これまでこのブログにもMMTについて書いてきた、というより引用してきた。というのもいくら勉強しても(という割に勉強してないが)幾つかのあるところでつまづくとどうしても先に進まないから、納得づくで記事を書くことができない。中途半端で書くか、引用でお茶を濁してしまう。

 

最近は国会審議での西田昌司議員のMMT講義?議事録をそのまま引用したりした。下手に自分の解説より専門家の言うことを読んでもらう方が間違いがないと思うからだ。

 

 

 

私のMMTの勉強の仕方は、MMT解説本を読みながら、MMT批判者の言も受け止めてどう反論できるか鍛えることだ。

そのために、これも先般小幡績氏のコラムを引用したりして、その間違いを理解したりしている。三橋貴明氏その他が緊縮財政派の論客として挙げている経済学者などの言い分も勉強になる。

 

 

またYoutubeなどでの国際金融事情解説を見聞きして、その解説の誤りを指摘出来たりするとうれしい。

例えば、国際金融アナリスト大井幸子氏の最近のYoutube「国庫からお金が無くなるXデーはいつか 政府も個人もお金がないアメリカの現状」(2023.4.20)などは、米国の債務上限について解説しているが、MMTでいう自国通貨建ての国債ならデフォルトはあり得ない、ということを理解していないから、米国債務の大きさにビックリして訳の分からない解説になってしまっている。

 

 

債務上限なんて人為的なものでいつもの駆け引きに過ぎないのに、大井氏は政府が借金をする金がもう物理的にないんだというように理解している。国庫がゼロになる、それは近々のことだと。その前に米国民の家計が借金で大変だと前振りをする。これは家計と政府が同じもので借金で首が回らないとわざと混乱させるというか誤認させるような話をする。知ってか知らずか、こんな程度の理解でよく国際金融アナリストなんかやっているなあと思うのです。

つまり、米国債の発行の仕組みがわかっていないのです。米国政府には通貨発行権があるので国債は発行したければ発行すればいい。外部の誰かから買ってもらうわけではないのです。

 

今日は大井幸子氏のYoutube批評ではなく、緊縮財政派の政府・財務省や御用経済学者だけでなく、MMTに批判的なのは保守派にも結構多いと最近思うようになりました。そしてそれはなぜなのか、と。

 

日本でMMTといったら、中野剛志、藤井聡、三橋貴明ら各氏の保守派が中心となってMMT解説本を書いており、財務省の緊縮財政を批判するためにMMTを大いに世間に広めているわけですが、渡辺惣樹氏や宮崎正弘氏、茂木誠氏らの保守派はなんだかMMTには批判的なようです。

陰謀論の中に、米国FRBを作った国際金融資本、ロスチャイルドとかを指摘する見方がありますが、これを指摘する見方にMMTの考えとかなり違ったものがあるように思われます。

 

国際金融資本が世界を支配しているということから、FRB(連邦準備制度理事会)を否定、つまり中央銀行を否定し、信用創造を否定し、不換紙幣制を否定し、金本位に戻れと主張する。信用創造が諸悪の根源だと。つまりMMTと貨幣観を全く異にしているのです。

 

例えば、茂木誠氏は「教科書に書けないグローバリストの近現代史」という渡辺惣樹氏との対談のなかで、

「ニクソン大統領は突然「金とドルの交換はやめる」と言い出した。これによりドルは手持ちの金と関係なく、無限に発行できるようになりました。これでまたFRBは莫大な利益を生むようになったのです。ふつうは通貨を無限に発行したら、その通貨は価値が下がり、インフレが起こります。それなのにドルが暴落しなかったのは、アメリカが発行する国債を同盟国に買わせたからです。「米軍に助けて欲しければ、米国債を買え」と。

日本はアメリカの国債を買い続け、やがてサウジアラビアやクウェート、最近は中国も買うようになりました。だからどんなにドルを刷っても、米ドルは暴落しません。アメリカは困ることがないのです。(中略)

彼らは巨大資本を背景に、莫大な選挙資金を供給して、アメリカの政治に介入しています。共和党、民主党を問わず、ウォール街のご意向次第で何でも政策を決められるようになりました。」

 

あの何でも知っている茂木氏が国債の発行の仕組みも知らないようです。

「ドルが暴落しなかったのは、アメリカが発行する国債を同盟国に買わせたからです」なんて、MMTをちょっと齧った人ならすぐにこの説明のいい加減さがわかるでしょう。アメリカは別に国債を他国に買わせたわけじゃなく、他国が勝手に買っただけなのです。茂木氏の言い方からすると、中国が米国債を買わないぞなんて言い出すとアメリカは大いに困るのだ、なんていう話になりますが、そんなこともナンセンスなんです。

茂木氏は信用創造を否定する陰謀論にからめとられて、日本の緊縮財政派と同じ主張をしてしまっている。これは大井幸子氏の説明となんら変わらないのです。

 

渡辺惣樹氏も同書のなかで

「アメリカはニクソン・ショックでドルと金のペッグを外したあと、石油取引をすべてドルベースで行うペトロダラーシステムを始めます。特にサウジアラビアに対して、儲かったお金でアメリカ国債を買わせる一方で安全保障をアメリカが引き受けると約束した。これがキッシンジャーが発明したドルを暴落させないシステムです。

アメリカの経済学者たちは、いかにしてドルと金のペッグをなくすかに知恵を絞ってきました。それが成功しているのが今のアメリカです。ケインズ理論をベースに次々と怪しい経済理論を発表している。トラ注 MMTのことか

経済は金とのペッグがある限りそうそうおかしなことにはなりません。…いまや「何パーセントの金を準備しておくべき」などと議論する人はいません。金融政策は完全にブレーキが外れ、「インフレが起こらなければいくら発行してもいい」更には「適当なインフレになるのは歓迎だ」となっています。

そうした中、アメリカではバイデン政権がコロナ禍で始めた大盤振る舞いによりハイパーインフレが始まっています。これから起こるインフレは「ブレーキをかけるすべがない」という誰もが経験していない世界でのインフレです。」

と言っています。

 

茂木氏と同様に歴史にも現代情勢にも精通する渡辺惣樹氏ですら、経済に関しては失礼ながらこの程度の認識しか持っていないのです。インフレの原因指摘もとても曖昧です。

MMTを怪しい経済理論とすら言って否定するわけですから、国債発行の仕組みや財政の意味など分かるわけがないのでしょう。本当に残念なことです。

 

保守派で現代政治を鋭く指摘する論客がなぜそんな見方になってしまうのか。

それは、アメリカの国際金融資本の傍若無人な振る舞いが金を動かし、政治を動かし、世界をダメにしてしまっている。それへの怒りのあまり分析道具に過ぎないMMTまで諸悪の根源のように思ってしまったのではないでしょうか。

そして、このMMTは日本では政府・財務省の間違いを指摘し、失われた30年を取り戻す武器であるとMMT推進保守派は考えているのに、別の保守派は、米国の支配層を支えているのはMMTだと渡辺惣樹氏らは捉えているのです。しかも、アメリカMMTは左翼民主党が主導している理論だから余計に忌避したくなるらしいのです。

 

あるブログでMMTについては素人だとのことですが、やはりMMTを嫌う理由が大きな政府を信奉する左翼理論だからよくない、と書かれていました。

「このMMT理論を付き進めていくと、民主党の目指す共産主義 社会主義、マルクシスト主義に到達する。つまり 国が 国民すべてを監視、管理する社会。」

 

日本は保守派が日本経済の活性化のための理論的武器と考えているのに、アメリカでは共産主義、全体主義をもたらす経済理論とみなされている。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、のたぐいじゃないでしょうか。もう少し冷静にMMTを見てほしいものです。でも渡辺惣樹氏らの考えに通じているのでやむを得ないかもしれませんが。

 

もうこうなると神々の戦いで決着など着かないわけですが、MMTはイデオロギーではなく、貨幣観の見直しとその貨幣の信用創造の仕組みの説明でしかないのです。だから、謙虚にMMTをみれば双方が理解し合えるはずなのです。

 

このMMTの理解を妨げているのは私にとっては中央銀行つまり日銀の仕組みの理解なのです。日銀と民間銀行の関係や国債の発行と通貨の発行との関係がもう一つわからないのです。

ここをクリアすればもうすこしMMTがわかったぁといえるんですが。頭が悪いことを実感します。

 

私としてはまだまだ勉強不足なので、MMTが社会主義のための理論などではないということを学んで考えて、できればぽつぽつとこのブログに書いていきたいと思います。