今は昔のこと、京に住む木こりたちが、連れ立って北山へ行ったことがあった。すると道に迷って、どちらへ帰ればよいのかわからなくなり、山の奥深くに、四、五人ばかり集まって嘆いていた。
すると山奥のほうから人が来る様子。誰が来るのかと不思議に思っていると、四、五人ほどの尼さんたちが、歌を歌い、手振り足振りで舞を舞いながら、姿を現した。
木こりたちは、これを見て怖がり、舞を舞いながら来るとは、この尼さんたちは、とても人ではあるまい、天狗だろうか、鬼神だろうか、などとふるえていると、尼さんたちは木こりを見つけて、まっすぐにこちらへ来た。
とうとう尼さんたちが、すぐそばまで寄って来たので、木こりがびくびくしながら、「もうし、あなた方。どうしてそんなに踊りながら、山奥からおいでになったのです?」 と尋ねた。
尼さんたちが答えるには「わたしたちがこんなふうに踊っているので、お主たちも、きっと不思議に思っておいででしょうが、私どもは、なにがしに住む尼です。花を摘んで仏さまにお供えしようと、連れ立ってこの山へ登りましたが、道に迷って帰れなくなりました。そこに、たまたま茸が生えているのを見つけて、ひょっとすると、これを食べたらあたるかもしれない、と思いましたが、空腹のあまり飢えて死ぬよりは、いっそ食べてしまいましょうと思って、焼いて食べました。すると、たいそうおいしかったので、食べてよかったと思ううちに、いつのまにか、その気もないのに手足が動き出して、舞を舞い始めました。不思議なことと思いますが、なんともとめようがありません」と言って踊っているので、木こりたちも話を聞いてあきれ果てた。
しかし木こりたちも、しだいに腹がへってきたので、尼さんたちが食い残して、なお持っていたその茸を、あたるかもしれないが、飢え死にするよりはましだともらいうけて食べた。
そうすると木こりたちも、ちっともその気がないのに、尼さん同様に手足が動き出した。そこで尼さんも木こりもお互いに舞い続けながら、相手の踊るのを見て笑いあった。
おのおのは、しばらく踊ったのちに、どうやら酔いがさめたような気分になって、どこをどう歩いたともわからぬうちに、自分の住まいに帰っていた。
こののち、この茸のことを舞茸と呼んだ。思えば、たいそう怪しいことである。近頃でもこの舞茸というものはあるが、それを食べても必ず舞を舞うとは限らない。どういうわけか不思議千万だ、という話である。
(巻28第28話)
舞茸中毒か?
話末では舞茸命名由来譚の体裁を取る