1月12日に東京大学の図書室で行われた「地域連携によるコミュニティケアを考える~市民参加で考える私のまちの地域包括ケア」というシンポジウム&ワークショップに参加しました。
超高齢化社会を迎えるにあたって、住民主体による地域包括ケアシステムの構築の方法や多職種連携をどのように実現すればいいのか、実際の取り組み例をうかがいながら、その秘訣を学び、みんなで考えるという趣旨のイベントです。「一住民として何ができるか」というテーマで参加者同士で活発な意見交換も行いました。
東埼玉総合病院 在宅医療連携拠点事業推進室室長の中野智紀医師から「地域連携によるコミュニティケアのつくりかた」についてお話をうかがいました。
埼玉県は、人口あたりの医師数や看護師数、医療施設数が全国で最も低い水準にあり、中でも人口約66万人の東端に位置する利根医療圏は高齢化率が高く、医療資源の不足が深刻な問題となっています。今後ますます、医療を必要とする住民の増加が見込まれる中で、どのように質の高い医療を提供し続けるかが大きな課題となっています。
埼玉県幸手市は、平成24年より、在宅医療推進を含む地域包括ケアシステム「幸手モデル」の構築や共助の為の仕組みづくりを行い、その取り組みは全国から大きな注目を浴びています。
プロジェクト立ち上げ時の状況や実現にいたるまでの経緯など、具体的なお話はたいへん感銘を受けました。特に住民を巻き込んで進める地域コミュニティの基盤の作り方など得るものが多かったです。このような取り組みが全国的に広がっていけば、すばらしいと思いました。
全国の医療機関、なかでも地域医療を支えている地方の病院での医師不足が大きな問題となっています。高齢者が増加するなかで、今後、糖尿病や高血圧をはじめとする生活習慣病や慢性疾患を診療する内科医の役割も重要となりますが、内科医の医師不足も顕著です。
中野医師によると、特に深刻化した原因として、2004年4月から導入された「新医師臨床研修制度」を上げました。この制度以降、従来地元の出身大学に入局し研修先を決められていた医師が、自分の意志で研修先を選べるようになったことで、新人医師が大都市の有名病院に集中、研修終了後もそのまま勤務するケースが増えたたため、大学医局では慢性的な人材不足となりました。
そのため、医局から関連病院や僻地の病院に医師を派遣することができなくなってしまいました。地方病院勤務の医師は人員不足のため苛酷な労働を強いられることになり、その結果、退職が相次ぎ、診療の継続も困難となる事態が起きました。
中野医師が専門とする東埼玉総合病院の糖尿病診療も医療崩壊の危機に直面したそうです。これを乗り切るために今までの病院完結型の医療から地域完結型の医療に移行させる必要に迫られ、そこで始まったのが地域ぐるみで疾病管理を行うための地域医療連携ネットワーク「とねっと」です。
「とねっと」は、埼玉利根保健医療圏医療連携推進協議会が構築、管理運営するIT技術を活用した診療情報を共有化する地域医療ネットワークシステムです。
地域医療連携のための情報共有システムを導入している医療機関は増えてきましたが、このシステムの特徴は、自治体が地域共通IDとかかりつけ医カードを発行しているところです。つまり、利根保健医療圏(行田市・加須市・羽生市・久喜市・蓮田市・幸手市・白岡市・宮代町・杉戸町)の全住民が対象となります。2年間で2万3000人が登録しているというから、この普及の早さは驚きです。
地域の医師や看護師不足の中、限られた人材や高度医療機器などを有効活用し、地域のかかりつけ医と中核病院が役割を分担しながら連携し、地域全体で医療を完結することを目的としています。検査結果や投薬情報を共有し、重複検査や薬の重複投薬も防ぐことができます。
この他にも、多職種協働によるケアカフェや健康と暮らしの支え合い協議会、暮らしの保健室、見守りネットワークなど、住民を主体とした地域コミュニティも確実に育っています。
この地域の取り組みはたいへん興味深いので、また、ゆっくり紹介していきたいと思います。

