前回は、受動喫煙と子どもの健康について、導入編的な記事を書きました。
今回は、個々の研究結果などに関して、少しだけ詳しく説明していこうと思います。
受動喫煙すると、子供の咳・痰・喘鳴が多くなる
受動喫煙が子供の咳、痰など呼吸器症状を多くする報告は多数あります。
家庭内で受動喫煙をしている場合、咳・痰・喘鳴など呼吸器症状は1.2倍〜1.5倍ほど増加するのが分かっています。
特に、両親が揃って家庭でタバコを吸っていると、より呼吸器系の症状は出やすいです。
受動喫煙と子供の気管支炎・肺炎
乳児が受動喫煙をすると、気管支炎や肺炎のリスクが上がります。
さらに、気管支炎・肺炎の重症度が上がることが分かっています。
この家庭内での受動喫煙の影響は乳児だけでなく、学童でも同様の傾向があるようです。
これらの死亡者数は、ほとんどが南アジア・アフリカなど貧困地域で起こっていると推測されるので、日本を含む先進国での影響は小さいでしょう。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ppul.24137
また最近、乳児のRSウイルス感染症で、重症化しやすいと報告されています。
空気の通り道が荒れてしまうので、より重症化しやすいのかもしれないですね。
受動喫煙は喘息の発症および重症度に影響する
受動喫煙により、喘息になる可能性、さらに喘息の重症度も上昇することが分かっています。
受動喫煙すると、喘息を発症するリスクは20%〜85%程度上昇します。
原因として、受動喫煙により;
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気道感染を繰り返し、気道が痛む
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タバコの刺激で気道が炎症を起こす
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アレルギー反応を起こしやすくなる
がメカニズムのようです。
受動喫煙と急性中耳炎の関係
子供が受動喫煙をすると中耳炎を起こしやすくなります。
この傾向は、特に2歳以下の小児で顕著です。
子供の中耳炎は風邪と同時に起こります。
受動喫煙のため咳・痰など感冒症状が続けば、中耳炎が起こりやすくなるのは納得できると思います。
こちらのメタ解析の結果によると、受動喫煙によって;
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中耳炎の再発リスクを20%上昇した
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外科的処置(鼓膜切開)のリスクを86%上昇した
という報告があります。
受動喫煙とADHD
妊娠中にニコチンの摂取をすると、こども(胎児)の脳の発達に悪影響を及ぼす可能性があると報告されています。例えば、
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喫煙をするとADHDのリスクが60%上昇
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受動喫煙をするとADHDのリスクが30%上昇
と推定された研究結果があります。
受動喫煙と癌
肺癌患者の17%程度は、小児・思春期の受動喫煙が原因と推測されています。
また、肺癌だけでなく、血液腫瘍(白血病など)のリスクも1.7倍〜4.6倍上昇させた、報告もあります。
ここからいえるのは、幼少期から受動喫煙をすると、肺癌や白血病のリスクが上昇します。
受動喫煙と心疾患について
ドイツで行われた研究で、家庭での受動喫煙は小児の高血圧の原因になる、と報告されています。
受動喫煙と動脈効果の相関関係は、オーストラリアでの別の研究で判明しています。
しかし、現在のところ、幼少期の受動喫煙が将来の心筋梗塞のリスクになるかは結論がでていません。
ですが、医療者の視点で普通に考えてみても、小児期に高血圧・動脈硬化になれば、近い将来に心筋梗塞になると予測するのは、論理的な推測といえます。
乳児突然死症候群(SIDS)について
こちらは有名なので、ご存知の方が多いと思います。
受動喫煙で乳児突然死症候群 (SIDS) のリスクはあがります 。
デンマークでの研究になりますが、24,986人の乳児を追跡をして、受動喫煙をしていた乳児は、受動喫煙をしていない乳児と比較して、SIDSのリスクは3倍上昇することが分かっています。
前回の記事はこちら:
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