アヴェ・マリアのガンマン | B級パラダイス

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アヴェ・マリアのガンマン<未>(1969)
IL PISTOLERO DELL'AVE MARIA(FORGOTTEN PISTOLERO/GUNMAN AT AVE MARIA)

 

監督:フェルディナンド・バルディ  製作:マノロ・ボロニーニ 

撮影:マリオ・モントゥーリ 音楽:ロベルト・プレガディオ 
出演: レオナード・マン、ルチアナ・パルッツィ、アルベルト・デ・メンドーサ

ピラール・ヴェラスケス、ピエロ・ルリ、ルチアーノ・ロッシ、ホセ・スアレス
 
これまた落札した「マカロニウエスタン DVD-BOX 必殺篇」4枚組の中の1本。
元々このBOXは仲代達矢がメキシコの極悪人役で出てる『野獣暁に死す』、

コルブッチの名作、ジャン=ルイ・トランティニャン&クラウス・キンスキー主演『殺しが静かにやって来る』、

リンゴ・スターも出てる(脇役だけど)、トニー・アンソニー主演マカロニ版座頭市『盲目ガンマン』と
気になる映画が3本もあったんで落札したんだが、この『アヴェ・マリアのガンマン』だけは

日本未公開作、知らない監督、知らない役者でまったく期待してなかったんだけど
まずは一番マイナーなこれから・・・と観だしたら、なんと意外な拾いもので、面白い!


マカロニウエスタンにありがちが悪党が悪党を狩るようなド派手な銃撃戦は少ないものの

ギリシャ悲劇を下敷きにしているらしい近親憎悪と復讐が、適度な複雑さで丁寧に描かれていて
そのドラマ部分でほほぉ・・・と引き込まれ(多少のツッコミはあるが(笑))一気に観れたのだった。

 

ある日、メキシコ人の山賊に追われる男を孤独なガンマン、セバスチャン(レナード・マン)が助ける。

セバスチャンには記憶が無かったが、その男ラファエルはなんとセバスチャンの家の使用人の息子だったのだ。
ここでラファエルは驚くべき事実をセバスチャンに伝える。

セバスチャンは、軍の上層部だった父親と美しい母を持ち、裕福な家に生まれていた。

しかし彼が幼い頃、戦争から凱旋してきた父を迎えたその日に

屋敷を襲撃してきた集団があり、凱旋パーティはメチャクチャになり父を殺されたのだ。

ラファエルが言うには同じく殺されたと思われた母親は実はまだ生きていて

あろうことかセバスチャンの父親を殺した男と一緒に暮らしているというのだ。

教会の鐘桜を見ると過去の失われた記憶がフラッシュバックするレナード。

使用人の女性に助けられて屋敷を逃げた時に見上げたのが教会の鐘楼だったのだ。

今も魔性の女と噂される母親、一緒に住んでいた姉の安否と自分の出生の秘密を探るため

セバスチャンはラファエルとともにメキシコへ向うのだが・・・。


陰のある主人公がぴったりなレナード・マン(なぜかDVDジャケットはラファエルに見えるんだが)。

もっと有名になってもよかったんじゃないってくらい、なかなかイイ男である。

加えて成長した姉役の女優さんが清楚かつ美しくて、ほんといいのよ(笑)。

 

俺がマカロニ・ウエスタンとして期待する無茶苦茶アクションは乏しいとは言え、意外と凝ったカメラワークと

フラッシュバックするレナードの記憶が紐解かれるミステリアスなストーリーなど

数多あるマカロニウエスタンの中でもかなり異質な感じはする一編だ。

もっとも「未公開作の中ではとりわけ傑作と囁かれている」というのは、言いすぎだと思うぞ(笑)。

 

ああ、マカロニにはありがちだねえ・・・という近親憎悪と復讐劇が逆転するクライマックスでの驚く事実。

恩讐を超えた理解&本当に憎むべき相手との決闘も、ドンパチ自体はあっさりしているものの

燃えさかる炎をバックに、それぞれの想いが交差していい感じで展開され、うーん満足満足。

 

そもそもタイトルがいいよね「アヴェ・マリアのガンマン」。

役名もすべて聖書の中にでてくる人名らしいのが、いかにもヨーロッパ、いかにもイタリアって感じ。

 

このマカロニウエスタンBOXシリーズすでに3つ持っているのだが

こんなのに出会うとまだまだ欲しくなってしまうんだよなあ・・・(苦笑)