残暑が続く。食欲がなくても、果物なら何とか食べられそうだが、不思議にも、バナナとキウイを除く果物の消費量は軒並み減少している。「面倒くさい」という消費者のわがままぶりが明暗を分けているようだ。

リンゴは皮むき、種出し嫌われ/酸味苦手な若者、ミカンも不振

 表を見てほしい。総務省の家計調査データに基づく消費者の果物の購入数量だ。過去5~10年間の推移を見ると、リンゴ、ミカン、ナシ、ブドウ、スイカ、モモ、メロンなどは軒並み減少。増えているのはバナナとキウイだけ。要因は何か。

 「安くて手軽に食べられる。これが最大の要因でしょう」と言うのは、果物と野菜のプロである杉本晃章・杉本青果店主(東京都足立区)。

 バナナは安いうえに皮をむくだけで朝食代わりに食べられる。ここ1、2年はダイエットブームにも助けられた。輸入会社のドールは6月下旬、東京都渋谷区と稲城市にバナナの自動販売機を設置。値段は1房390円、1本だと130円で売れ行きは上々という。

 キウイは半分に切りスプーンですくって食べられる手軽さと健康イメージが受けているようだ。値段も1個100円程度と手ごろ。いまはニュージーランド産 が出回る。日本は最大の得意先。ニュージーランドの生産者たちは拡大鏡でキウイをチェックし、ふぞろいなものは除外して最高品質だけを日本に輸出する気遣いぶりだ。

 これに対し、リンゴ、モモ、ナシ、ブドウなどは、皮むきや種出しが面倒で敬遠されがちだ。杉本さんによると、野菜もカボチャ、ゴボウ、サトイモ、トウモロコシなど、煮たりゆでたり、皮をむいたり、下ごしらえが大変なものは売れないという。

 不思議なのは、皮をむくだけで簡単に食べられるミカン。売れてもよさそうだが、消費量は過去20年間で半減した。「若い世代で酸味を嫌う傾向が不振の要因。女性だと皮をむくときに白い筋がつめに入るのを嫌う向きもあるようだ」(日本園芸農業協同組合連合会)

 こうした中、ミカン産地の福岡県では、冷凍食品販売会社「八ちゃん堂」(同県みやま市)が今春、皮をむいた冷凍ミカン「むかん」(3個入り約400円)を博多駅などで販売し始めた。「シャーベット感覚で食べられる」とミカン消費の拡大に躍起だ。

 果物は甘いので「糖分が多く太りやすい」とか「血糖値が上がる」とのイメージがあるが、「それは誤解」と田中敬一・農研機構・果樹研究所専門員は指摘する。「1日に1~2個の果物は高血圧や脳卒中など生活習慣病の予防に役立つ」(田中さん)

 農水省と厚生労働省が生活習慣病予防のためにまとめた「食事バランスガイド」でも、1日1~2個の果物(約200グラム)の摂取を勧めている。

 ■主な果物の購入量の推移

 (1世帯あたりの年間購入量、単位グラム、総務省調べ)

           00年   09年

バナナ      18879 23019 

キウイ       1152  1571 

グレープフルーツ  3744  2660 

リンゴ      14870 13976 

ミカン      19488 13846 

ブドウ       3304  2494 

ナシ        6669  5022 

カキ        3652  3470 

スイカ       6638  4527 

メロン       4133  2609 

イチゴ       4060  3122 

モモ        2279  1971 

 ※キウイは00年の統計数字がなく、05年の数字。

(9月5日 毎日新聞)

学校で、もっと家庭科を学ばせる必要がある。「べき論」はいらない。健康に対する意識の猛烈な欠如と、甘やかされて育ってきたわがままとが結合して、今の状況ができあがっているのは明白である。若者の突然死が話題にはなってはいないが、徐々に増加してくるものと思われる。必要な栄養を取らずに走り続ければ、どういうことになるのかは、一目瞭然であるが、自分は違うと思い込みの激しいところは甘やかされて育ってきた証拠である。