呪いの館 血を吸う眼 | B級パラダイス

B級パラダイス

健康優良不良中年が、映画、音楽、読書他好きなことを気まぐれに狭く深くいい加減に語り倒すブログであります。

金曜は前の記事の通りでトホホな思いのまま帰宅は23時を回り、そのまま昨日土曜はまたもや雨の一日。さっさと持ち帰り仕事を済ませてしまえばいいのに、予定のない今日やればいいやとだらだら過ごしたのだった。そんなどんよりの一日、これを観たので記しておこう。

呪いの館 血を吸う眼 1971年)

LAKE OF DRACULA 

監督 : 山本迪夫 製作 : 田中文雄 脚本 : 小川英、武末勝 撮影 : 西垣六郎 美術 : 育野重一 編集 : 近藤久 音楽 : 真鍋理一郎

出演 : 藤田みどり、江美早苗、高橋長英、岸田森、高品格、二見忠男、桂木美加、松下達夫、記平佳枝、毛利幸子、川口節子、鈴木治夫、小川安三、大前亘、山添三千代、大滝秀治

 

東宝の「血を吸う」シリーズ第2弾。第1弾の「幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形」も記憶はあるのだが、製作年度を考えるとどれも劇場では観ていないはず。今は亡き岸田森のクリストファー・リーのドラキュラに勝るとも劣らぬ吸血鬼っぷりにガキのころ震えあがった記憶はあるから、これか次の「血を吸う薔薇」のどちらかをテレビで観たのだろうなあ。

 

妹の夏子と湖畔に暮らしている教師の柏木秋子は幼い頃から「金色に輝く瞳を持つ男」の幻影に悩まされている。

ある日色々世話をしてくれる釣具屋の久作(高品格)と話しているところに不審な大きな荷物が届く。秋子が帰ったあとに久作が荷物を解くとそれは棺桶だった・・・。

秋子の恋人である医師の佐伯は多忙な仕事の合間に、姉妹のところにしばしば遊びに来るのだが、彼の勤める病院に衰弱しきった女性が運び込まれる。彼女の首には野犬のものとは思えない咬み傷があった。

一方秋子の方は、愛犬が姿を消して探しに行くと久作が人が変わったようになって襲ってきたり、妹の夏子まで深夜にふらふらと出歩いたりと次第に周辺に異変が起こる。

幼いころからの悪夢と併せ神経症的になる秋子は佐伯の催眠療法を受け、生まれ故郷に二人で向かい、悪夢の中に登場する洋館を訪れると、そこは吸血鬼の住む館だった・・・。

 

というシンプルなストーリーだけど、冒頭の不気味な夕焼けの中の幼い秋子の身に起こった悪夢の元になった出来事を含め、クリストファー・リーやピーター・カッシングが出てきそうなハマー映画の「怪奇」ムードをたっぷり纏っているのが好みだ。

あの時代の邦画ならではの台詞回しやファッションなど、次第にモダンになっていく70年代の日本の風景が良い感じにブレンドされていて、昨今のホラー映画のように畳みかける怒涛の展開や、特殊メイクやCGの「凄さ」は無くとも、充分怖い一本だ。


しかし本作の魅力は何をおいても岸田森だ。

ある意味植物的な、幽鬼のような彼が一転、血に飢えた吸血鬼の凶悪な表情に変貌する様の怖さったら!

クリストファー・リーのドラキュラ以上に禍々しくて、今観ても充分怖かったぞ。

ハマープロのドラキュラに忠実な、胸というか腹部に杭が刺さっての断末魔も最高だった。

 

「座頭市と用心棒」の九頭竜や傷だらけの天使、初期必殺シリーズでのいくつかの悪役や東映セントラル作品での脇役など、画面に独特の空気をいつも与える人だったなあ。何より「怪奇大作戦」での牧史郎や帰ってきたウルトラマン他特撮にもいっぱい出演していたまさに個性派俳優。彼や草野大悟や成田三樹夫などを早く亡くしたのはほんと損失だよなあ。


(あ、損失といえば三浦春馬はビックリ。決して「大好きな俳優」ではなかったけど、何度もTVやスクリーンで観ていた彼が、あの若さでこの選択をしてしまったのは残念としか言いようがないや…)


閑話休題。他にも怪しさ満点の高品格(上の写真じゃ「怪しい」以外はわかりづらいか(汗))や、メイクが凄すぎて最後まで誰だか分らなかった大滝秀治なども見逃せないのだ(見逃していたが…(笑))。

 

一方で女優陣はハマーブロの諸作のようにグラマラスな女性やエロさ加減は控えめ。

加えて主人公秋子の藤田みどりが今一つ俺の好みじゃなくて魅力に乏しいのが惜しいところだったな。

(彼女は実生活ではその後岡田真澄と結婚するんですな)。


むしろ妹夏子役の江美早苗の方が随分と魅力的。

姉の代わりに岸田森に早々咬まれてしまい、しもべになってしまう夏子。明るくて可愛かったし、吸血鬼となっても美しかったのになあ。

最期もまた哀しいのだ。

最期といえば、調べたら江美早苗はあの「新婚さんいらっしゃい」の初代アシスタントで、女優引退後は南沙織の「人恋しくて」など提供して作詞家として地位を築いていた後に、別れた元夫に今で言うストーカー的に付きまとわれ、36歳の若さで惨殺されてしまうという不幸な最期を遂げていたのがなんともではあった…。

というわけで昨今の怒涛のCG、血糊の量に飽きてしまった方には、このジワジワと、温度を上げない演出が新鮮かもですよ(笑)。お試しあれ〜