28週後・・・ (2007) 28 WEEKS LATER
監督・脚本:フアン・カルロス・フレスナディージョ、製作総指揮:ダニー・ボイル、アレックス・ガーランド
脚本:ローワン・ジョフィ、ヘスス・オルモ、E・L・ラビニュ 撮影:エンリケ・シャディアック 編集:クリス・ギル
出演:ロバート・カーライル、ローズ・バーン、ジェレミー・レナー、ハロルド・ペリノー
キャサリン・マコーマック、マッキントッシュ・マグルトン、イモージェン・プーツ
イドリス・エルバ、アマンダ・ウォーカー、シャヒド・アハメド、エミリー・ビーチャム
ジョージ・A・ロメロ監督が「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」で確立した、
モダンゾンビ=襲われることで増殖するゾンビという設定は本当に優れていた。
元々のブードゥ教の「使役される死体」というものだった意思の無い「ゾンビ」に、
単に起き上がるだけでなく、本能的に人を襲い(それも人肉を食らうために!!)
襲われたものは彼らと同類になるという吸血鬼のような感染性を加えたことは
その後のエピゴーネンの多さをみても素晴らしくも恐ろしい設定だと思う。
一緒にいた親しい人物が、戦った仲間が、次の瞬間には「奴ら」と同類になってしまう・・・
その怖さ、やりきれなさ、絶望感というものに(吸血鬼映画でもそうだが)俺は物凄く惹かれてしまうのだ。
そんな「感染するゾンビ」の亜種であり、正確には死人が甦るのではないのだが
ロメロゾンビ亜流としてはなかなかの出来で大好きだったホラー「28日後...」の続編をやっと観た。
感染すると狂ったような激しい怒りに支配され、見境なく他の人間を襲いだす「レイジウィルス」。
死んで甦るわけではないのだが、その感染者の凶暴さ、理性の無さはある意味ゾンビより性質が悪い。
血を吐き、激しく叫び唸りながら、全力疾走で「ただ襲う」ために迫ってくるんだから怖い怖い。
空気感染はしないので、とにかく襲われたら最後「奴ら」と同類になるしかないのだ。
ウイルス発生から難を逃れ、田舎の一軒家に老夫婦他数人と立て籠っていたドンとアリスの夫妻。
しかし、外から逃げてきた少年を助け入れたことで、感染者たちの侵入を許し襲われてしまう。
その混乱の中、恐怖からドンはアリスを「見殺し」にする形で一人で逃げ出すのだった。
ウイルス感染発生から5週後に最後の感染者が餓死し、その後米軍が派遣され、
厳重な監視下の居住地ではるが、再建が始まった「28週後」のロンドン。
海外旅行中で難を逃れたドンとアリスの子供たち、タミーとアンディ姉弟も無事帰国しドンと再会する。
軍の監視下に置かれている第1街区で新たな生活となるが、その場に母アリスの姿はない。
母との思い出の品を取り戻すため監視を抜けて我が家へと向かう姉弟。
するとそこには思いがけず生きていたアリスが!
彼女はウイルスに感染したが発症していないキャリアだと判明、ワクチン開発への期待が膨らむが…。
前作の監督ダニー・ボイルは製作総指揮にまわり、フアン・カルロス・フレスナディージョが監督だが
ところどころ炸裂するようなスタイリッシュな映像と、前作以上に大規模になってるスケール感、
そしてパワーアップしたゴア描写(ヘリコプター~!!)はなかなかなれど、
「物語」としては前作の方が面白かったというのが正直なところかな。
前作以上に軍の冷酷さがクローズアップされ、ヒンヤリとした感触が付いて回るのはいい。
とにかく感染者を出さず、もし出たら「殲滅する」のが彼らの役目なのだが
感染していないものまで十把一絡げで処分!ってのは良くある話ではあるが、たまったもんじゃない。
生き残った連中が、感染者と軍の両方の追撃をかわしながら・・・ってのでも充分ドラマティックだし
実際、軍の方針に従えない兵士も加えてのサバイバルでストーリー自体は進むのだが、
ドラマはその中で完結しないというか、その連帯の方には行かないのが歯がゆい感じなのだ。
まあ、結局は主役の一家・・・母を見殺しにした父、その父が・・・という
子供らにしてみりゃ辛い現実を抱えた話がズシンとあるので仕方ないと言えばそうなのだが、
そもそも彼らが規則を破って自宅に戻らねば、こうもエライことにはならなかったってのも事実で(笑)、
巻き添え食っちゃったようなその他の人のこと考えると、複雑な気分になるストーリーではあるのだ。
個人的にはドンとアリスの関係、特に冒頭のシーンなんか本当にいい感じだったんで
子供たちのことはともかく、2人の絡みをもっとしっかりドラマの基本にしても良かったと思うのだ。
恐怖に負けた男と置いて行かれた女。これだけで充分面白いと思うんだがなあ。
とにかく冒頭の「絶望感」ってのが凄く好きで、復興してそれがトーンダウン、
しかしまた中盤から感染に軍の怖さもプラスされてが再び非常に前面に出てきていいのだが
子供が出てきちゃうと「希望」の光がどうしても射す訳で。それが唯一気に入らないとこなのかな。
俺に悪意をくれ。絶望をくれ。そんな気分を十二分には満たしてくれなかったが、まあ好きな1本だ。