実上の標準)が2%である ことはさておき、日銀が1%を適切としていることに伴う問題は、こうした極めて低い水準では、何らかのショックで需要が打撃を受けた場合、「安定」とみな した物価水準がすぐにデフレに転化する恐れがあるということだ。それは、グローバルな金融危機のあと、日本がデフレに逆戻りしていることを想起すればい い。

 また、1%という基準を設定することで、日銀は打つ手を十分に講じないままになるだろう。既に、アナリストの間では、国債、上場投資信託(ETF)、不 動産投資信託(REIT)買い入れなど、今月に入って発表された緩和措置がどれほど長く続くか疑問の声が出ている。日銀は、政策は一時的だとし、「金融不均衡の蓄積」があれば今月発表したその他の措置は撤回するだろうと述べている。「金融不均衡の蓄積」とは、簡単な言葉で言い換えれば「資産バブル」のこと だ。

 消費者物価指数の基準年が8月に変更された場合、日銀は確実に窮地に立たされるだろう。アナリストらによれば、この結果、インフレが現状よりも穏やかに 見え、最大0.5%押し下げられるだろうという。その場合、日銀は引き締めへの衝動をさらに脇に押しやることになりそうだ。

 いずれにせよ、今回の日銀のアップサイド(上方修正)にはダウンサイド(マイナス面)が存在するのは明々白々なのだ。
 
 [ハード・オン・ザ・ストリート(Heard on the Street)は1960年代から続く全米のビジネス・リーダー必読のWSJ定番コラム。2008年のリニューアルでアメリカ、ヨーロッパ、アジア各国に 駐在する10人以上の記者が加わり、グローバルな取材力をさらに強化。刻々と変わる世界市場の動きをWSJ日本版でもスピーディーに紹介していく]

(引用終わり)

(10月29日 WSJより引用)

FRBの日本支店である日銀は、時として変な事をやるように見えるが、全てFRBのバックにいる国際金融資本家の指示通りに動いている。