コンサートホールでは大方、足元灯というランプが、客席内の座席下方に、通路(階段)の床に近い位置に灯るよう設置されています。
意識してみるとそれは消さないでいることがほとんどです。演出上一時的に消すこともあります。ただ、演出上全ての電気が消されることもあり、文字通り真っ暗になります。
劇場では日常茶飯事ですが、オペラを除くクラシック音楽に限っていえば、そこまで客席内の電気を天井も壁も床も全て消すのは、私の経験では、お祭り騒ぎの公演や出演者の意向など、なにか特別な意図のある演出の時ばかりのような気がします。
さて、そんな時は遅れてみえたお客様の途中入場をストップするのでしょうか?いえいえ、そんなことはありません。しかし、本当に真っ暗なので、目が慣れないと大変です。
クラシック音楽では基本的に、途中入場だからといって、自分たちレセプショニストも、お客様も双方が特に小さくかがむことはあまりありません。基本的には曲の間の演奏していない状態の時にしか移動しないため、どちらかというと堂々と歩く方が見栄えが良くて違和感がないのです。
しかし、劇場ではずっと上演され続けているのですから、やはり、扉の外でお客様にも説明し、「後方の視界の妨げにならないよう姿勢を低くしてください」とお願いしてから入場します。
そこでもレセプショニストのスキルが窺える場面となります。ペンライトです。これが本格的な誘導となると、なかなか難しいのです。
①まず、光をお客様の足元意外に洩らさないこと。これは掌で光を加減します。
②お客様の進み具合に合わせてお足元の一歩先という絶妙な照らし方をしながら移動する。
(劇場では自分の身体はほぼ屈んだ状態で、前を向き、ペンライトを持った腕だけ後方に出す。)
③通路の角を曲がる時や階段、段差の示し方は事故の無いようにきちんと誘導できる。
④お客様のお座席の列まで辿り着いたら、光を列の床だけに照射し、お足元を照らす。
⑤着席を確認したうえで、自身はペンライトを消し(あるいは握って光を消す、要は自分には使わない)、戻る。
③は最低限の必須項目ですが、①も重要です。
普段ペンライトを使うことのないホールでは、あまりそのような意識もなく、スキルの程度は①が出来ているかみれば一目瞭然といえます。
①~⑤一連のご案内が完璧にできるのはかなりの訓練が必要で、クラシック音楽オンリーのホールとそうでない場合では、研修でもかなり重要度が違ってきます。
そうは言っても、クラシック音楽の場合は通常事前に打ち合わせで客電ゼロになる演出は知らされ、場合によってはペンライトを2本持って、前後を照射しながらご案内したり、2人1組で複数の方の前と後ろを照らしたりと、技のある誘導ができるホールもあります。
劇場や、バレエ・ミュージカルなど多種の公演があるホールなど日常的に客電ゼロか かなり暗めとなるホールでは、ペンライト誘導にそれ相当の研修時間を割き、厳しく指導を受け、いつでも誘導OK!という態勢になっていることでしょう。
ペンライトはほぼ避難時用か、1年のうちに使うか使わないか、時々使う、毎回使う!と、所変れば本当にマチマチで、その認識とスキルは雲泥の差があることでしょう。