「顔で泣かずに腹で泣いた」(ああ、そうだった…)とぼくは思い出した。ぼくは二十年前、この色紙を見て、「顔で泣かずに腹で泣いた」のであった。しかし、そんなことよりも、原稿用紙の前で格闘するMという作家の、凄絶な執筆ぷりをかいまみたことのほうが、ずっと印象に残った。ぼくは編集者として人一倍働いていたつもりだったが、Mさんの仕事ぶりを見て度ぎもをぬかれたのだった。