「スドーーーン!」
バー「なんと」に響き渡った轟音は、その振動で並べてあったグラスをカチャカチャと鳴らす
ボクチンは堅くつぶった目を開ける
男はボクチンと同じように床に倒れていた
「!?」
「・・・?」
ボクチンと男の間に一人、小さな人影が立っていた
男はガバッと跳ね上がると、怒り狂った猛牛のように、さらに勢いを増した突進をしかけた
誰だかわからないけど・・・「逃げろ!!」・・・と叫びたいのだが口の中にたまった血のせいで、うまく言葉がでない
小さな人影がひらりと向きを変えるだけで、最小限の動きでかわし
ゴリラ男の手首とズボンのベルトを「ちょい」とつまむと
次の瞬間ゴリラは「くるんっ」と空中で一回転したあと、またもや轟音とともに床にたたきつけられた
これは・・・
ライトの逆光の光になれ、人影に目を凝らすと、それはあの
たまねぎさん・・・であった
襲ってきた男の半分ぐらいの身長の、小さな婦人が、まるで団扇で蚊をハタクがごとく、あのゴリラ怪人を投げ飛ばしているのだ
相手の力に、ほんのちょっと自分の力をたして、そのまま相手に返す
これは・・・「合気」だ!!
実戦で観るのはボクチン初めてだ
「だいじょうぶ?」
なんさんがタオルを渡してくれた
「あ・・・あれは?」
「たまちゃん?たまちゃんは、いろんな武術の達人らしいよ」
「武道を極めちゃって、今は仙人をめざしてるらしいの」
「かっこいいね!!」
なんさんは、なにかウズウズとくるものあったのだろう
両手をグーにして、前のめっている
「よーーし!私も!!」
「?」
なんさんは、カウンターの裏から大きなフライパンをもってきた
「へ・・・?まさか、それで?」
「えっ?ちょっ?なんさん、ちょっと」
「たまちゃん!こっち!!」
なんどもなんども向かってくる男を、ひらひらと踊るように床に投げつけていた、たまねぎさんは
「あーーい!」というと
最後の力を振り絞ったように駆けだした男の足元に滑り込むと、こっちに向けて投げ飛ばした
なんさんは
「バッターなん!背番号7!!」と叫ぶと
まっすぐに吹っ飛んでくる男の顔面めがけて
黒光りするフライパンをフルスイングした
「パッカーーーーン!!」
「ホームラーーーン!!」
なん選手は清々しそうな笑顔で、ガッツポーズを決めた
続く
