あれは昭和三十年代で、東京タワーの完成というエポックもあり、ノスタルジック
な気分に観客をさせ、「古きよき時代」と・・・。それと時を同じくしてアメリカ
で流行りだしたのが、電気ギターのグループによる演奏・・・。
特にベンチャーズの出現が、エレキ・ブームを日本にも巻き起こしていくことになる。
そのベンチャーズの結成メンバーのボブ・ボーグルが先日亡くなった。
時代の流れはセピア色へと何もかもを変えていくが、日本に起こった「エレキ・ブーム」
の火付け役は「ベンチャーズ」で、それにいたく感動して「青春記」として、日本の
片田舎の高校生の、当時の憧れやら暮らし振りを小説にしたためたのが「青春デンデケデ
ケデケ」で、後に同名で映画化されたのが、下のもの。

「青春デンデケデケデケ」 九十三年公開作
監督が大林宣彦だけに、尾道三部作と同じ延長線上の「青春グラフティー」もの
として、多感な時期の若者を描くのはお手の物である。
ただ違うのが、ここでの主役は音楽、それの魅力に取り付かれた若者達の孤軍奮闘
ぶりを、爽やかに描いている。
そう、青春ものの可笑しくも爽やかな行動と、当時、エレキに寄せる大人達との軋轢
を活写して見せれば、同年代の人々にはとても共感出来る出来事が散りばめられて、
「あんなだったなぁ」の共通認識が生まれる。
これが四国の片田舎の「観音寺」が舞台になっていても、日本のどこでも同じような
高校生がいて、同じようにエレキに痺れ、校則ぎりぎりの攻防で「バンド」を続けて
いた・・・。だけにいまだにその当時の輝きが失われることなく、いやそこに年齢を
経た哀しみが加われば、「あの楽しかった時を再び・・・」で、オヤジ・バンドがあち
こちに出来上がり、あの当時痺れた「テケテケテケ」を繰り広げる・・・。
そしてここで忘れてならないのが、ノスタルジィーに浸るだけでなく、この当時痺れた
連中の中から、「音楽を志す」者が出て、「猿真似」と揶揄されようとも「より高みに」
たどり着こうと、偏見とも戦いながら、今現在へと至れば、今ではとんと違和感のない
音楽の形態となってくるし、吸収したものが開花して「Jポップ」となって、海外まで
広まっていく・・・。
だけにこの映画で描かれるエレキに「憧れ」を持つ若者達が、日本における先駆者と
なってくる。
サブ・カルチャーにも歴史はあり、無名でも「好き」という人間行動が、後にはそれ
なり の成果を見せるもの・・・。
そしてそこに、自分が生きた証しを記すことが・・・。
このところ批判を浴びる「メディア・センター」の予算だが、あの当時、国が積極的
に側 面から動い ていたら、もっと早くにオリジナルも出現したかも・・・。
反対意見に「国が関与云々」があるが、金のない若者が精一杯、情熱だけで突っ走っ
た結 果が今に繋がっているを考えれば、国家転覆やら日本国民主権に異議を唱える
人でなかった ら、そうそう目くじら立てるものではない。
金のため「才能」がありながら、その道に進めなかった若者もそこら中にいたし、悔
やまれる こともあるからだ・・・。広島に「過ちは繰り返しませんから」の主語の
ない意味不明の碑 にあるように、日本文化としての媒体は、そっと側面から国が援
助しても良いのではないか。 と、家庭の事情で音楽を続けられなかった知り合いを
思えば、この映画の青年達とダブって来る。

にしても「ベンチャーズ」の出現が、劇的に変えたものは音楽だけでなく、価値観も
変えていっ たのではないだろうか・・・。
「パイプライン」 ベンチャーズ
今にして見れば、この音はさほどだが、あの当時はラジオから流れれば、
耳をそばだてて・・・。
「急がば回れ」 ベンチャーズ
ベンチャーズのデビュー曲、リードを取るのは先日亡くなったボブ・・・。
ベンチャーズ結成当時、他の職業を持ち、「好き」でエレキ・ギターを奏でていた
連中が・・・、当時のフィルムを見ていると、この昔のテレビのやり方だけに、
表情に笑いがないのが、とっても「微笑ましい」
爆発的にエレキ・サウンドが世界に広まっていけば、他にもバンドは生まれる。
「太陽の彼方に」 アストロノーツ
この曲は、日本では歌詞をつけて歌われていたもの。
サーフィン・サウンドとして「ビーチ・ボーイズ」と同じと・・・。
「乗ってけ、乗ってけ、サーフィン・・・」とか、日本語だと「波に乗れない」
感じもあるのだけれど・・・。
「空の終列車」 スプートニクス
スウェーデンのバンドは、当時のソ連のロケットからバンド名をつけたくらいで、
独特のサウンドにロシア民謡をくっつけるという手法で、「霧のカレリア」「モ
スクワの灯」な んて、日本人の心情にピタリ来るもので人気を博していた。
で、それを貼り付けずに「空の終列車」にしたのは、メンバーが動いているのも、
そして 個人的にこちらの方が、好きだからです。
「春がいっぱい」 シャドーズ
エレキに熱狂した若者の少し遅れてバンドをやり始めた人々、第二世代と
いっていい人達の、熱い眼差しを集めたのが この「シャドーズ」、イギ
リスらしい繊細な音だしとメロディアスな曲調が好まれ アマチャア・バ
ンドでコピーするものが・・・。
ただ当時のテクニックのなさが、笑いを取る演奏なんてことも・・・。

「ブラックサンド・ビーチ」 加山雄三とランチャーズ
映画もエレキ・ブームに便乗すれば、「エレキの若大将」を製作。
もっとも湘南のあんちゃんは、いち早くエレキに痺れ、自分達で曲を作り、
演奏をしていたものだが・・・。
青春デンデケデケデケ デラックス版

¥4,441
といったところで、またのお越しを・・・。