リオダービーレポートその2 | DLIVE LOG

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フットボールライター itch のブログ

Football goes on 特別編 ~itch ブラジルへ行く~ vol.19


フットピーポーよ!2週連続で行ってきましたリオダービーinマラカナ!前回はフルミネンセ×ヴァスコのリオダービーの模様をレポートしましたが、今回はリオのビッグ4の残りの2チーム、フラメンゴ×ボタフォゴです!


まずはブラジル恒例のいい大人が半日かけてのチケット入手です。こは何もヒマな旅人の僕だけじゃなく、現地のいい歳したおっさんとかも仕事を抜け出して買いに行くもの。


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今週はミッドウィークにベロオリゾンテでリベルタドーレス決勝を観戦しに行ったので、リオに戻った金曜日に、フラメンゴのゴール裏チケを求めて、クラブオフィスに向かいました。


フルミネンセ戦の時のような混雑もなく、すんなり順番が来たのですが、「チケット1枚!メンゴー!」とオーダーすると、「160レアルだぜ!メンゴー!」と返してくるではありませんか!


この日のゴール裏の価格は100レアルのはず、事情を聞くとどうやらゴール裏席はとっくに売り切れて、フラメンゴサイドの席はバックスタンドかメインスタンドしかなく、その中で一番安いのが160レアルだと。


旅の終盤で、100レアルでさえキツいのに、160レアル。「100レアルの席は無いのか、メンゴー!」と頼むと、「ボタフォゴのゴール裏ならあるぜ、メンゴー!」と教えてくれました。仕方が無いのでこの1戦はボタフォゴサイドで観る事に。


係の兄ちゃんはノリのいいナイスガイで「ジャポネス、試合にはそのシャツを絶対に脱いで行けよ」と、僕の着ていたフラメンゴのユニを指差した後、列のみんなに「おい、このジャポネス、ここでボタフォゴのチケット買ったぞ!」とチクりやがったんで、盛大なブーイングを浴びました(笑)


宿に戻ると誰かから噂が広がったらしく、オランダからやってきた身長198cmぐらいの、フランク・デ・ブールのような旅行者から、チケットをどう取ったか質問攻め。どうやら彼らも仲間とマラカナで試合が観たいらしく、翌日にチケットを取りに行くとの事。


フラメンゴゴール裏のチケットがもう無い事と、ボタフォゴのチケットを買うなら、宿から近いボタフォゴオフィスの方に行く方がいいと、アドバイスしました。


彼、ライドンとはこれがきっかけに仲良くなり、かたことの英語でサッカーの事を語り合いました。もともとオランダサッカーには尊敬の念があるので、あなた達のアタッキングサッカーは素晴らしい、と伝えると。「でもそろそろ勝ってほしいよね」と。ロッベンとファン・ペルシが大好きだ、と伝えると。「彼らは代表だとサッパリなんだよ」と。俺は今のバイエルンのベースを作ったのはファン・ハールだと思うよ、と伝えると。「でしょ!彼は素晴らしいマネージャーだからね!」とご満悦。


ただし、彼は苦虫を噛み潰すような表情で、「ネクストイヤー、チャンピオン、メイビー、ジャーマン」と嘆きました。オランダ人にとってドイツ人は本当にイヤなやつらしくて、それでも悔しいけど今のドイツの強さは本物だと。オランダは2006年に勝たなければいけなかった、来年はノーチャンスだ、と。


「日本はどうだ?」と聞いてきたので「ダメだね、監督が悪いよ」と答えて「ヒディンクを日本にくれ!」と言ったら笑って、「ヒーイズ、ベリー、エクスペンシブ」と言ってました(笑)


話がめっちゃ脱線しましたが、この試合があった週は、実はパパこと新ローマ法皇がリオはコパカバーナ、もう目の前の海岸にできたイベント会場にお目見えするという事で、街は世界各国から集まった若者(報道では300万人!)達でごったがえし交通網が大混乱!


その影響でメトロの運航が一部変更になり、先週に向かった経路で乗り換えを行おうとすると、その乗り換え入り口が封鎖されていました。


しかし、ここで幸運な出会いが。その封鎖に人一倍怒っていた、歳の頃同じぐらいのブラジル人が、戸惑う自分に「マラカナ?」と話しかけてくれて、なんなら一緒にマラカナに行くか?と誘ってきてくれました。


彼の名はジョアン。その身なりから生粋のフォゴー、ボタフォゴファンです。彼のユニを指差し「ボタフォゴー!」と挨拶すると、3倍ぐらいのでかい声で「フォ~ゴォ~!」と叫び返してガッハッハ。


ジョアンはかなりインテリジェンスがある人間で、英語ができ、話が面白く、しかも優しく、気分のいいナイスガイ。お前は今日の席はどっちだと聞いてくるので、フラメンゴのチケットが買えなかった事は黙っておいて、「ブロコ、ボタフォゴ!スーペリオル(ゴール裏)!」と答えると、「一緒のエリアだ!よーし、今日は俺がボタフォゴの応援の仕方を教えてやる!」的な事言い、なんと一緒に試合を観る事に!


ジョアンは道すがら、ボタフォゴの事やリオの4つのクラブの事を教えてくれました。


「まず、フラメンゴ。あいつらはブラジルで一番ファンが多い。当然リオでも最大。だけどファンが多い分、変な奴も多いんだ。貧しくて教育を受けていない奴がファンにいっぱいいるから、あいつらは暴力的で俺は嫌いだ。あとファンのチームワークないね。バラバラ」


「次はリオではフルミネンセって事になっている。あいつらは金持ちが応援するチームだ。昔は白人しかチームに入れないことにしてて、それで勝てなくなったから、黒人にファンデーションを塗って、プレイさせた事がある恥ずかしい奴らだ。だから俺らは「おしろい野郎」「オカマ野郎」と言って馬鹿にする。ファンも上から目線のヤなやつばっかで、俺は嫌いだね」


「そして残念ながら次がヴァスコ・ダ・ガマだ。あいつらはポルトガル系のチームだよ。あいつらも白人主義なところがあって、ファンも白人が多い。でもヴァスコファンは常識のある奴が多くて無害。好きでも嫌いでもないね」


「そして最後にボタフォゴだ。ボタフォゴは…この3つに当てはまらなかった変な奴がファンだ(笑)。ファンの数は一番少ない。でも俺たちは数が少ない分、結束力は強いんだ。応援だって負けていない。1人1人の応援なら、4つのうちで一番熱いのはボタフォゴだね」


なんとなく会った時から気が合うジョアンがボタフォゴファンなのはうなずけた。この話を聞いて、かなりボタフォゴに気持ちが傾きました。たぶん自分もブラジルで生まれ育っていたら、「3つに当てはまらない変な奴」になっていた気がする。ジョアンはこの面白い話をこう結びました。


「ボタフォゴってのはな、英語で言うと、プット、ファイアって意味なんだぜ。偶然だけどな!」


「火をつけろ」という意味だと誇らしげに語る、ジョアン。その意味はスタジアムに着くと分かりました。


ボタフォゴゴール裏のゲート、ゲートCは黒字に白の星のエンブレムを胸に持つ物でごった返していました。誰かがあるチャントを歌うとほっとかない、すかさず乗っかるんです。ゲート前の列で、折り返してすれ違う時には全員がハイタッチ。アットホームでありながら、超元気、一発で雰囲気を気に入りました。


ジョアンと友人と自分の3人組で無事にスタジアムに入り。ジョアンのジャイアン的な強引さで、エリアほぼ最前列、ゴール裏ど真ん中の席を確保!いよいよ試合が始まります。


数で言えば3:1ぐらいでフラメンゴの方が圧倒的に多い。だけど応援の声量は互角。誰もが精一杯の声で選手達のハートに「火をつけて」いたフォゴー。かっこいいじゃんフォゴー!


「Botafogo sapoters befor the game」




その声援に後押しされて前半はボタフォゴが圧倒します。現在のボタフォゴと言えば、10番をつけるヨーロッパからやってきた男セードルフが目立つけど、セードルフはスパイス程度で、メインディッシュはサイドにあります。


右にウルグアイ代表のロデイロ、左に初めて知ったヴィチーニョというブラジルの若手。この両サイドがボタフォゴのストロングポイント。特にこの31番をつけるヴィチーニョの名前は覚えておいた方がいいかも。ロデイロに比べると安定感はないけど、この試合で3人抜きの凄まじいカットインを見せてました。


フラメンゴはこの両サイドがどうにも抑えられず、前半の主導権を完全にボタフォゴに明け渡してしまいます。ホームなのに、試合内容がよろしく無く、静まるフラメンゴゴール裏。対照的にガンガンユニフォームを回しながら応援する、ボタフォゴ。


「Botafogo sapoters on the game」





そして前半22分コーナーキック。キッカーはセードルフ。なんの変哲もないボールだったけど、ボタフォゴのエース、ラファエルが豪快にヘッドをフラメンゴゴールにぶち込む!今度はスタンドの方がプット、ファイヤー!ジョアンと友人とがっちり肩を組んで円陣のような感じでグルグル回ってゴールを祝いました。ジョアンが実にいい顔をしていたなあ。


しかしボタフォゴが良かったのは前半まで。後半頭からフラメンゴは2人の選手を一気に使い。交代で入った17番のトップ下が試合のペースを引き寄せます。隣のジョアンが「前半と違うチームだ」と嘆くほど、後半のボタフォゴはさっぱり。ジョアン曰く、ボタフォゴは水曜に試合を行っており、フラメンゴは1週間たっぷり休養している、と。後半、ボタフォゴは足が止まってしまいます。


途中2度、ボタフォゴのゴールネットが揺れましたが判定はオフサイド。この判定にやっとフラメンゴゴール裏にも火がつきました。ここで苦しいチームを救うべく、ありったけの声援をフォゴーが絶唱。フラメンゴのチャントを掻き消そうと必死です。


そんな時でしたマラカナが粋な演出をします。オーロラビジョンに他会場の結果が出たのですが、それが現在首位を行くクリチバの結果。なんと現在クリチバが0-1で負けている!もしこのままのスコアで終えれば選手権の首位はボタフォゴのもの!フォゴーもがぜん元気を取り戻します。


その甲斐あってか、どうにかロスタイムまで1点リードのままたどりついたのですが、無情にもロスタイムは5分!絶対に水増しです(笑)怒るジョアン!そしてその長すぎるロスタイム残り2分、ついに耐え切れずフラメンゴに劇的な同点ゴールを決められてしまいます。


ジョアンは泣き笑いみたいな顔をしていましたね。監督がクソだと、呟きながら。確かに後半そうそうにヴィチーニョ、そして最後はロデイロというボタフォゴの強み2枚に代えてボランチを入れて3センター気味にした監督の交代は、僕も疑問でした。


向う側のフラメンゴゴール裏は目の前で決まった劇的な同点ゴールにお祭り騒ぎです。それまで一体感の無かった応援も、ゴールというわかりやすい現象の下にひとつになり、大迫力の「メンゴー!」のコールをしていました。


フォゴーは後味の悪い勝ち点1に、次々とスタジアムを後にします。個人的にはフラメンゴ試合後の勝利の凱歌を観てみたかったのですが、ジョアンが「帰るぞ!」とさっさと行ってしいまうので、しょうがなくついていきました。


帰り道にジョアンは言っていました。「俺たちは全国選手権で1回しかチャンピオンになった事がない。しかも20年前だ。今年はチャンスなんだよ。いつもフォゴーは馬鹿にされるんだ。3チーム全部から!だから今年は頼むからこのままいって欲しいんだよ」


別れ際にジョアンはかっこいい事を言っていました。まずなんでお前はボタフォゴファンを選んだのだ?と聞いてくるので、チケットが無かったからなんて言えず、どう言おうか迷って思わず、理由は無い、と答えるとジョアンは「そうだよなあ、好きになるのに理由なんてないよなあ、俺もそうだったな」とポツリ。そして「俺、なんでボタフォゴなんて好きになっちゃんだろう」って。


どうだった?ボタフォゴの試合は?と聞いてくるジョアンにこう答えました。俺は今日からフォゴーだ!ジョアンは笑って、チャオ、フォゴーとでかい声で別れの挨拶をして抱きしめてきて、ボタフォゴの駅で降りて行きました。最高に気分のいい奴でした。


「中央がアミーゴのジョアン。ジョアン、出会えて良かったオブリガード!」

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という訳でリオの4チーム全ての観戦を終え、本日をもって僕はボタフォゴファンです。フラメンゴのユニ買っといてこの節操のなさ!日本に帰ってもボタフォゴの結果をチェックする事でしょう。その結果しだいで右往左往する、ジョアンの事を思いながら。


世界中どこにでもあるフットボールと、世界中にいるフットボール馬鹿。フットボールはやっぱり偉大です。そんなフットボール馬鹿と、仲良くなるきっかけを与えてくれます。ヴァモス、ボタフォゴ!20年ぶりのカンピオーネを目指して!プット、ファイアー!


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