◆ソフトバンクFA山川穂高選手の人的補償でゴタゴタがあった
管理人が朝、スマホを二度見する事があった。
福岡ソフトバンクホークスにFA移籍した山川穂高選手の人的補償に、埼玉西武ライオンズは和田毅投手(42)を指名する、との某スポーツ新聞の速報記事だった。
和田毅投手と言えば、阪神大竹耕太郎の師匠であり、ソフトバンクでは「レジェンド」と呼ばれている大投手である。
42歳である昨季も先発で8勝するなど、まだまだ十分現役の投手であり、小久保新監督も当然先発ローテの一人として数えていた。
その和田を人的補償のプロテクト28名のリストから外していたなんて…。
しかしなぜかしら、西武から発表された人的補償の選手は、和田ではなく、甲斐野央投手という事だった。
まさに不可解。
「スポーツ紙の大誤報説」から、和田は元からプロテクトを外れていて西武が指名を打診したところ、「ソフトバンクが余りの反応にあわてて別の選手に変更してもらうよう懇願した説」「和田自身が『移籍するくらいなら引退します』と言ったので選手を変更してもらった説」など、いろいろな説が飛び交っている。
結局、「和田が人的補償に指名された」と発表したのは某スポーツ紙と、それに追随した一部のマスコミだけだったので、西武からもソフトバンクからも真相は語られない。
ただ、「山川穂高選手の人的補償は、甲斐野央投手である」という事実の発表のみである。
そもそも「FA移籍における人的補償」の是非について、管理員は今のところ触れない。
この「人的補償」がなければ、金満球団はチームの戦力を落とす事なく、いくらでもお金を積んで他球団の選手を強奪できる。
一部の金満球団の戦力集中を避ける手立てが、直接的に選手を放出するのがいいのか、あるいは次年度のドラフト1位指名権放棄などの補強面でのバランス調整がいいのか、いろいろ意見はあるだろうが、これは関係者同士で話し合うべき、として。
つくづく思ったのはチームの年長者でありレジェンドと呼ばれるくらいの実績を築いてきた「功労者」をずっとプロテクトし続けるべきかどうか、という事だ。
◆迷うべき「指導者含みの実績のある功労者か」「伸びしろがある優良な若手か」
プロテクト枠は28しかなく、28名の枠に入らない選手は等しく取られる可能性がある。
もし、一つのプロテクト枠で、将来指導になるかも知れない「実績のある功労者」か、あるいは、これから伸びしろのある「優良な若手」のいずれか一人を選ばないといけない場合、チームのフロントは悩みどころだろう。
当然これからいくらでも実績を上げられる若手を優先したい気もあるが、その「功労者」は彼を慕う若手がいて、また指導者になれば将来にわたってチームの成績を上げてくれる期待もある。
和田は昨季8勝の勝ち星をあげた投手であるから即戦力であるけれども、この成績をあと数年あげられますか、というとそれは結構難しい話だと思う。
もし和田がプロテクトから外れている事が事実だとするのなら、ソフトバンクファンには申し訳ないが、和田より若手を優先させるフロントの気持ちも分からなくもない。
そもそも「ベテランはとらないだろう」という考えもあるだろうし。
実際に巨人は西武・炭谷のFA移籍の人的補償に内海をとられ、広島・丸のFA移籍の人的補償に長野をとられた。
いずれもチームのベテランであり実績のある「功労者」で若手からの人望も厚かったが、プロテクト漏れだった。
フロントからすれば、そのプロテクト漏れのベテランを狙われた事は想定外だっただろう。
ただ、巨人はそのままチームの功労者を送り出した。
一方、ソフトバンクは(あくまで和田がプロテクト漏れだったという事は置いておき)功労者を結果的に守った。
その代わりと言ってはなんだが、リリーフとして今後活躍を期待される甲斐野をとられた。
故障から復帰し速球が復活してきた27歳の甲斐野は、当然今季もリリーフの柱の一人として数えられていたはずで、その甲斐野をプロテクトから外していた事は考えにくいのだが、真相は霧の中だ。
和田も甲斐野も、ファンにとってみれば両方ともプロテクトして欲しい選手であるだろうから、今回の結果として、本人同士もファンもみんなモヤモヤしたに違いない。
広島・西川龍馬の人的補償で、オリックス2年目の投手・日高暖己がとられた事象とはエライ違いだ。
◆果たして功労者はいつまでもチームにいてもらうべきか
近年の阪神で言うと、福留、鳥谷といった「功労者」を「戦力外通告」し、物議をかもした。
チーム的には、「功労者」とは言え、来季の戦力として期待できない、という判断はシビアであるが、より現実的な考えだと思った。
もちろん、まだ先発で8勝できる和田を単なる「功労者」扱いするのはちょっと違和感があるが、チームに長年貢献してきた大ベテランを、いつまでそこそこ高給のままチームにいてもらうべきか、頭の痛い話だ。
そもそも大ベテランとなれば、後輩への影響力も大だし、場合によればフロントにだって盾突く事もできる。
もしウワサ通り、和田が自分が人的補償に指名された事に対し、「引退する」と言ってゴネたのだとしたら、その代わりに伸び盛りの甲斐野が出ざるを得なかった事に対し、「功労者」ゆえの「わがまま」と受け取られかねない。
そしてそういう和田の「わがまま」を許したホークスのフロントは、もう二度と和田に何も言えないだろう。
しかし、ここまで報道された和田の立場も微妙だ。
もし和田が今季8勝以下に調子を落とし、甲斐野が西武で大車輪の活躍をしたものなら、和田へのバッシングはかなり大きくなるに違いない。
そういう意味では、報道が出た以上、和田にはどうしてでも西武に行ってもらうべきだった。甲斐野が出た事のマイナスに比べれば、和田のマイナスは小さい。
というか、いつまでも40代の投手に期待しているチームがヤバイよ。
結局、内海も長野も巨人に帰ってきた。
ケチケチせず、「功労者」を他球団に送り出した巨人はソフトバンクよりも上手。
ソフトバンクの編成は、ドラフト戦略もFA戦略もすべてポンコツ、って事が分かりましたな。
お金はあるのにね。