歴史のことば劇場79

いま「自動物流道路」の計画など自動運転・搬送の技術開発が進んでいると報道されています。人手不足や過疎が「新たな投資」を呼んでいますが、
かつてシュンペーターは、人口減少は「投資機会の枯渇」ではなく「別の投資機会を間違いなく生みだす」と予言しました(1942)。
曰く、総人口が伸び悩めば、需要が伸びず、生産が伸びず、投資が伸びないと言われるが、そうした結論にはならない。
欲望と有効需要とは別物であり、もし欲望が有効需要であれば、最貧国の需要が最も旺盛なはずだ。しかし実際は(資本主義国の)出生率の低下で自由に使える所得が他のルートに振り向けられる。
マルクス主義やケインズ経済学の言う「投資機会消滅論」は成立しない。
むしろ失業者の規模、出生率の低下で生産的な仕事に就く女性の増加、死亡率の低下による働ける期間の延長、次々と登場する省力化装置、人口の急増と比べ、質の劣る補足的な生産要素が避けられる(収穫逓減の法則が働かない)可能性―これらを考えれば、次世代の労働者の一人当たりの生産効率が上がるとの予測は十分支持できる。
「かつて、たいした根拠もなく『過剰人口に伴う食糧不足で経済危機が起きる』と世論を不安にさせた経済学者は、今度はやはりたいした根拠もなく『人口の不足で経済危機が起こる』と世論を不安にさせる」と。
変化を衰退として誤って認識してはならない―
シュンペーターの議論には、責任ある長期的視点がうかがえますが、
しかしそんな彼でも悲観的になり、資本主義は衰退すると考えた理由の一つに「家族の衰退」がありました(J・Z・ミュラー)。
現代社会は、親となる真の価値を評価し損なっている。親子関係は、肉体的・精神的な健康、「正常性」といってよいものを与えるが、
それは「現代人のサーチライトでは照らされない。…公私にわたり直近の功利主義的関連性をもつと確実にわかっている些事には注意を払うが、人間本性あるいは社会的有機体の隠された必然性という考えには鼻で笑う」。
また「所得の探求は終焉」し、将来世代への関心は低下し、消費以上に働く誘因がなくなる…。
しかしシュンペーターは「自称保守主義」(T・K・マクロウ)のバーク主義者と考えられ、
そのE・バークは、家族の財産を異なる世代間で継承する願いこそが社会秩序にとって最も重要とし、
「所有権の維持…それは社会それ自体の永久化に最も貢献する」「人は自分の能力を高めるには、社会秩序や遺産によって受け継がれた文化を必要とする」などと述べた。
彼らの論理に従えば、
資本主義の安定は、じつは資本主義以前からの伝統的な道徳や文化的遺産に負っており、
「いま生きている者だけでなく、すでに死んだ者、そして今後生まれる者との関係」の制度の永続(バーク)にかかっている。
そうであるならば、現今の「新冷戦」、とくにウクライナ戦争以後の世界状況では、自由主義と全体主義・権威主義の一体どちらの陣営の体制が「制度の永続」そして「社会の永久化に貢献する」のかは、誰の目にも明らかではないではないでしょうか。




