藤浪晋太郎〜ジキルとハイドの真実 ACT-1(会長記) | 堂島猛虎会のブログ

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タイガースファンの3人が綴る、猛虎愛ゆえの強く厳しい評論を発信していくブログです。

ACT-1 指先からすり抜ける魔球

 

 

■藤浪晋太郎 1994年生。大阪府堺市出身 右投右打 197cm/100kg

 

2013年から2016年までの4年間で103試合に登板。ローテーションを守りコンスタントに668イニングを投げ1年目から二桁勝利(10勝)をあげるなど通算42勝32敗。

2015年には7完投、4完封を上げるなど高卒ながら大エースへの階段を着実に登りつつあった。

 

しかし2016年途中からおかしくなる。

もともと決してコントロールのいい投手ではないが、この頃から制球難を露呈し、乱れるようになっていく。

 

それは一説にはこの年から就任した金本知憲監督の懲罰的な続投で161球を投げさせられたためだとか、同じくこの年に就任した香田投手コーチと会わなかったのだとか。

または同じ投手の先輩である広島、黒田へのブラッシュボールに対する恫喝に萎縮してしまったのだとか様々な説が飛び交う。

 

またインステップ(クロステップ)の矯正が原因だとする説も根強い。

インステップとは前へ踏み出す足が真っ直ぐホームベースに向かって出されるのではなくやや三塁側方向へクロスして踏み出すフォームのことを言う。当然踏み出した後上体を捻るため身体に負担が大きく、また右投手の場合左打者から球の出所が見やすくなり対戦成績が悪くなると言う一面がある。

 

私の結論から言うとインステップは投球フォームの一つの個性だと思っている。

だからそのステップ自体が悪いものではないが藤浪個人にいくつかの問題点があるのだと思う。つまり「藤浪のインステップフォーム」に問題があるのだ。

 

MLBの投手でもインステップの投手はたくさんいる。

だがそれでも基本的な理論は同じだ。

後述するが「回転軸とSSE」だ。

 

タイトルから先に紹介して藤浪晋太郎の問題を紐解いていく。

 

藤浪の問題点は

(1)「荒れ球」ではなく「抜け球」にある。

(2)「上半身と下半身の乖離」

(3)「表裏一体の性格と器用さ」

 

(3)の「性格」について、藤浪の迷走を「イップス」だとする人も根強い。

しかしイップスとは精神的な原因から動態的な伝達が故障し意識と身体のバランスが崩れる状態のことである。

藤浪の場合は「こう投げようと思っているのに身体がそう動かない」のではなく「こう投げようと思っている」状態そのものが間違っているのだ。

 

入団時の投手コーチであった中西清起は藤浪を「合理的で賢い子だった」と言っている。

「何のためにやるのか」をきちんと説明して理解させないといけなかった。

逆に「良い」と思えば貪欲に何でも取り入れる柔軟さも持ち合わせている。

その反面、自分が認めた人の話でないと耳を傾けない

要するに自分が納得することが何よりも大事なのだろう。それはプロの世界では重要なことでもあるのだがひとつ間違えばどんどん孤立するし迷宮に迷い込むことになる。

馬鹿であれという意味ではないのだがある程度の鈍感力もまたプロの世界では必要なのではないか。

 

またその長身からか不器用そうに見えるのだが思った以上に身体が柔軟で器用だ。やろうと思ったことが出来てしまうのが裏目に出ることもある。前途したようにいろんな事を取り入れ改善しようとする姿勢はずっと見て取れた。それだけでもメンタルから崩れる投手ではない。

 

メンタル面だけでいえばこんなにボロボロに叩かれてまだ壊れないメンタルは私は逆にすごいと思っている。

 

(1)と(2)については連動している。

「(1)が問題で(2)が原因」だ。

長くなるが順番に解説していく。

 

 

■藤浪の問題点は

(1)「荒れ球」ではなく「抜け球」にある。

 

まず藤浪晋太郎はスリークォータースローである。オーバースローより腕が下がる投げ方で我々はまずここが大いに不満なのである。あれだけの長身(197cm)なのになぜ上から投げないのだろう。そうすればスライダーもカットボールもいらない。ストレートとカーブ、スプリットだけで楽々2桁以上勝てる。

2019年まで在籍したランディ・メッセンジャーなど良い例だ。真上から強いストレートを投げ込んでいた。

 

 

昨年引退した藤川球児も腕はこの位置。高い打点でボールを叩く。

 

同じ試合、藤浪の腕はこの角度だ。

 

 

野球解説者の中にも「藤浪の持ち味は荒れ球だ」とするOBが散見される。

コントロールが悪いことは1番の問題ではない。

いや、まぁ・・・それにしてもコントロールは悪すぎるが。

 

下の図を見ていただけるとわかりやすいかと思う。

 

 

リリースが少しずれるだけでホームベースに到達する時にボールは上下にブレる。

極端に言えば真っ直ぐ腕を振り下ろせればボールは上下にしかブレないが、スローアームに角度がつく事で上下+左右のブレ幅が生じる。

つまり腕の角度が倒れるほどボールのコントロールはつきにくくなるという事だ。

 

ダーツを想像して欲しい。

ダーツは肘を支点にして前後の腕の動きだけでスローする。

ダーツを腕を斜めにして投げる人はいないだろう。

 

また一時藤浪自身がマウンドで見せていたボウ&アロウの動き。

和弓を斜めにして引く弓手はいない。

ボウガンを斜めにして射る射手はいない。

そういう事なのだ。

 

ここでひとつ疑問が生じるだろう。

スリークォータースローの投手が全てコントロールが悪いのか?となればもちろん答えはNOである。G菅野だってスリークォーターだ。

では藤浪とどこが違うのか。

 

今いちど問題点(1)に戻る。

四球を年間80出そうが15勝すれば良い。押し出しをいくつ与えようが200個三振を奪えば良い。15勝しようが200奪三振を記録しようが打者の頭に剛球をぶつけてしまえばお終いなのだ。

四球は幾つ出しても死球は1球で選手生命をも奪いかねない。

何よりもタイガースファンは田淵の件でその事を知っているはずだ。

 

若いファンの中には知らない人もいるので事件のリンクを貼っておく。

 

 

 

これ以来打者のヘルメットには必ず「耳当て」がつくのが推奨され、のちに義務化される。

2012年の阪神ー巨人のOB戦で王貞治が耳当てのついたヘルメットをかぶっているのに違和感を覚えたものだ。

 

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いつものように脱線するので・・・話を戻す。

 

藤浪クラスの豪速球が唸りを上げて打者の頭部に向かっていく・・・

そりゃ怖いだろう・・・。

 

 

こうなるわな。。梅野マスクしとるな・・・ずるいな。。

 

なぜ藤浪のボールは「抜ける」のか。

 

2枚の写真を見比べて欲しい。

 

 

直球の場合投球はリリースの瞬間、人差し指と中指の2本指で最後放たれる。が、藤浪の「抜け球」は中指にかからず人差し指の内側(親指側)を滑るように抜けて右打者の頭部方向へ向かう。

真上から地面に垂直に振り下ろされる手指からはこの方向には抜けない。

腕が斜めに振られるからここからボールが「すり抜ける」のである。

遠心力によって外へ飛び出そうとする力が働き、斜め上方向へボールは行こうとする。

それを抑えるのが2本の指先なのだ。

そしてそれを制御するのには「手首が立っている」必要がある。

 

つまり、オーバースローでない代わりにスリークォータースローの投手は手首を立ててボールをコントロールしているのだ。

菅野のコントロールがいいのはそういうわけだ。

 

 

藤浪ももちろん常に手首が寝ているわけではない。

ブルペンで投げている時にはちゃんと「立っている」し、試合でも出来ている。

ブルペンで出来るものは試合でできるだろう?

 

それの答えが昨季終盤の中継ぎ登板だ。

この殺人球が100球に1球でるボールだとすれば1イニング25球だと1/4の確率に減る。その上に先発で100球投げるにはいくつかの球種が必要となってくるが救援登板なら極端に言えば直球だけで押し切れる。

 

逆に100球投げれば1球でる確率だとすれば先発すれば必ず1球は抜け球が頭に向かうことになる。これは相当悩ましいことだと思う。

いくらボールがあっちゃこっちゃ乱れようが最後バシッと抑えればいい話でそれであれば「荒れ球が持ち味」だと称してもいいと思う。ところが「抜け球」はそうはいかない。

 

それが

■藤浪の問題点は

(1)「荒れ球」ではなく「抜け球」にある。

 

という事なのだ。

単純に考えればこのACT-1だけでひとつの解答だと思ってもらってもいいかと思う。

 

次回ではもう少し掘り下げて、なぜ手首が寝るのか?その答えとなる

問題点の(2)「上半身と下半身の乖離」について考察する。

 

 

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ACT-2 ジキル博士とハイド氏

~The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde~

 

 

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