国際政治アナリスト伊藤貫氏の国際政治分析(特にウクライナ状勢)は、細谷とか小泉とか篠田とか東野等へなちょこで理想的兵卒(注)でもある国際政治学者が足元にも及ばない哲学的な深みと広さ、分析力等々まっとうな見方を提示してくれて素人でもよくわかり説得力大である。ちょっと「あのー」が多すぎるがご愛敬だ。

 

     講演する国際政治アナリスト伊藤貫氏

 

(注)理想的兵卒については、次のようなブログを書いた。

 

 

以前は年に数回日本に来た時だけかろうじて話を聞くことが出来たが、最近はチャンネル桜での独占番組(「伊藤貫の真剣な雑談」)の他様々なところで講演やインタビュー動画が見れるようになった。とてもいいことだ。

しかし、最近はYoutubeに伊藤氏の動画(対談・講演等)がとても多く掲載されるようになって視聴に追いつかないくらいだ。

動画もいいが、やはり文字でもじっくりと読みたい。しかし、この伊藤貫氏の講演等を文章で読むとなるとなかなか見つからない。「表現者クライテリオン」にいくつか論考(例えば、2022.7月号「三十年間、ロシアを弄んできたアメリカ」など)を書かれているが、これも過去のものは図書館に行かないと読めない。早く著作としてまとめてくれるといいのだが。

そして動画の場合、文字起こしの必要があるがこれが大変だ。

ところが、調べてみると幾つかのブログに文字起こしされたものが記事になっていた。

これは儲けものということで、私のブログにアーカイブとしてまとめておくことにした。

 

一つは短いものとして、ブログ蚊居肢にも伊藤貫氏の文字起こしがあった。

 

 

【アメリカを中心に見る世界情勢③】

大手メディアでは報道されない崩壊するアメリカの現状|伊藤貫2023年7月19日

「……それで今度のウクライナ戦争に関しても、経済学者のジェフリー・サックスやシカゴ大学のミアシャイマーは、「大変な失敗である 反省すべきだ」と言ってるんですけれども、アメリカ人って反省しないんですよ。とにかく自分たちが一番強い、自分たちが一番強いと思っているだけじゃなくて、世界で自分たちが一番偉いんだと。失敗しても強くて偉いと思っている人間は反省しないでしょう。

だけど現実は王毅前外相が言ったように、アメリカはドジばかり踏んでいて、やる必要がない戦争をウクライナで始めて、中東情勢もどんどん悪くなって、台湾にはもう武器を渡せなくなって、今戦争が始まったら、東アジアに持ってくる武器 弾薬 ミサイルが、もうウクライナで使っちゃったから枯渇する状態になって、要するに東アジアで戦争できない状態になっている。

そういう状態に置かれていて、日本の保守マスコミと左翼マスコミと自民党と野党と外務省と防衛省と自衛隊は、アメリカはすごい!正義の味方だ!世界中に民主主義を広げようと。今こそアメリカにもっと協力して、心を一つにしてロシアを叩きのめして、ロシアを叩きのめしたあとは中国を叩きのめしてもらおうとか、そういう小学生みたいなことを言っている、日本の保守は。それが日本の窮状であります。」

 

「伊藤貫の真剣な雑談」第6回

「ウクライナ危機の深層~危険なネオコンの思い上がりと戦後保守の愛国ゴッコ」[2022/5/14]

「正直に言いますと、毎日起きてテレビを見たり新聞を読んだりするのが大変不愉快であります。この戦争はまったく不必要な戦争なんですよ。で、不必要な戦争を始めて、それを長引かせようとしていると思う。それで、最終目的は単にプーチンを失脚させることだけではなくて、最終的にこれを推し進めると、ロシア文明自体を破壊することを狙っていると。

で、どこかの国が世界最強のスーパーパワーだからといって、1000年以上のしかも優れた文明をもつ国を根本から壊そうとしている。これはものすごくグロテスクな行為ですよね。しかもそのようなグロテスクな戦争がまったく不必要であると。

しかも世界中のマスコミが、日本だけじゃなくてアメリカだけじゃなくて、世界中の少なくとも西側諸国のマスコミが、アメリカが描いたシナリオの通りに進められている戦争に拍手喝采して、いかにもなにか自分たちが正義の戦争をやっていると思い込んでいる。

僕は毎日これを見せつけられるんですね。これはね、たいへん不愉快な話なんですね。で、人類とはこのくらい馬鹿であったかと。

要するにこういうことを仕組むアメリカのやり方にたいして腹が立つだけじゃなくて、それをたっぷり全部呑み込んで鵜呑みして、黄色い声をあげて、アメリカ頑張れ、ロシアは酷いと叫んでいる人類のすべてのマスメディアですよね、それからごく少数を除いたほとんどの政治家に対して、僕はこれはもう人類の判断力というのはこの程度のものかと。

こういう、はっきり言って僕に言わせれば非常に邪悪な戦争が、誰かによって企画されて、ロシアをその戦争に参加せざるを得ない立場に追い込んでいって、このままでいけばロシア国家だけでなくてロシア文明自体も破壊されるかもしれない。もちろん何万人何十万人のロシア人ウクライナ人が死ぬわけですよ。

それにもかかわらず人類のほとんどが気がついていないと、なにが起きているかということを。これはもうほんとうに不愉快なんですよね。」(引用終わり)

 

もう一つはブログ「きらめきの未来に向かって」の記事の「伊藤貫の真剣な雑談」の文字起こしだ。

引用についてブログ主に快く許可をいただいた。ありがとうございます。

 

途中までだけど文として読むのと聞くのとは印象が違う。やはり両方あると理解が進む。

 

これをきっかけとして、「伊藤貫の真剣な雑談」の動画をここにできるだけ張り付けておいた。

今後も見つけたら張り付けてアーカイブとしたい。

また、シカゴ大ミアシャイマー教授の動画も字幕付きで幾つか公開されている。これも今後アーカイブとして記事にしておきたい。

 

「伊藤貫の真剣な雑談」第5回米露関係破綻の原因は何か?

表面的には、ロシアとウクライナが戦争始めて、ロシアがウクライナをいじめているから悪いと、そういうのが一般的なあのアメリカでもヨーロッパでも日本でもそういう解釈になっていますけれども、僕の解釈はあの過去30年間のアメリカのロシアをグイグイ追い詰めていく政策がついにここまで来たと、これは僕だけの意見じゃなくて後に紹介しますけれども、非常に優秀なアメリカ人5、6人がみんな政府で重要な立場にいた人とか有名な学者なんですけれどもそういう人たちは、「来るべきものが来た」と、、。で、彼らに言わせればこういうふうにあのウクライナ問題を種として、アメリカとロシアが衝突するのは少なくとも十数年前から目に見えていたと、、。

簡単に言うとアメリカが、最近30年間ロシアをどんどんどんどん締め付けてきたんですね。毎年毎年グイグイと で、ついにロシアも「これ以上アメリカに押しまくられて不利な立場に追い込まれるのはたまらないからって言うんで、不利であるのは承知でファイトバック(反撃)したわけです。

だからあの今回たまたまそんなウクライナがアメリカの対ロ政策ロシア封じ込めてロシアを叩き壊す政策の道具として利用されただけでウクライナ人の多くはアメリカがウクライナの味方をしてくれてるんだというふうに思っているかもしれませんけれども、今から今日の講演で紹介するアメリカの一番優秀な人たちは、ウクライナ人は結局 アメリカに利用されているだけであるとそういうふうに考えています。

で、そのことを今日は説明します。

最初にアメリカとロシアの関係が最近30年間どういう理由で悪くなってきたかということを具体的に説明して、で、それの説明が終わった後ジョージケナン第二次大戦後にロシア封じ込め政策を作ったジョージケナンですね。有名なロシア専門家です。それからキッシンジャー。

それからハンティントンとそれから 1987年から1991年までアメリカ政府の駐モスクワス大使、駐露大使を務めたジャックマットロックこの彼ももちろんロシア専門家ですその後あの結論としてあのシカゴ大学のミヤシャイマーの意見を紹介して、あのこの5人の意見からすると、今回のロシアとウクライナの戦争はアメリカが着々と仕組んだ政策であると、、。

で、ウクライナはそれに利用されてまぁ今犠牲者になったわけですね。

クリントン政権がロシアに対して何をやったかっていうと、クリントン政権はロシアにダメージを与えるために3つの政策を実行したんです。

アメリカに都合のいいようにもしくはアメリカとそれからロシアがイスラエル系の金融業者に都合のいいように国有財産を民営化させたと。これはもちろん大失敗だったわけですけれども、これによってロシアのGDPは数年間で45%も低下して、それで国民の4割は極貧状態。

厳しい窮乏状態に追い詰められて、で国民の平均年齢が一挙に10歳以上縮まったと、、。ロシアにとってはもう大惨事だったんですね。

それから2番目に何やったかというとこれも皆さんもご存じだと思いますけれども、 あのクリントン政権の前のブッシュのお父さんの政権ですね、国務長官とか安全保障補佐官とか、それから米軍を代表してNATOの最高指揮官をやっていたアメリカの軍人ですね。

なんかとにかく十数回にわたってあのNATO東側に拡大しないと、ブッシュのお父さんの政権は約束したんですけれども、クリントン政権はあっさりその前の政権の約束をチャラにして、NATOの東方への拡大を始めたと、、。

それから3つ目がユーゴスラビアのセルビアとコソボなんかに国際法違反、少なくてもあの国連決議の承諾を得ていない一方的な軍事介入をして、過去少なくても200年間をロシアのかなり強固な同盟国であったセルビアを叩きのめして、それで結局ロシアがあのバルカン半島に影響力を行使できないようにするという軍事介入を行ったわけですね。

最初からクリントン政権はこういうふうにロシアにあのダメージを与えるつもりで政策を始めて、、。で、それが次のブッシュ政権オバマ政権になるともっともっと悪くなっていったということがあるわけです。

 で、クリントン政権のロシア経済の改革についてちょっと説明しますと、 あのエリツイン時代のあのアメリカがやらせた国有財産の民営化というのはいわゆるロシア経済の自由化っていうのはあの最初から一握りのアメリカとロシアの金融業者で、それに参加したロシアの金融業者とかビジネスマンはほとんどはイスラエル国籍を持つ二重国籍者なんですけれども、そういう人たちとアメリカのウォールストリートの金融業者とそれからハーバードのイスラエルと強いつながりを持つ経済学者が参加して、それでロシアの経済改革を進めた訳です。

で、結果はもちろん皆さんご存知のようにごく一部の人たちだけが巨万の富を得てオルガルヒと呼ばれる人たちになって、この人たちがエリツイン政権を実質的に支配していたと、圧倒的多数のロシア国民は、貧乏になるばかりだったと、このことについてブレジンスキーですね。

ジミーカーターの安全保障補佐官なって、ブレジンスキーが2007年にセカンドチャンス(2番目のチャンス)という本を書いて、どういうふうに描写してるかっていうと、クリントン政権時代、大量のアメリカの金融業者やコンサルタントがロシアの自称改革派 、本当の改革派じゃなくて、改革派と自称する人たちとグルになって急速な国有財産の民営化を進めたと、これによってごく少数の者が巨万の富を得たと。でこれは明らかに腐敗した行為であって、でアメリカ政府がロシア人に約束したロシアに新しいデモクラシーをつくるという約束は単なる悪趣味なジョークに過ぎないことがわかったとブレジンスキーは書いてます。

(中略)

偶然かどうかは別として ロシアで巨額の富を得た人たちも少なくても8割はユダ人であって、イスラエルのパスポートを持つユダヤ人であって彼らは儲けたお金をイスラエルに流し込んでいたと、。これは事実なんですね。

で僕は別にここで陰謀とは言いませんけれども、偶然かどうかあの腐敗した犯罪的な民営化政策にアメリカ側で参加してた人、ロシア側で参加してた人、まあユダヤ人だったわけです。

 (中略)

オバマ政権の2014年から アメリカは自分たちの米軍の兵隊をウクライナに送り込んでウクライナに対する軍事援助をどんどん増やして米軍のあの数百人もしかしたら1000人以上かもしれないけれども、とにかく米軍の兵隊がウクライナ人を訓練して、で、新しい最新鋭の武器を与えてロシアを攻撃させる訓練をしていたそうなんですね。

だから形式的にウクライナは軍事同盟国ではないけれども、実質的にはウクライナをアメリカの軍事同盟国化する政策を進めていたと、で、しかもあの2021年からは、ロシア系の人が住んでいるドンバスっていう地方があるんですけれども、ドンバスでロシア側に付いたウクライナ人とそれからそのそれに協力しているロシア兵をウクライナ兵がアメリカからもらった新兵器とドローンを使って彼らがこのロシア系の住民とロシア兵を殺害し始めたそうなんですね。

このドローンというのはもちろんアメリカ製のドローンでアメリカの中心衛星からシグナル、ターゲット情報をもらわないと使えないわけですよね。

そういう最新鋭のロシア兵を殺せるドローンをドンバスでウクライナ兵が使いだしたと、そして結局どういうことかというと、アメリカ軍の下請けとして仕事をしているウクライナ人がロシア兵を殺害し始めたと、、。結局は要するにアメリカの手下がロシア兵をどんどん殺し始めたわけで、そうすると実質的にはこれ、ロシアとアメリカが戦争を始めたという状態に近くなってくるでしょう?

それをアメリカは去年から始めたわけですね。

で、まあ、ビクトリアヌーランドとかそれからブリンケンとかああいう連中はそれやっても構わないと思ってたわけですね。

だけどロシアとしては、このまま放っておいたらウクライナがどんどんアメリカの実質的な軍事同盟国となって、アメリカ兵がどんどんますます入って来て、ウクライナ兵をどんどんどんどん訓練して、アメリカ製の最新鋭の武器をどんどんどんどん与えて、それで将来的にはロシア軍に対して強烈なダメージを与えるウクライナ軍が出来上がると、。要するに「座して死を待つ」よりは、ではないけれども、とにかくこのままアメリカにウクライナの実質同盟国家をやらせておけばロシアの安全保障政策は成り立たなくなると、それでもうロシアとしてはここまで追い詰められたら、ウクライナと戦争するしかないと、、。

ドンバス地域、あのウクライナの南側ですね、沿岸地帯 アゾフ海の沿岸地帯を占領するしかないという理由で攻め込んだわけですね。…」

ブログ「きらめきの未来に向かって」より。

 

 

討論 ウクライナが示す世界の行方(伊藤貫氏参加)

 

   第4回藤貫の真剣な雑談

 

   第5回伊藤貫の真剣な雑談

 

   第6回藤貫の真剣な雑談

 

   第7回伊藤貫の真剣な雑談

 

   第8回伊藤貫の真剣な雑談

 

   第9回伊藤貫の真剣な雑談

 

   第10回伊藤貫の真剣な雑談

 

   第11回伊藤貫の真剣な雑談

 

   第14回伊藤貫の真剣な雑談

 

   第15回伊藤貫の真剣な雑談
 

続く。

 

<余計なひと言>

張り付けた動画は、チャンネル桜の水島社長との対談ばかりだが、いつも思うのだけれど、水島社長は進行が下手だ。

伊藤貫氏の話の相槌がとても下手。

話の腰を折る。自分も言いたがる。ゲストから話を引き出さないといけないのに。

そして、伊藤氏の新しい発見や情報に、無頓着に「そうですね」と言ってしまう。こりゃだめだ。

新しいエピソード披露には、驚きをもって相槌を打たないといけない。

「そうですね」なんて言われると伊藤氏も拍子抜けしてしまう。驚いてほしいのに。

「そうなんですか、そういうことがあったんですか」と知っていても驚かないといけない。知らないくせに知った風な相槌は一番いけない。水島社長の勘違い!

会社でもそうだろう。上司に新しい情報を持って行ったら「そんなこと知ってるよ」なんて言われたら、部下はもう次は情報をもって行かないだろう。

知っていても知らないふりをすることが大人の対応なのに、水島社長はそれができない。だから話がスムーズに流れないときがある。

まあ伊藤氏は大人だから、話の腰を折られても構わず修正しているから偉い。

何とか学んでほしいよね、水島社長!