新「なるほどメモ」その4(身もふたもないコラーゲンの真実)

「 コラーゲンは、細胞と細胞の間隙を満たすクッションの役割を果たす重要なタンパク質である。肌の張りはコラーゲンが支えていると言ってもよい。

ならば、コラーゲンを食べ物として外部からたくさん摂取すれば、衰えがちな肌の張りを取り戻すことができるだろうか。答えは端的に否である。

(福岡伸一「動的平衡―生命はなぜそこに宿るのか」(小学館新書)より)

 

食べ物も薬もその効能書きだけで結構騙される。必要に迫られているときもあるが、多くはその効能の説明がなるほどねぇって思わせるからだ。

コラーゲンなんて全く関心が無いが、美を求める女性には大きな関心事なのかもしれない。

だから以下の福岡先生の解説は読まない方がいいかも知れない。でも書いちゃいます!

 

「「体調や肌の調子が悪いのは何かが不足しているからだ。だからそれを補給しなければならない」-私たちはしばしばこのような欠乏の強迫観念にとらわれがちである。

最近、よく宣伝されているものにコラーゲンがある。コラーゲンを添加された食品の中には、ご丁寧にも「吸収しやすいように」わざわざ小さく細切れにされた「低分子化」コラーゲンというものまである。

 コラーゲンは、細胞と細胞の間隙を満たすクッションの役割を果たす重要なタンパク質である。肌の張りはコラーゲンが支えていると言ってもよい。

ならば、コラーゲンを食べ物として外部からたくさん摂取すれば、衰えがちな肌の張りを取り戻すことができるだろうか。答えは端的に否である。

食品として摂取されたコラーゲンは消化管内で消化酵素の働きにより、ばらばらのアミノ酸に消化され吸収される。コラーゲンはあまり効率のよくないたんぱく質である。消化できなかった部分は排泄されてしまう。

一方、吸収されたアミノ酸は血液に乗って全身に散らばっていく。そこで新しいタンパク質の合成材料になる。しかし、コラーゲン由来のアミノ酸は、必ずしも体内のコラーゲンの原料とはならない。むしろ、ほとんどコラーゲンにはならないといってよい。

なぜなら、コラーゲンを構成するアミノ酸はグリシン、プロリン、アラニンといった、どこにでもあるありきたりなアミノ酸であり、あらゆる食品タンパク質から補給される。また、他のアミノ酸を作り替えることによって体内でも合成できる。つまり非・必須アミノ酸である。

もし、皮膚がコラーゲンを作り出したいときは、皮膚の細胞が血液中のアミノ酸を取り込んで必要量を合成するだけ。コラーゲン、あるいはそれを低分子化したものをいくら摂っても、それは体内のコラーゲンを補給することにはなりえないのである。

食べ物として摂取したタンパク質が、身体のどこかに届けられ、そこで不足するタンパク質を補う、という考え方はあまりに素人的な生命観である。

これと同じ構造の「健康幻想」は、実は至るところにある。タンパク質に限らず、食べ物が保持していた情報は、消化管内でいったん完膚なきまでに解体されてしまう。

関節が痛いからといって、軟骨の構成材であるコンドロイチン硫酸やヒアルロン酸を摂っても、口から入ったものがそのままダイレクトに身体の一部に取って代わることはありえない。

ついでに言うと、巷間には「コラーゲン配合」の化粧品まで氾濫しているが、コラーゲンが皮膚から吸収されることはありえない。分子生物学者の私としては「コラーゲン配合」と言われても「だから、どうしたの?」としか応えようがない。

 もし、コラーゲン配合の化粧品で肌がツルツルになるなら、それはコラーゲンの働きによるものでなく、単に肌のしわをヒアルロン酸や尿素、グリセリンなどの保湿剤(ヌルヌル成分)で埋めたということである。

 私たちがこのような健康幻想に取り憑(つ)かれる原因は何だろうか。そこには「身体の調子が悪いのは何か重要な栄養素が不足しているせいだ」という、不足・欠乏に対する脅迫観念があるように思える。

(福岡伸一「動的平衡―生命はなぜそこに宿るのか」(小学館新書)より)

 

男だから美肌や肌の調子には興味がないから、(といっても老人性の肌のたるみには少し気になっているけど)コラーゲンといっても全く関心がない。最近テレビでコラーゲンたっぷりのラーメンというのをやっていたが、バカじゃないのか、単なるどぎつい脂肪にしかみえない、原料は何だろう、こんなものが売りになるのか、といぶかしく思っただけである。

福岡伸一氏のコラーゲンの解説は、常識では納得していたものを生物学で分かりやすく解説してくれたのでした。

となると、次のような商品の説明(ネットにあったもの)はどうなるのでしょう。

 

「わたしたちの体を形成しているタンパク質のうち、30%はコラーゲンと言われています。その中でも、皮膚はなんと70%がコラーゲンでできているのだそう!
しかし、そのコラーゲンは40代をピークに体内から減少してしまいます。年齢を重ねるにつれて、「あれ...?」と思うことがあったら、体内のコラーゲンが不足しているのかもしれません。

そのため、40代からは外側からだけでなく内側から継続的にコラーゲンを補っていくケアが重要になってきます。
「美 チョ○ラ」は​吸収率の高いコラーゲンを配合!​1日​約3粒を好きなタイミングで飲むだけでOKだから、忙しい女性にも続けやすいんです!

コラーゲンはわたしたちの体をつくり、維持するための重要な成分。毎日の健康と美容には欠かせないものです。
しかし、どんなに量を摂っても体内に吸収されなくては意味がありません。
○○ザイは、吸収率の高いコラーゲンに着目しました。

フィッシュコラーゲンを低分子化!さらに吸収率アップ

コラーゲンは通常、分子が大きく吸収されにくい成分のため、そのまま摂取してもあまり意味がないのだとか。体に浸透させるためには、分子を小さくする必要があります。
「美 チョ○ラ」では、フィッシュコラーゲンの吸収率をより高めるために、こだわりの技術で低分子化して配合。効率よくコラーゲンを摂取できます!」

(引用終り)

 

この会社、大手ですから、当然商品の研究所があって、大学院を出たような生物学研究員が日夜お肌のための製品作りにコラーゲンの研究をしているのだと思うのですが、福岡伸一先生の解説を読んだらどんな感想を持つんでしょうかねえ。生活のためには「真実」など関係ない、と割り切っているのでしょうか。それとも悩みながら研究を続けているんでしょうか。いや、福岡先生の解説なんて聞いたことないってかな。

 

よく消費者庁が記者会見をして、いかがわしい商品、誇大広告、騙しの商品を名指しして「措置命令」なるものを出したと報道されます。

しかし、その記者会見もたまに、です。テレビの通販、ネットの通販 チラシなど訳の分からない騙し商品はごまんとあるのに。余りに摘発数が少ないように思えます。一罰百戒と考えているんでしょうか。

 

例えば、結構有名な企業でも、「「空間除菌」クレベリン置き型も“根拠なし”消費者庁措置命令」として、大幸薬品がやり玉に挙げられていたし、「首にかけるパーソナル空気清浄機は、本商品から発生するマイナスイオンの作用により、顔周辺のウイルス、PM2.5、花粉等浮遊物質を除去する効果が得られるかのように示す表示をしているが、そんな効果はなかったとして措置命令を出したようです。

 

となると、福岡伸一氏の解説からすれば、健康に関する製品の多くは「根拠なし」ばかりで、消費者庁措置命令に大量の該当商品が出てきてもよさそうだが、何も指摘しないのは何故なんだろう。固いこというな、ということなんでしょうか。

 

毒性さえなければ少しは詐欺まがいであってもよいというのでしょうか。あるいは消費者庁のアリバイ作り?

最近のBSのコマーシャルはこんなものばっかりです。いつまでもそんなコマーシャルを続けていられるのは買う人が多いということですが、私には全く関係ないことですが、何とも釈然としないことではありますね。