私はこちらの賃上げ交渉などにかかわっている暇はなく、
「ストだからいまは書かなくていいです」という理屈は通用しない。
結局、ぼくはスト破りをして、Mさんの原稿をいただきに通った。
旅館代は、Dちゃんが配慮をして、日づけを変えて社へ請求してくれたが、
交通費は自分で払い、スト破りのうしろめたさを背賃い、
組合幹部からは「おめえ、どこへ行ってたんだ」とすごまれ、
会社からは、賃金カットをされた。
平屋建ての廊下を歩くと長谷川伸の色紙が掛かっていて
「男泣くなら人形のやうに顔で泣かずに腹で泣け」と書かれていた。