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“Life with Sports Brand” DLIVE
フットボールライター itch のブログ

Football goes on 特別編 ~itch ブラジルへ行く~ vol.19


フットピーポーよ!2週連続で行ってきましたリオダービーinマラカナ!前回はフルミネンセ×ヴァスコのリオダービーの模様をレポートしましたが、今回はリオのビッグ4の残りの2チーム、フラメンゴ×ボタフォゴです!


まずはブラジル恒例のいい大人が半日かけてのチケット入手です。こは何もヒマな旅人の僕だけじゃなく、現地のいい歳したおっさんとかも仕事を抜け出して買いに行くもの。


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今週はミッドウィークにベロオリゾンテでリベルタドーレス決勝を観戦しに行ったので、リオに戻った金曜日に、フラメンゴのゴール裏チケを求めて、クラブオフィスに向かいました。


フルミネンセ戦の時のような混雑もなく、すんなり順番が来たのですが、「チケット1枚!メンゴー!」とオーダーすると、「160レアルだぜ!メンゴー!」と返してくるではありませんか!


この日のゴール裏の価格は100レアルのはず、事情を聞くとどうやらゴール裏席はとっくに売り切れて、フラメンゴサイドの席はバックスタンドかメインスタンドしかなく、その中で一番安いのが160レアルだと。


旅の終盤で、100レアルでさえキツいのに、160レアル。「100レアルの席は無いのか、メンゴー!」と頼むと、「ボタフォゴのゴール裏ならあるぜ、メンゴー!」と教えてくれました。仕方が無いのでこの1戦はボタフォゴサイドで観る事に。


係の兄ちゃんはノリのいいナイスガイで「ジャポネス、試合にはそのシャツを絶対に脱いで行けよ」と、僕の着ていたフラメンゴのユニを指差した後、列のみんなに「おい、このジャポネス、ここでボタフォゴのチケット買ったぞ!」とチクりやがったんで、盛大なブーイングを浴びました(笑)


宿に戻ると誰かから噂が広がったらしく、オランダからやってきた身長198cmぐらいの、フランク・デ・ブールのような旅行者から、チケットをどう取ったか質問攻め。どうやら彼らも仲間とマラカナで試合が観たいらしく、翌日にチケットを取りに行くとの事。


フラメンゴゴール裏のチケットがもう無い事と、ボタフォゴのチケットを買うなら、宿から近いボタフォゴオフィスの方に行く方がいいと、アドバイスしました。


彼、ライドンとはこれがきっかけに仲良くなり、かたことの英語でサッカーの事を語り合いました。もともとオランダサッカーには尊敬の念があるので、あなた達のアタッキングサッカーは素晴らしい、と伝えると。「でもそろそろ勝ってほしいよね」と。ロッベンとファン・ペルシが大好きだ、と伝えると。「彼らは代表だとサッパリなんだよ」と。俺は今のバイエルンのベースを作ったのはファン・ハールだと思うよ、と伝えると。「でしょ!彼は素晴らしいマネージャーだからね!」とご満悦。


ただし、彼は苦虫を噛み潰すような表情で、「ネクストイヤー、チャンピオン、メイビー、ジャーマン」と嘆きました。オランダ人にとってドイツ人は本当にイヤなやつらしくて、それでも悔しいけど今のドイツの強さは本物だと。オランダは2006年に勝たなければいけなかった、来年はノーチャンスだ、と。


「日本はどうだ?」と聞いてきたので「ダメだね、監督が悪いよ」と答えて「ヒディンクを日本にくれ!」と言ったら笑って、「ヒーイズ、ベリー、エクスペンシブ」と言ってました(笑)


話がめっちゃ脱線しましたが、この試合があった週は、実はパパこと新ローマ法皇がリオはコパカバーナ、もう目の前の海岸にできたイベント会場にお目見えするという事で、街は世界各国から集まった若者(報道では300万人!)達でごったがえし交通網が大混乱!


その影響でメトロの運航が一部変更になり、先週に向かった経路で乗り換えを行おうとすると、その乗り換え入り口が封鎖されていました。


しかし、ここで幸運な出会いが。その封鎖に人一倍怒っていた、歳の頃同じぐらいのブラジル人が、戸惑う自分に「マラカナ?」と話しかけてくれて、なんなら一緒にマラカナに行くか?と誘ってきてくれました。


彼の名はジョアン。その身なりから生粋のフォゴー、ボタフォゴファンです。彼のユニを指差し「ボタフォゴー!」と挨拶すると、3倍ぐらいのでかい声で「フォ~ゴォ~!」と叫び返してガッハッハ。


ジョアンはかなりインテリジェンスがある人間で、英語ができ、話が面白く、しかも優しく、気分のいいナイスガイ。お前は今日の席はどっちだと聞いてくるので、フラメンゴのチケットが買えなかった事は黙っておいて、「ブロコ、ボタフォゴ!スーペリオル(ゴール裏)!」と答えると、「一緒のエリアだ!よーし、今日は俺がボタフォゴの応援の仕方を教えてやる!」的な事言い、なんと一緒に試合を観る事に!


ジョアンは道すがら、ボタフォゴの事やリオの4つのクラブの事を教えてくれました。


「まず、フラメンゴ。あいつらはブラジルで一番ファンが多い。当然リオでも最大。だけどファンが多い分、変な奴も多いんだ。貧しくて教育を受けていない奴がファンにいっぱいいるから、あいつらは暴力的で俺は嫌いだ。あとファンのチームワークないね。バラバラ」


「次はリオではフルミネンセって事になっている。あいつらは金持ちが応援するチームだ。昔は白人しかチームに入れないことにしてて、それで勝てなくなったから、黒人にファンデーションを塗って、プレイさせた事がある恥ずかしい奴らだ。だから俺らは「おしろい野郎」「オカマ野郎」と言って馬鹿にする。ファンも上から目線のヤなやつばっかで、俺は嫌いだね」


「そして残念ながら次がヴァスコ・ダ・ガマだ。あいつらはポルトガル系のチームだよ。あいつらも白人主義なところがあって、ファンも白人が多い。でもヴァスコファンは常識のある奴が多くて無害。好きでも嫌いでもないね」


「そして最後にボタフォゴだ。ボタフォゴは…この3つに当てはまらなかった変な奴がファンだ(笑)。ファンの数は一番少ない。でも俺たちは数が少ない分、結束力は強いんだ。応援だって負けていない。1人1人の応援なら、4つのうちで一番熱いのはボタフォゴだね」


なんとなく会った時から気が合うジョアンがボタフォゴファンなのはうなずけた。この話を聞いて、かなりボタフォゴに気持ちが傾きました。たぶん自分もブラジルで生まれ育っていたら、「3つに当てはまらない変な奴」になっていた気がする。ジョアンはこの面白い話をこう結びました。


「ボタフォゴってのはな、英語で言うと、プット、ファイアって意味なんだぜ。偶然だけどな!」


「火をつけろ」という意味だと誇らしげに語る、ジョアン。その意味はスタジアムに着くと分かりました。


ボタフォゴゴール裏のゲート、ゲートCは黒字に白の星のエンブレムを胸に持つ物でごった返していました。誰かがあるチャントを歌うとほっとかない、すかさず乗っかるんです。ゲート前の列で、折り返してすれ違う時には全員がハイタッチ。アットホームでありながら、超元気、一発で雰囲気を気に入りました。


ジョアンと友人と自分の3人組で無事にスタジアムに入り。ジョアンのジャイアン的な強引さで、エリアほぼ最前列、ゴール裏ど真ん中の席を確保!いよいよ試合が始まります。


数で言えば3:1ぐらいでフラメンゴの方が圧倒的に多い。だけど応援の声量は互角。誰もが精一杯の声で選手達のハートに「火をつけて」いたフォゴー。かっこいいじゃんフォゴー!


「Botafogo sapoters befor the game」




その声援に後押しされて前半はボタフォゴが圧倒します。現在のボタフォゴと言えば、10番をつけるヨーロッパからやってきた男セードルフが目立つけど、セードルフはスパイス程度で、メインディッシュはサイドにあります。


右にウルグアイ代表のロデイロ、左に初めて知ったヴィチーニョというブラジルの若手。この両サイドがボタフォゴのストロングポイント。特にこの31番をつけるヴィチーニョの名前は覚えておいた方がいいかも。ロデイロに比べると安定感はないけど、この試合で3人抜きの凄まじいカットインを見せてました。


フラメンゴはこの両サイドがどうにも抑えられず、前半の主導権を完全にボタフォゴに明け渡してしまいます。ホームなのに、試合内容がよろしく無く、静まるフラメンゴゴール裏。対照的にガンガンユニフォームを回しながら応援する、ボタフォゴ。


「Botafogo sapoters on the game」





そして前半22分コーナーキック。キッカーはセードルフ。なんの変哲もないボールだったけど、ボタフォゴのエース、ラファエルが豪快にヘッドをフラメンゴゴールにぶち込む!今度はスタンドの方がプット、ファイヤー!ジョアンと友人とがっちり肩を組んで円陣のような感じでグルグル回ってゴールを祝いました。ジョアンが実にいい顔をしていたなあ。


しかしボタフォゴが良かったのは前半まで。後半頭からフラメンゴは2人の選手を一気に使い。交代で入った17番のトップ下が試合のペースを引き寄せます。隣のジョアンが「前半と違うチームだ」と嘆くほど、後半のボタフォゴはさっぱり。ジョアン曰く、ボタフォゴは水曜に試合を行っており、フラメンゴは1週間たっぷり休養している、と。後半、ボタフォゴは足が止まってしまいます。


途中2度、ボタフォゴのゴールネットが揺れましたが判定はオフサイド。この判定にやっとフラメンゴゴール裏にも火がつきました。ここで苦しいチームを救うべく、ありったけの声援をフォゴーが絶唱。フラメンゴのチャントを掻き消そうと必死です。


そんな時でしたマラカナが粋な演出をします。オーロラビジョンに他会場の結果が出たのですが、それが現在首位を行くクリチバの結果。なんと現在クリチバが0-1で負けている!もしこのままのスコアで終えれば選手権の首位はボタフォゴのもの!フォゴーもがぜん元気を取り戻します。


その甲斐あってか、どうにかロスタイムまで1点リードのままたどりついたのですが、無情にもロスタイムは5分!絶対に水増しです(笑)怒るジョアン!そしてその長すぎるロスタイム残り2分、ついに耐え切れずフラメンゴに劇的な同点ゴールを決められてしまいます。


ジョアンは泣き笑いみたいな顔をしていましたね。監督がクソだと、呟きながら。確かに後半そうそうにヴィチーニョ、そして最後はロデイロというボタフォゴの強み2枚に代えてボランチを入れて3センター気味にした監督の交代は、僕も疑問でした。


向う側のフラメンゴゴール裏は目の前で決まった劇的な同点ゴールにお祭り騒ぎです。それまで一体感の無かった応援も、ゴールというわかりやすい現象の下にひとつになり、大迫力の「メンゴー!」のコールをしていました。


フォゴーは後味の悪い勝ち点1に、次々とスタジアムを後にします。個人的にはフラメンゴ試合後の勝利の凱歌を観てみたかったのですが、ジョアンが「帰るぞ!」とさっさと行ってしいまうので、しょうがなくついていきました。


帰り道にジョアンは言っていました。「俺たちは全国選手権で1回しかチャンピオンになった事がない。しかも20年前だ。今年はチャンスなんだよ。いつもフォゴーは馬鹿にされるんだ。3チーム全部から!だから今年は頼むからこのままいって欲しいんだよ」


別れ際にジョアンはかっこいい事を言っていました。まずなんでお前はボタフォゴファンを選んだのだ?と聞いてくるので、チケットが無かったからなんて言えず、どう言おうか迷って思わず、理由は無い、と答えるとジョアンは「そうだよなあ、好きになるのに理由なんてないよなあ、俺もそうだったな」とポツリ。そして「俺、なんでボタフォゴなんて好きになっちゃんだろう」って。


どうだった?ボタフォゴの試合は?と聞いてくるジョアンにこう答えました。俺は今日からフォゴーだ!ジョアンは笑って、チャオ、フォゴーとでかい声で別れの挨拶をして抱きしめてきて、ボタフォゴの駅で降りて行きました。最高に気分のいい奴でした。


「中央がアミーゴのジョアン。ジョアン、出会えて良かったオブリガード!」

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という訳でリオの4チーム全ての観戦を終え、本日をもって僕はボタフォゴファンです。フラメンゴのユニ買っといてこの節操のなさ!日本に帰ってもボタフォゴの結果をチェックする事でしょう。その結果しだいで右往左往する、ジョアンの事を思いながら。


世界中どこにでもあるフットボールと、世界中にいるフットボール馬鹿。フットボールはやっぱり偉大です。そんなフットボール馬鹿と、仲良くなるきっかけを与えてくれます。ヴァモス、ボタフォゴ!20年ぶりのカンピオーネを目指して!プット、ファイアー!


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Football goes on 特別編 ~itch ブラジルへ行く~ vol.18


いまリオにはパパ、新ローマ法皇が来ている。南米初のローマ法皇がブラジルにやってくるという事で、リオにはいま世界各国からパパに会いにきた人でいっぱいだ。


ブラジルはもちろん、パパの母国アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、チリ、ペルー、コロンビア、メキシコなど中南米の人が圧倒的に多い。イタリア、スペイン、フランス、オランダ、ドイツ、イギリス、などヨーロッパ人もちらほら。アジア人は少数派で韓国、インドネシア人を時折見かける程度。各国の人達は自分の国の国旗をマントのように、あるいは棒に指して掲げて練り歩いているので、街には様々な万国旗が揺れている。

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ちなみに日本人はパパに会いに来た、という様子の人は1人も見ていない。日の丸もゼロ。


彼らは頻繁に交流をはかっている。だから街を歩いていると声をかけられる。リオで外出する時は、ほとんどフラメンゴのユニフォームを着て出歩いているので、彼らはまず「あれ?」って感じでこう聞いてくる「どこから来たの?」


「エウ、ソウ、ジャポン」と答えると、ほぼ全員がこう続ける「パパに会いにきたの?」


「ノウン」と答えると、「じゃあなんで?」と聞いてくるから「フッチボウを観に来た」と言うと呆れた顔をする。パパが来ているのにフッチボウ?そう答えるとだいたいの人が微妙な顔をして去っていく。でもそこで粘ってこう聞いてくる人もいる「神を信じているか?」


「シン」と答えた後に、ただし自分の神はこれだと言って、フラメンゴのエンブレムを叩くと、ほとんどの人が本当に呆れて去っていく。でも中には周りの仲間に聞こえない小声で「ミー、トゥー」と言ってウインクしてから去っていく人もいたりする。


パパがコパカバーナの会場へやってきて沿道をパレードする日に、ベロオリゾンテに向かった。


たったひとつのトラップやパスやシュートでゴールという奇跡を見せてくれる、自分にとっての神々の1人は、ベロオリゾンテにあるアトレチコ・ミネイロというチームで10番をつけていらっしゃる。その10番の神と、お気に入りの11番と7番と9番と28番の使徒達が、南米で一番のクラブになるために、3-0で勝つべくパラグアイの悪魔オリンピアと戦う。サッカー教信者の自分が向かうべきはベロオリゾンテなのだ。


仲良くなったベロオリゾンテのアミーゴ、フェルナンドにチケットの手配を頼んでいたけど、2日前に「昨日は45000人、今日は30000人がチケットを買おうとした。どうやってもチケットを手に入れられない。すまん」とメールがあった。


チケットは無い。迷った。だけどその時ブラジルにいて、しかもセミファイナルの奇跡的な突破をスタジアムで目撃したチームが決勝を戦うのに、その場にいないというのはサッカー教にとってはあるまじき背信行為だと思い、とりあえず向かった。


しかし、思ったよりもサッカー教の信者は多いようで、取れるバスのチケットが試合開始ギリギリの到着時刻のものしかない。万が一、というかブラジルでは日常茶飯事の突然の渋滞やデモなんかに巻き込まれて、到着時間が1時間でも遅れたらキックオフに間に合わない。しかし他に選択肢は無いのでそのチケットを抑える。


はたしてそのバスの運転手はやる奴だった。ブラジルでは本当に奇跡的なことに、到着予定時刻10分前に、ベロオリゾンテに着いてみせたのだ。バスから降りるとき、心の底からの「オブリガード!」がナチュラルに口から出た。


フェルナンドが働いているお馴染みのユースホステルに到着する。チケット手配でいろいろがんばってくれたアミーゴのフェルナンドには、今日のベロオ行きをあえて黙っていた。突然「ガーロー!」と現れて驚かそうと思っていたのだ。


ホテル入り口前の路上でわざわざアトレチコ・ミネイロのユニを着て、周到な準備で現れたにもかかわらず、フロントにはフェルナンドの姿は無かった。聞いてみると「フェルナンドは昼間からビールを4本も飲んで、さっき歌いながらスタジアムに行ったよ」との事。相変わらず素晴らしい職場だね、フェルナンド。


話を聞く彼ももちろんガロ、アトレチコミネイロファンだ。このユースホステルは面接時に「あなたはガロですか?」と聞かれるのだろうか。スタジアムの傍で試合をテレビで観られるか聞くと、スタジアム北の入り口前にガソリンスタンドがあって、チケットが無い奴はみんなそこで観ると教えてくれた。


てっきりセミファイナルを行ったインディペンデンシアで試合をやるもんだと思っていたら、この日はより収容人数のある、コンフェデで日本×メキシコも行ったミネイロンスタジアムで試合を行うらしい。ミネイロンはアクセスがあまり良くなく、バスで30分ぐらいかけて行くしかない。フロントの彼は行き慣れた人ならではの完璧な説明で「ミネイロン」への行き方を教えてくれた。素早く支度をして、試合開始1時間前にスタジアムへ向かった。


教えてもらった「ミネイロン」へ向かう2004番のバスは、ベロオリゾンテのセントロから出ているので、宿からセントロまで向かう。この決戦の日のベロオリゾンテのセントロの様子はもう無茶苦茶。ベロオリゾンテにあるありとあらゆる花火が、街の中枢でほぼ1分毎に爆発し、ウロウロしている人間は8割ぐらいがアトレチコ・ミネイロのユニフォームかチームカラーの白と黒で身を固め、街はガロどもに占領されていた。


それ以外に街に人がいない。うろついている以外のミネイロファンはそれぞれがそれぞれの方法でサッカーの前に集まり、街を二分するもうひとつのチーム、クルゼイロファンもライバルチームがボロクソに負けるのを高見で見物すべく、やはりサッカーの前に集まっているんだろう。


フェルナンドが前回に訪れた時に言っていた事を思い出す。「リオやサンパウロと違って、ベロオリゾンテにはフッチボウ、ガロしかないんだよ。後はクルゼイロっていうクソもあるけどな!」


乗り込んだバスには何人かのガロが既にいて、みな表情が硬い。バスは沈黙に包まれていた。これに比べればセミファイナルの時はまだ少し「負けてもしゃーない」みたいな余裕があったのだと気づく。この日は違った。「今日だけは頼む」そんな感じだ。その不安に耐え切れなくなった若者がバスの中でチャント歌いだす。すかさず乗っかる車内。陽気さゼロの切実な手拍子とチャントに包まれてバスは会場の「ミネイロン」に到着した。


ミネイロン前の大通りはチケットを手に入れられなかったガロどもであふれかえっていた。ちょうど夏祭り花火大会の会場そばメイン通りの様子。少なく見積もっても1000人はいたと思う。


もう人ごみだけじゃなく、花火大会のように爆竹がそこかしこで炸裂する。ブラジルの爆竹は日本で売っているような「パンパン」鳴るような可愛いもんじゃない。大きさが中指ぐらいで、炸裂すると「ドカンッ!」と腹に響く轟音を発して、半径5メートル以内で炸裂するとしばらく耳鳴りが止まらなくなる破壊力。だから周りを注意して近くに導火線に火が付いたチリチリした光を発見したら、直ちに耳を塞がなければいけない。


最初はただひたすら恐怖だったけど、これが慣れてくると適度な距離で爆発する轟音に、興奮させられてくるようになる。これぞイメージしていた荒くれた南米のサッカーそのもの。


到着したのは試合開始20分前。日本×メキシコ、ブラジル×ウルグアイとその下見で「ミネイロン」には3度着ているので、迷わず聞いていたガソリンスタンドまで到着した。ちょうどアトレチコ・ミネイロのスタメンが発表されていた。ガソリンスタンドを埋め尽くすガロどもが、試合開始前、届くはずもないチャントを大合唱する。見返りを求めない愛。


「Copa Libertadores FINAL Clube Atlético Mineiro×Olympia Chant」




前半はまるで試合が観えなかった。集まった人数に対してあまりにもテレビの画面は小さすぎた。ほとんどの人がラジオを持参し、イヤホンで聞き入っている。持ってない人に素早く実況で伝え、またその情報を隣に伝えるというヒューマンマイクロフォン状態なんだけど、いかんせん彼らが素早く話すポルトガル語は理解できなかった。かろうじて選手の名前だけ聞こえ、遠巻きに映るモニターと合わせて推察するしかない。


試合はほぼアトレチコミネイロのワンサイドゲームで、対戦相手のオリンピアは11人全員が自陣に引き、超守備的な試合運びを選んでいた。アトレチコ・ミネイロはハーフラインまでは自由にボールを運べるけど、そこからは11人の壁に阻まれ、なかなか有効な攻撃ができない。


相手陣内でショートパスをつなぐスペースが無いので、アトレチコ・ミネイロはロングボールを多用していた。ワントップのジョへ目がけてロングボールが飛ぶ。これまで観た試合でジョは素晴らしいポストプレーで攻撃の起点になっていたけど、オリンピアはジョのポストプレーを「これぞ死にもの狂いのディフェンス」としかいいようのない、選手生命を投げ出すかのような守備で阻む。彼らも南米王者がかかっている試合なのだ。勝つためならなんだってする、そんなディフェンスに胸を打たれた。


時間はオリンピアの味方だ。オリンピアは1点取られても負けない。1分1秒減るごとに、彼らは勝利に近づいていく。もちろん周囲のガロどももそんなことは百も承知なので、時間の経過とともに、チャントを歌う余裕すら無くしていく。みな押し黙ってラジオに耳を傾けていた。早くも両手を顔の前で組み、祈り続ける人もいた。


そして前半が空しく終わる。


テレビに大写しにされたので観る事ができた、ロッカーへと引き上げていくオリンピアのディフェンダーの顔が印象的だった。ハーフタイムに入ったのに彼は一切笑わず、間違いなくゾーンに入っている人間が見せる、極限の集中しきった顔をしていた。人間が持てる生命を今まさに燃やし尽くしている表情は美しい。


ハーフタイム中に騒乱が起きた。どこかの馬鹿者がみんなが密集する足元で例の轟音爆竹を炸裂させたのだ。あのーここ一応ガソリンスタンドなんですけど。


そこからその爆竹に触発された人達で、紅白爆竹合戦が始まる。発煙筒対抗戦も始まる。そしてメロコアのモッシュのような、はたしてこれは応援なんだろうかと疑問に感じるただの馬鹿騒ぎも始まった。


「Copa Libertadores FINAL Clube Atlético Mineiro×Olympia」




この騒ぎに多くの人がトイレとビールという大切な用事を済ませる好機と、それぞれの方向に散っていった。チャンスだ。一気にテレビがしっかり見える前方まで前進し、耳を塞いで後半の開始をそこで待った。


しかし、この作戦には盲点があった。後半開始が近づくにつれ、テレビ前には背中に毒々しいイラストと「TORCIDA ORGANIZADA」と凶悪なフォントで書かれた白いブルゾンを身にまとう荒くれ者達が集結。そう、ガロのウルトラスだ。


テレビが良く見える場所とは、スタジアムで言えばゴール裏真ん前と同じだったのだ。後ろに戻ろうかとと思ったけど、重要な後半はテレビでキチンと観たかったので、気配を消して一緒に観る事にした。


後半が始まる。するとしばらくして突然、まわりのガロどもが弾けた。テレビ中継はリアルタイムより20秒ほど遅れた映像を流している。どうやらラジオではガロのゴールが伝えられたらしい。もみくちゃにされながらテレビを観ると、前半あれだけ素晴らしい働きをしていたオリンピアのディフェンダーが、入ってきたクロスをクリアーしようとしたのだけど空振りしてしまい、目の前に転がってきたボールをジョがボレーで叩き込んでいた。


セミファイナルの時もそうだったけど、ガロのウルトラスの人達は、変なアジア人だろうと関係なく思いっきり抱きしめてくる。同じシャツを着ていたらみんな仲間。老若男女関係なく、空いている人と片っ端からハグ。ロナウジーニョが流行らせたジャンプして空中で胸をぶつけ合うパフォーマンスもあちこちで行われる。黒人の若い子とそれをやった。見事に弾き飛ばされてゲラゲラ笑われた。


そんな風にゴールを祝っていたら突然、足元で例の爆竹が炸裂した。腿が爆風でビリビリするし、耳キンキン。そしてオロオロする俺を見て、周囲のガロども大爆笑!このゴールで火がついたガロどもはここから打ち上げ花火や爆竹をガンガン炸裂させ始めるようになるけど、これ以後、近くの人が爆竹が投下されると肩を叩いて教えてくれるようになる。ガロどもは優しいのだ。


後半2分に先制点。幸先がいいけど、しかしアトレチコ・ミネイロには最低でも後1点が必要だ。1点を取られたオリンピアのディフェンスがよりいっそう厳しくなる。


アトレチコ・ミネイロは何度かチャンスを作るものの、ゴールは生まれない。時間はどんどん無くなっていく。後半開始直後の得点で取り戻した元気も、30分を過ぎるころには底を尽いた。


前にブラジルの観客は試合中にずっと何か喋っていると書いたけど、後半30分を過ぎると誰もが押し黙ってこれだけの人がいるのに不思議な沈黙がガソリンスタンドに広がっていた。時々ボソボソ聞こえるのは、神への祈りの言葉。目の前の中年男性はもはやテレビを観ていない。自分の足の先の一点を見つめ、真剣に神にガロの勝利を訴えていた。


セミファイナルの救世主、ギレーミが交代で入った時に、ガロどもにかすかに歓声が上がったけど、奇跡は再び起きない。後半40分を超えたころカウンターの好機を潰した事からオリンピアの5番が2枚目のイエローを受け退場する。ガロにとってはチャンスなのに、周りのガロどもの反応は鈍い。


誰もが後5分で訪れる、南米王者を決める決勝戦での敗戦という悲しみを、どうやわらげればいいか考えていた。


しかしそれは残り3分の出来事だった。


突然、ガロどもが狂喜した。そう、これは後半開始と同じ現象。ラジオから劇的な同点ゴールが伝えられたのだ。誰もが既にゴールは知っている。しかしその劇的なゴールを映像で楽しもうじゃないかと、喜びを抑えてテレビ画面を全員が凝視する。先行して喜んでいた者達は周りに鎮められる。約束された20秒後の歓喜をガソリンスタンドを埋めた300人ぐらいが一斉に待つ。


その時、振り返ってみんなの顔を見た。


笑顔、泣き顔、驚きの顔、信じられない物を観ようとする顔、顔という顔が全て感情に溢れている。自意識から解放された、子供のような顔が200個ぐらい見えた。


振り返ってテレビを観た。右サイドに開いたベルナールのクロスを、前線に上がっていたディフェンダーのレオナルド・シルバがファーサイドへふわりとしたヘッドを流し込む。


後半開始の先制点とは違い、この2点目は負けを無くすいわゆるイコライザーゴール。ガロどもの喜び方もそれに比例して大きい。とにかく抱きしめられる。全力で。知らない人達に。多くの人が泣いていた。さっきまでイカつい感じで、オラオラな感じだった男が、恥も外聞もなく泣きながら抱き着いてくる。なんだか自分も泣きそうになった。


炸裂する爆竹。打ち上げられる花火。派手に焚かれる発炎筒。あまりにも周りの感情が個人を超越して爆発しているので、だんだんと個人、という概念が消えていく。黒と白色のシャツを着て、胸に「CAM」と書かれたエンブレムを着けているただの「ガロども」の一員になっていく感覚。顔の作りの違いや、肌の色の違い、喋る言葉の違い、国籍の違い、それらを超越するゴールという単純明快な奇跡。


フットボールは偉大だと思う。


セミファイナルと同様に土壇場でアトレチコ・ミネイロは追いついた。しかもオリンピアは1人退場している。やっとガロどもがチャントを歌いだす余裕を取り戻した。セミファイナルではただちにPK戦だったが、ファイナルはしっかりと延長戦があった。


ほぼ一方的にアトレチコ・ミネイロが攻めたてる。今にもまたラジオ組から歓声があがりそうな雰囲気だけど、ゴールは生まれなかった。それにしてもこんなに泥臭いプレーをするロナウジーニョを観るのは初めてだった。ロナウジーニョがロナウジーニョとして存在する上で、大切にしているはずの遊び心を完全に捨てている。後半、1人で右サイドをズタズタにしているベルナールが足をつっている。それでもオリンピアのゴールネットが揺れる事は無かった。


ゲームはセミファイナルと同様にまたしてもペナルティゲームに突入した。隣のおっさんが、もう俺は心臓が持たない、というジェスチャーをしてきた。


南米王者がかかったペナルティーキックゲームだ。極限中の極限状態に、選手だけじゃなくてガロどもも緊張している。真後ろの男はテレビモニターに背を向けて、天を見つめひたすら祈っていた。前方の女性もテレビに背を向け彼氏に抱きつき身を任せている。その彼氏の首の後ろに回され、組んだ指の間で十字架が揺れていた。


ガソリンスタンドには静寂が広がっていた、すると背後のミネイロンからけっこう離れているにもかかわらず、凄まじいブーイングが聞こえてきた。画面にはオリンピアの1番手がボールをセットしている。この距離で聞こえてくるブーイングの中、彼はペナルティキックを蹴らなければいけない。


またもラジオ組が歓喜を爆発させた。遅れて確認した画面では1番手のキッカーが魅入られるように真ん中に蹴ってしまい、それを足で弾き飛ばすアトレチコ・ミネイロのキーパーヴィクトールが映っていた。ガソリンスタンドに響く「ヴィクトー!」のコール。


アトレチコ・ミネイロの1番手は途中交代で入ったアレッサンドロだった。アレッサンドロは延長後半にキーパーと1対1になったのにシュートを打たず、パスを選択してチャンスを潰していた。表情が硬い。イヤな予感がした。外した後に蹴るキッカーは絶対に決めなければと力が入り、外してしまうパターンが多い。ましてやこの1本は南米王者がかかっているキックなのだ。


アレッサンドロはこの大事な1本目をゴール左上に決めてみせた。このアトレチコ・ミネイロに1つアドバンテージを確定させた1本目の成功はかなり価値があったと思う。2本目を蹴ったギレーミ、3本目を蹴ったジョ、4本目のレオナルド・シルバはアドバンテージを持って、落ち着いてキックにのぞめた。


オリンピアの選手は苦しかったと思う。数百メートル離れた場所まで聞こえる大ブイーイングの中で、味方ゴールキーパーが止めてくれる事を信じて、もう絶対に外せないという重圧と戦いながらペナルティーキックを蹴らなければいけなかった。だから4人目のキッカーには、ただただ気の毒だったね、としか言いようがない。ロベルト・バッジョは言った「PKを外せるのは、PKを蹴る勇気を持っている者だけだ」


ラジオ組のフライング大爆発のせいで、最後のキックの失敗はよく観えなかった。もみくちゃにされる視界の隅で捕えたテレビ画面で、クロスバーを叩くボールと、味方に向かって疾走するキーパーのヴィクトールがどうにか確認できた。


前後左右そして上下、全方位で全員が残っていた爆竹を一斉に点火している。舞い散るビールとトイレットペーパー。ほとんどの人が歓喜の涙を流している。それを見て、ブラジルに来て初めて泣いた。最初は我慢できると思ったけど、泣いて声帯をヒクヒクさせながら、初めて会った俺にその表情を見せますかという顔をしながら「カンピ…オ~~~ン」と顔をクシャクシャにさせながら抱き着いてきたおっちゃんに、もらい泣きした。笑顔じゃなくて、涙が似合う喜びというものを初めて見た。


その歓喜の様子を携帯ムービーで撮っていると、隣の奴が肩をバシバシ叩いてついて来いのジェスチャーをしつつミネイロンを指差す。周りを見るとさっきまでガソリンスタンドを埋めていた人たちが、一斉にミネイロンに向けて疾走している。


ウイニングランだ。みんなが「カンピオン!」と叫びながら走っている。ミネイロンが近づく。どうやらチケットなしで入れるらしい。通路を駆け抜けて、ピッチとスタンドが見えてくる。戦いの後のミネイロンに入れるとは思ってもみなかった。もう充分に幸せなのに。


「Copa Libertadores FINAL Clube Atlético Mineiro×Olympia wining run」




決勝を終えたミネイロンは、なんというか、凄かった。スタンドの355度がガロに埋め尽くされていて、5度、人数にしてたった数百人ぐらいがアウェイのオリンピアに振り分けられた席のようだった。その355度のガロどもが勝利の凱歌を絶唱している。思いだすだけで鳥肌が立つ。


帰りの渋滞を恐れてか、帰る人がいた。すかさずそのシートにつく。周りにならいシートの上に立つ。数名のサポーターがピッチに乱入し、ガロのフラッグを振っていた。1人、調子に乗ったサポーターがオリンピアの選手の前で旗を振り、ケツを思いっきり蹴り上げられていた。


スタジアムは355度ヒューマンサラウンドシステムでおくるガロのチャントのメドレー。哀れオリンピアのサポーターは警備員に促されて退場を始めた。彼らには表彰式を観る権利さえ与えられない。ピッチの中央には表彰台が用意されてまずはオリンピアに銀メダルが授与される。全員が首にかけられるのを拒否し、手で受け取っていた。


そしてお待ちかねのアトレチコ・ミネイロの番だ。スタジアムは歓喜の声で満たされる。各選手のコールが行われる。この試合で闘志をみせてガロのハートをがっちり掴んだロナウジーニョのコールは別格だった。


いよいよリベルタドーレス杯が授与される。チャントが中断され、静まるスタジアム。同点に追いつく2点目と、ペナルティーキック最後のキッカーだったレオナルド・シルバがリベルタドーレス杯を掲げる。ミネイロンの屋根からは打ち上げ花火が上がり、ベートーヴェン交響曲第9番「歓喜の歌」が大音量でスタジアムに流れる。周囲からは「エウ、ソウ、カンピオン」の大合唱。これ以上の完璧な組み合わせってはたしてあるんだろうか。


「Copa Libertadores FINAL Clube Atlético Mineiro×Olympia Ceremony 」




この光景を写真に、とベルトループにカラビナで固定しているカメラバックを探る。カメラが無い。ウエストバックを探してみるけど、しまった記憶が無いのだから当然無い。カメラバックは強めのマジックテープでふたをするタイプなので、走ったり飛んだりしてもまず落ちない。考えられるのは、おそらく盗られたという事だ。


このブラジルの旅をともに過ごし、一緒にいろんな風景や光景を切り取ってきた愛機GR3が盗難されたのに、思ったよりショックは少なかった。得た物の方が大きかったからだ。もし、神様が時間を巻き戻し、ベロオリゾンテに行く前の状態にしてくれて、カメラが盗まれるという事を知っていてそれでもミネイロンに行くかどうか選ばせてくれたとしても、たぶんもう一度ミネイロンに行く事を選ぶと思う。いやほんと強がりじゃなくて。


この日に見た事は写真に残せなかったけど、忘れようがない記憶として残せたし、たぶん写真や携帯のムービーに映らない、映せないものだった。カメラはがんばってまた買えばいい。だけど、2013年7月24日、ベロオリゾンテはミネイロンスタジアム周辺で起きた事は、どうやったって個人の努力では再び手に入れる事はできないから。


サッカーという名の神様ありがとう。カメラを奪ったのは少し厳しいとは思いますが、それでもあなたを信じて、この地に来て良かったです。これからもあなたを信じ続けます。


Football goes on 特別編 ~itch ブラジルへ行く~ vol.17

「リオダービーレポート」」

フットピーポーよ!行ってきましたフルミネンセ×ヴァスコ・ダ・ガマのリオダービーinマラカナ!


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ようやくここリオでリオのチームの試合が観れました。この日は18時30分キックオフという事もあり、16時ぐらいに宿を出ようと思ってたのですが、宿で仲良くなったエドワルドが「マラカナ観たことないから一緒に行きたい!」と言っていたので、じゃあ一緒に行こうぜと約束したのに現れず!16時30分まで待って来ないので見捨てて1人で向かったのですが、おかげで現地で試合前のスタジアム周辺探査が充分にできませんでした。試合後エドワルドは「ごめん!寝てた!」だって!イッツ・ブラジリアン・クオリティ!


ブラジルサッカーのクラブの試合は、既にガロのリベルタドーレスで経験していたのですが、やはりリベルタと言うと非日常。ブラジルサッカーの日常である全国選手権の観戦には、やっぱりいろいろと発見がありました。


リベルタの時は相手がアルゼンチーナという事もあって、アウェイチームのサポーターなんていないに等しく、ほぼガロのガロによるガロの為の試合と言う様子だったけど、今回はなにせリオダービー。


サポーターの数ではホームのミネンセサポの方が若干多かったものの、しっかり同じ街のチーム、ヴァスコのサポーターもいる訳で、その対決姿勢はメトロから始まっていました。


電車を待つ間に、自然と同じシャツ同士で固まるため、乗り込む車両が「ミネンセ車両」「ヴァスコ車両」に分かれる所が面白かったです。僕はこの試合、ミネンセサイドで過ごしましたが、その車両同士、中でも挑発合戦が始まります。


現在、ヴァスコは絶不調なので、ミネンセはヴァスコに「よう!セグンダ!(2部)」とか言います。対してヴァスコ側はミネンセをののしる時のお約束「なんだとカマ野郎!」と返します。ミネンセは上流階級から支持を受けるチームで、数の論理からここリオでは嫌われ者のチームです。金持ちケンカせずに対して他のリオのサポは「あいつらはタマなしのカマ野郎」と来るわけです。対してミネンセはそんな経済的ジェラシーにいつも「小銭を恵んでやる」つまり、小銭を投げつけて応戦するのがお約束らしいです。


そんな小競り合いは「マラカナ」の駅に到着すると、本格化します。各車両から解き放たれたサポがお互いのチャントを大合唱!いかんせんミネンセの方が数が多いので、ヴァスコのチャントはかき消されてしまいますが、ヴァスコサポも少ない人数のわりにがんばって対抗していました。


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そして、驚きの事実!マラカナの工事は順調に進んでいました!


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工事中だった駅からの通路も完成!コンフェデの時は中途半端だったスタジアム周りも、パームツリーが植わり、完成イメージに近づいていました。後はセクションBエリアの入り口の工事が終われば、晴れて完成です。


スタジアムには開始30分前に入ったんですけど、さすがブラジル!両ゴール裏はギッシリなのに、メインスタンド、バックスタンドはガッラガラ(笑)。この日はゴール裏60レアル、バックスタンド100レアル!メインの一番いい席が220レアル!!という超強気な価格設定。当然のように誰も、バックスタンド、メインスタンドの席なんて買っていないようでした(笑)


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ホーム側ミネンセのゴール裏はもうぎっしりで、許された範囲内でなるべく中央最前列を目指して空いている席を探し、ちょうどリズム隊が陣取る席の後方で、この試合を観る事にしました


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ウォームアップから応援合戦は始まります。相手にはブーイング、味方にはチャント。そしてそれをお互いが声で掻き消そうとする、実に大人げない争い!最高です!


そしてキックオフ前、互いの応援合戦はピークに。意外だな、と思ったのがこの試合前のチャントは、敬意をもってお互いが邪魔をしない暗黙のルールがあった事でした。ますはヴァスコ側の応援からどうぞ。


「Campeonato Brasileiro 2013.7.21 Fluminense×Vasco Vasco Chant」





対するホームミネンセはコレオグラフィと大合唱で対抗。

「Campeonato Brasileiro 2013.7.21 Fluminense×Vasco Fluminense Chant」





少しバックスタンドとメインスタンドは寂しい感じでしたが、雰囲気は最高潮でいよいよキックオフ!

しかしこの日はホームフルミネンセの夜ではありませんでした。古巣ヴァスコに復帰したあのジュニーニョ・ベルナンブカーノの夜です。


試合は攻めるミネンセ、守るヴァスコの図式で進みますが、試合のペースは完全にヴァスコ。ヴァスコは強烈なプレッシングをかけてショートカウンターを繰り返す、ドルトムントのようなサッカーで圧倒します。


その攻撃の起点になっていたのがジュニーニョです。ちょうどイタリア代表のピルロの役割。ミネンセはボールの奪われ方が悪いので、どうしてもジュニーニョへのマークが甘くなり、ただでさえ危険なジュニーニョにスペースを与えてしまいました。


前半14分には中盤でボールを奪われ、高い位置から右サイドを突破されて、折り返したボールを、これ以上簡単に決めようがないというぐらい、シンプルにインサイドで合わせてジュニーニョに先制点を決められてしまいます。


沸き立つ反対側のゴール裏。沈黙が支配するこちらのゴール側。マラカナは近代的ゆえに、ゴール裏とピッチの距離が離れ、座席スペースもしっかりとしていて、インディペンデンシアのように椅子の上に立って応援する雰囲気じゃありません。ガロの熱に比べると、ミネンセの応援は若干迫力不足で、相手チームを混乱させる威力はありません。


その後もミネンセは、ヴァスコのプレッシングを突破できず、激しいディフェンスに笛を吹かない審判へ罵声が飛びます。そして事件が前半残り20分というまだまだたっぷり時間が残された時に起こります。


相手ゴール側で、リプレイも無かったのではっきりと見えませんでしたが、ゴール前の競り合いで相手と激突したフレッジに、主審はヒジを使ったというジェスチャーをして、なんと一発レッドを提示!


前半24分で1人少ない状態、さらに退場するのはチームのエースストライカーというこの判定にミネンセサポの怒りが大爆発!全員が一斉にコレオ用に配られた紙を投げまくる異常事態が発生!ヴァスコ側からは「オブリガード、チャウ!フレッジ!」の大合唱(笑)


正直この時点で試合は決まったようなもの。遠目から見ても一発レッドはちょっと厳しすぎる判定だったと思います。


数的有利になってもヴァスコはスタイルを変えず、相手に持たせ、奪ってからのショートカウンターを繰り返します。ミネンセのGKカバリエーリが素晴らしい反応で2点ぐらいを防いでいました。僕がこの日ミネンセのMOMを選ぶなら、右サイドバックの2番か、このカバリエーリです。


何ともいえない重い空気が支配するハーフタイムを終えて、さあまだ1点差だ!と少し元気を取り戻しだしたミネンセ達。しかし迎えた後半、最初のプレーでまたしてもジュニーニョが、ミネンセの心をボッキリと折ります。


立ち上がりからディフェンスラインを上げて、1点を奪いに来たミネンセをあざ笑うように、中盤でボールをカットして回ってきたボールを、20メーター級のとんでもないスルーパスで切り裂きます。キーパーと1対1になったヴァスコのフォワードは楽々とループシュート。数的不利のミネンセにとって決定的な2点目を、後半開始1分で奪われてしまいます。


なにが驚いたってこのゴールが決まって、後半まだ1分なのに帰る人がいたことです。ヴァスコ側に向かってダブルで中指を立てながら!判断はやっ!


しかし彼らは賢明だったのかもしれません。この後のより悲惨なミネンセンの惨状を観ずに済んだのですから。


この後、ミネンセはコーナーから1点を返す事に成功はしました。しかしその直後に、またしてもジュニーニョのパスから、抜け出そうとした選手を引き倒してしまい、ミネンセのセンターバック、ジゴンが2枚目のイエローで退場!ミネンセは9人になっていまいます。


最後にはコーナーからヘッドで追加点を叩き込まれ、結果1-3という大敗でリオダービーは決着。試合終了のホイッスルが吹かれるやいなや、ミネンセのコーチ陣は主審に向かって全力疾走で走り寄り、「今日の笛はなんなんだ!」と猛抗議をしていました。


帰り道のミネンセは全員が意気消沈。電車でヴァスコが勝利の凱歌を歌っていても、死んだ魚の目で無反応(笑)。まああの試合内容じゃ、心折れますよ。


僕的には座っていたのはミネンセ側で、楽しみにしていたフレッジが前半24分に消え、練習を観た時に心配していたデコも、やはり不調で後半頭に代わってしまい、試合前に楽しみにしていた要素は全て台無しでしたが満足できました。


なぜならジュニーニョのきれっきれのプレーが堪能できたから!いやあ全然錆びついてないですよジュニーニョ!あの間合いというか、限りなくスムーズなベルベットパスは健在です。2点目のスルーパスなんて思わず立ち上がって「おお!」とか言っちゃって、周りからかなり白い目で観られちゃいました(笑)


そんな感じで、初のリオのクラブチーム観戦、リオダービー観戦は幕を閉じました。今週末には連続して今度はフラメンゴ×ボタフォゴのリオダービーが同じくマラカナで開催されます。たった2試合でリオのビッグ4の試合を観れるとはラッキッ!そんな訳で次回はフラメンゴ×ボタフォゴの試合をレポートしたいと思います。


まずはまたチケットを定価で手に入れる為に奮闘しなければ。ほんとこっちはソシオへの優先販売と、販売網の貧弱さから定価でチケットを手に入れるだけで1日潰れちゃうんです。まあ、それがまた楽しかったりするんですけどね!


そんな訳で、ブラジル、リオからでした~


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