地球外生命体 | 不快速通勤「読書日記」 ~ おめぇら、おれの読書を邪魔するな! ~

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読書のほとんどは通勤の電車内。書物のなかの「虚構」世界と、電車内で降りかかるリアルタイムの「現実」世界を、同時に撃つ!

土星の衛星のひとつである「エンケラドス」に、もしかしたら生命体が存在しているかもしれない(という)。

正確には、<生命が生息できる環境が存在する可能性が高い>(朝日新聞3/12朝刊より)という研究結果が発表された。

生命体が誕生した「かもしれない」環境がある「かもしれない」という、二重の「かもしれない」をたどっての結果だが、可能性をつないでいけば期待はもてるということになるだろう。


地球外生命の存在については、おれ個人としては「なんともいえない」という認識だ。

確率論的には限りなく「ゼロ」に近いといわれている。そう理屈では解っていても、この広大な宇宙と無数に近い星を想うと、地球以外にまったく生命が存在していないというのは感覚的に納得できない。

地球以外にもあれば(いれば)いいと思うし、あった(いた)ほうが楽しいと思うが、一方で、生命が存在するのはこの地球だけと考えるほうが、地球の生命をより慈しめるような気もするのだが、どんなものなのでしょう。

さらに、この手のニュース・研究発表で混同してはならないのが、「生命が誕生し得る環境」と「生命が存在できる環境」とは違うということだ。

最近研究が加速している(ように報道されている)「人類の地球外移住」の対象はもちろん後者だ。

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話を衛星エンケラドスにもどす。

エンケラドスの直径は約500キロメートル。

月の直径が約3470キロだからけっこう小型だ。表面は厚い氷の層に覆われているが、その下に広大な「海」が存在している。そして、地表(氷)の割れ目からは水蒸気が噴き上げている。

探査機「カッシーニ」が実際に得たのはこの水蒸気の成分で、これにはナノシリカという物質が含まれていた。
ナノシリカが生成される条件のひとつが「90度C以上の海水」の存在であるため、エンケラドスの海底には地球の「海底熱水噴出孔」に似た環境があると推測される。

海底熱水噴出孔こそが生命誕生の環境であるという説もあるため、エンケラドスにも生命が誕生・生息しているかもしれない、という期待が高まっている。

・・・とされている。


だが、しかし・・・。

海底熱水噴出孔付近で生命体が誕生したという説は、1月にこのブログで取り上げた中沢弘基著『生命誕生』のなかで、その論理的矛盾を明快に指摘されている。

たしかに現在のところ「中沢説」が絶対正しいとは限らない。

しかし少なくとも、熱水噴出孔付近で生命が誕生し得ない理由は「言われてみれば納得」の理屈であり、将来的には、熱水噴出孔=生命誕生とは無関係 のほうが常識になりそうだ。


冒頭で二重の「かもしれない」と述べたが、そのうちの一方の可能性ははなはだ低そうだ。(もう一方の「熱水環境があるかもしれない」は、ほぼ確定に近いだろうが)


今後もエンケラドスに限らず、水、有機物、「熱水環境」(エネルギー)の3条件が存在する天体が複数発見されるかもしれない。そのたびに「地球外生命」の存在の可能性を究明するため、莫大な資財と労力と時間が費やされることだろう。

だがその前に(あるいはそれと併行して)、「熱水環境」で生命が誕生(存在ではない)し得るのか否か、その前提をとことん検証しておくべきではないだろうか。