休みだというのに普段より早起きして親類の葬儀に行く両親を送ってから朝食をとり、急がないと終わってしまう、朝10時から1回だけの上映になってしまったこれを鑑賞しに1人で出かけた。
ランボー ラスト・ブラッド (2019年)RAMBO: LAST BLOOD
監督 : エイドリアン・グランバーグ 製作 : アヴィ・ラーナー、ケヴィン・キング・テンプルトン、ヤリフ・ラーナー、レス・ウェルドン キャラクター創造 : デヴィッド・マレル 原案・脚本 : シルヴェスター・スタローン 脚本 : マシュー・シラルニック 撮影 : ブレンダン・ガルヴィン 美術 : フランコ=ジャコモ・カルボーネ 衣装デザイン : クリスティーナ・ソペーニャ 編集 : トッド・E・ミラー、カーステン・クルパネク 音楽 : ブライアン・タイラー
出演 : シルヴェスター・スタローン、パス・ベガ、セルヒオ・ペリス=メンチェータ、アドリアナ・バラーサ、イヴェット・モンレアル、オスカル・ハエナダ、ジーニー・キム、フェネッサ・ピネダ、ホアキン・コシオ
ランボーシリーズ最終作。思えば1,2作目以来の劇場鑑賞となったが、ランボーの長きにわたる戦いの最後としては、シリーズを考えれば割と地味な作りだったなあ。
ランボー1作目を観たのは1983年だからもう37年も前なのか。東宝東和の「一体何人並んでいるんだ!」っていう無茶なデザインのチラシが懐かしいな(笑)。これね↓
その1作目の中身はチラシほど派手じゃなく意外と地味なベトナム帰還兵物だったが、その後大好きな「地獄の7人」を監督するテッド・コッチェフの硬派な演出も良くて、好きな一編だった。
本作もそういう意味では1作目の原作・原題「FIRST BLOOD」に対をなすタイトル通り、ソリッドな作品だった。
冒頭に「Balboa Production」と出ていたから余計にスタローンの(良い意味で)自主映画的な雰囲気も勝手に感じられたのもあるけど。
自らの戦場だったベトナムに戻る2作目も含め、その後色んな「戦争」を抱え込んだまま世界中の戦場で軍などを相手に戦う彼の最後の相手がメキシコマフィアとは。
これまでのシリーズに沿ったら、メキシコの地を戦場に変え、現地の警察や軍など巻き込む都市戦で派手にやらかす物語もあったと思うが、彼が初めて「誰かと暮らす」シーンがあった本作、心安らぐ、守るべき家族を奪われた彼の怒り、その守るべきものが既にいない自らの「家」を戦地に変えてまで、個人的な復讐を遂げる姿は「ランボーらしくない」という唯一にして最大の違和感はあったものの、大いに共感だった。
戦闘スキルが凄いスペシャルな男故に以前なら一回向こうに行ったらすべて壊滅させて帰ってきたランボーが、初回はコテンパンにやられるなんて。
結局は「大切なもの」を守れず、一度は住処に戻り、再度出直して復讐のために挑発するなんて、いかにアリゾナとメキシコが近いとは言え、何度も足を運ぶ、ある意味「一般人」に近いやり方に描かれていたのが何だか感慨深いのだ。
「ジョンおじさん」と慕ってくれたガブリエル。演じるイヴェット・モンレアルが良くてね。ランボーならずとも将来幸せになって欲しいと願いたくなる。
彼女を守りたいという一心が行動原理。故に相手が女でも容赦なく脅すランボー。ただただ彼女を救うためのその真っ直ぐな行動にはグッとくる。
今までは降りかかる火の粉を払いながら強敵と対峙していた彼が直接怒りの感情を相手にぶつけるってのも原点回帰だなあと感じたのだった。
だからなのか、その真っ直ぐな「怒り」に、ジョー・ドン・ベーカーの保安官が不正な組織と戦う「ウォーキング・トール」や、ジョージ・C・スコットが娘を救うべく単身闇社会へ乗り込んでいく「ハードコアの夜」、そしてブロンソンの「DETH WISH」シリーズの第一作「狼よさらば」などを何となく想いだしたのも確か。
もちろんランボーはただの「一般人」でも、ましてや「素人」でもないから、厳密には違うのだけど。(自宅牧場での殺人トラップアミューズメント化は凄かったよなあ)
もちろん映画としてはメキシコでの協力者カルメンの扱いがちょっとぞんざいだったり、そもそものメキシコの人身売買組織があんまり大物っぽくなく、その辺のチンピラに毛が生えた程度にしか見えないスケール感の乏しさはちょっと残念ではあった。
まあ国家や軍が相手ではない分、「普通の人間の怒り」をぶつけるのにはジャストサイズだったとは思うのだが、半面「ランボー」としてでなくても、物語として充分成立する「初老の男の復讐譚」でもあったのは確かだと思うのだ。(但し、ラストの戦場スキル大発揮の部分を除けば…だけど)。
だがしかし、ランボーのトラウマは悲惨だ・・・未だに薬を飲み、あれだけのトンネルを掘ることで「蓋をしていた」わけなのだから。その蓋が開いた後のスキルの発揮が凄まじい分、やはり「戦場でしか生きられない」彼の姿はある意味哀れではあるのだ。
でもって、あのラストなら、もしかしたらまたその姿が拝めるのでは?とも思ってしまうのだが。
元々スタローンという俳優は大好きではなく、「ロッキー」こそ大好きな映画ではあったが、ロッキーもランボーもある時点から「シリーズ続けて金儲け~」的な匂いがして、スタローン離れをしたのも事実だ。
「ロッキーⅢ」までは劇場で観たがⅣ以降は敬遠していたが、ラストの「ロッキー・ザ・ファイナル」が予想以上に良くて劇場で観なかったことを悔やんだことと、「エクスペンダブル」シリーズでの「映画人としてのスタンス」で彼を見直したこともあり、こちらが年を食ったことも加わり今は「スタローン、凄えな」と素直に思えるのだ。
それにしてもあの頃スクリーンで観た映画のキャラクター、すなわちこのランボーやロッキー、インディ・ジョーンズにスカイウォーカー一族の「その後」を30年、40年たってこうして観ることになるとはねえ・・・。
そんなこちらの映画鑑賞歴も含めて、本編最後のシリーズの断片モンタージュにはちとやられましたな。弱点は多いもののなんか感慨深い一作でした。
彼の安息は今後もあるのかな…