何回か前の記事でも触れたのだが、おれは一時期、勤務先の「労働組合」の執行部に籍を置いたことがある。(書記長として労組立ち上げに携わり、その後、副執行委員長 → 執行委員長と歴任したあと、約2年前に退任)
在任期間中、「時間外労働」の改善にも携わった。
過度な時間外労働を強要する経営者側にももちろん問題はあるのだが、それよりも、「定時で退社しにくい雰囲気が職場にある」という難問に突き当たった。
会社は、36協定がらみで、「定時を過ぎたら帰ってください」と(建前上)は言う(言うようになった)。
だが、そうは言われてもなかなか定時では帰れない。
帰りたくてもなんとなく帰れない社員もいれば、早く帰る社員を「仕事をしていない」と非難する社員もいる。相手の仕事内容・進捗具合などまったく把握していないのに、「早く帰れる=暇」という条件反射的思考をするのだ。また、仮に仕事がなくても遅くまで会社に残っていれば、なにか会社に貢献しているようで安心する、という心理状態も珍しくない。
どうしてこんな状況になっているのか?
まあ、言ってみれば、これは一種の「洗脳」に他ならない。
会社を「一党独裁の共産国家」に喩えることはよくあることだが、そういった国の民のことを、日本人は「国に洗脳されている」と(他人事のように)言うではないか。
「時間外労働」に対する不合理な思考・認識・感想も、まさに「遅くまで仕事をすることは善」であり、反対に「定時で退社するのは罪」であるという「思想」に「洗脳」されてしまった結果と言える。
他人を洗脳する方法には、2つの柱があるとされる。
1.同じ情報を繰り返し注入する。
2.他の情報(1.で注入する情報以外の情報)に触れさせない。
悲しいことに、人間というのは、これだけで洗脳されてしまう生物らしい。
時間外労働から脱却できないのは、
1.残業は真・善・美であり、定時退社は悪・恥・罪であるという具体例(個々の社員の言動)を毎日毎日、目の当たりにしている。
2.それ以外の社会・価値観に触れる機会から遠ざかっている。
ことが重ねられてきたからだ。
ならば「洗脳」を解く方法は?
論理の帰結として、上の2つの逆をすればいいのであるが、いきなり1.の逆をすることは難しい。いったん「出来上がってしまった」価値観をひっくり返すのは至難の技だ。
そこには、あらゆる“抵抗”が待っている。
外面的な抵抗のみならず、内面的な抵抗も並大抵ではないだろう。
現実問題として、遅くまで残って仕事をする社員を賞賛したり、早く帰る社員を貶めたりと、経営者側が鶴の一声をかけてくれば、その圧力で「洗脳」は都度、強化されてしまうのだ。
それなので、急がば回れ。
洗脳を解くには、まずは2.の逆をすることが効果的だ。
残業なんかしない会社も世の中にはある。
遅くまで残っていなくても(いないほうが)仕事がまわる。
といったことを、繰り返しインプットしていくのである。
そういった取り組みの結果、おれの勤務先はどうなったか?
まあ、現在はそれほど悪い状況ではない、という程度の答えで留めておくが、それよりも、これって何かに似ていないだろうか?
そう。「(ブラック企業の)経営者」を「(フェイク報道ばかりを流す)マスメディア」に、「社員」を「国民」に、「時間外労働」を「マスク着用」に、「定時退社」を「ノーマスク」に置き換えても、ほぼ同じことが言えるのだ。
「圧力をかけてくるマスメディア」
「外して良いと言われても外さない」
「外したくても外せない」
「ノーマスクの人間を非難する眼」
「着用していると(良いことをしているようで)安心する」
・・・・・・。
このような「洗脳」を解き、「洗脳された者から成る社会」に風穴を開けるには、「マスメディア」と同等の圧力で逆のこと(=真実)を発信していくか、「マスクを着用しなくても平気」という情報を繰り返し繰り返し見せていくしかないだろう。
マスメディア報道と同等の圧力を得るために、一般ピープルはいわゆる「数の力」に恃むしかない(組合の労使交渉も同じだ)。
こちらは多くの有志たちがさまざまなSNSで発信しているが、おれのブログも末席の末席にちょこんと座らせてもらっている、かな??
さらにおれは「2.の逆」のつもりで、「袖振り合う」ひとたちにさまざまな場面でノーマスクの姿(顔面)を「見せて」いるが、いまのところ、なかなか成果は上がっていない。
でも電車内とかで、本人はマスクを外さないのだけれど、ノーマスクのおれのそばに立って平気でいる人(特に若者)がいたりすると、おれはちょっと期待する。
「この子の洗脳はもうちょっとで解けるかな」と。