日常との決別 | 佐原敏剛文学塾

佐原敏剛文学塾

日本文学、海外文学を多角的に分析、批評する。名作といえど問題点は容赦なく批判する。

現代社会に於いて人々が求めているのはささやかで平凡な日常の幸福である。敢えて理想に殉ずる人物は稀だ。新聞には毎日、血腥い事件が報道されている。中学生がいじめを苦に自殺する事件も後を絶たない。何故、誰も立ち上がろうとはしないのか。中学を卒業した時点で私はそうした傍観者の立場に我慢できなくなった。犯罪だけでなく、事故や災害による死者や精神を病む人々がいる。人々は自分達さえよければそれで一向に構わないのだ。高校時代に私を絶望から救ったのはハードボイルドとハードロックだった。何がハードボイルドとハードロックにあったのか。発狂しそうな精神状態にあっても私は読み続け、聴き続けた。ハードボイルドは読むだけではなく、書かずにいられなかった。中学に上がってから私は常に極限状況の中にいた。孤高である。実現不可能な理想を追い続ける覚悟が固まっていた。『あしたのジョー』の世界が中学生の私を戦いの世界へ導いた。運命が私を地獄へ堕とし、私は孤独な戦いに人生を賭けた。終わることのない戦いだ。私が生きる道はそれ以外に無かった。襲い掛かる運命が私を奮い立たせた。勇気ある人は自らを苦境に立たせる。