ホラー映画に色香を醸す「バーバラ・スティール」 | 流浪の民の囁き

流浪の民の囁き

映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

イギリス人だが、イタリアに渡って出演した映画が大ヒットし、一躍ホラーの名花と知られる

存在となったのがこのバーバラ・スティールで、ゴシック・ホラーに付き纏う知的でセクシー

という妖艶な女性と、気品がありながら冷徹で殺人も厭わない「悪女」の裏表を併せ持つ

妖しげな女性と、ゴシック・ホラーに必要な歴史に裏打ちされた色彩美にもってこいの美形

で数多の類似の作品に、ただそれ以外の作品となると数少なく、あるレッテルからの脱却に

は、おいそれとは行かないものを物語っている。



流浪の民の囁き-バーバラ


ホラー映画出演前に、「甘い生活」という退廃的人生を描いた作品にも出ているが

あのマストロヤンニの「駄目人間」ぶりに、共演したアヌーク・エーメやアニタ・エグ

バーグといては、脚光を浴びるまでには行かないようで・・・。





流浪の民の囁き


http://www.youtube.com/watch?v=wTC2vRfyVJY&feature=related

「血塗られた墓標」 六十一年公開作


こちらはマリオ・バゥアー監督作品。

バーバラの妖しくも妖艶な肢体が十二分に、映画に彩りを添える。

二役をこなす設定はここから始まったようで、いや脚本が出番を増やしたい

願望もあってか、二役の映画が多いが、この映画が影響しているとも取れる。



流浪の民の囁き


出だしの「魔女裁判」により捉えられ、仮面を取り付けられて殺される。

この出だしの見事な演出で、観客は度肝を抜かれ、映像世界へとすん

なりと好奇と共に引きずり込まれていく・・・。

その美しき顔に、無数の極太の針が出た仮面を被せる・・・。

祟ってやると罵りながら、その顔に打ち付けられる仮面。

整った美しさが無残な針の傷で・・・、観客に想像を膨らませるにはバーバラ

の容姿はうってつけである。


流浪の民の囁き

二世紀が過ぎて、偶然に無念のうちに埋葬された王女の墓を発見する

博士と助手は道に迷い、とある古城へたどり着いた。

そこに現われる美女に、目を奪われる二人とともに、観客もまた・・・。

ここらの演出は見事で、ずるずるといや、興奮気味に観客も引きずり込まれ

甦る「怨念の王女」とか、乗り移りとかに違和感なく受け取れて・・・。

特撮場面の造形も、低予算ながらアイデアで乗り切る。

ドロと化した王女が、目だけくりっとなってびっくり、やがて復活を遂げる。

今見ては、「くすっと」笑ってしまうが、予算をアイデアでカバーする熱意が

伝わってくる。

まして二役を演じるバーバラが、怨念の化身とその被害を被る美女となって

いるから、人の裏表を見ているよう。



流浪の民の囁き-恐怖の振子


http://www.youtube.com/watch?v=uCeUTkX3A_c&feature=PlayList&p=95ADC5153A78B848&playnext=1&playnext_from=PL&index=2

「恐怖の振子」 六十二年公開作


こちらはエドガー・アラン・ポーの原作をロジャー・コーマンが映像化したもの。

映画としての怖さとか低予算でも、それなりに出ているものだが、上の作品と比べたら

バーバラはピンセント・プライス、ジョン・カーの対決の「刺身のつま」的扱いだから、

作品自体は「刃を付けた大振子」の緊迫感等、相当な怖さはあっても、深みがなく

妖艶さとかよりは、エスエムチックな彩りを添える女程度、そこは残念である。




流浪の民の囁き


http://www.youtube.com/watch?v=mSD6gGu_8nI&feature=related

「幽霊屋敷の蛇淫」 六十五年公開作


ゴシック・ホラーの幻想的エロテシズムに彩られた古城での一夜も、「大蔵貢」に

掛かれば、この邦題で男のスケベ心に訴える陳腐な印象をかもし出してしまうが、

これがどうして、「ブラック・マンデー」同様なバーバラの魅力を引き立てている

まぁ、邦題をつけるとき、真剣に映画を見ることなく「古城に未練を残した女の幽霊」

となれば、そりゃ邪淫・・・、いやいや蛇のごとく淫ら・・・。

あながち間違ってはいない「幽霊物語」だが、もうちょっと女の悲恋をクローズ・アップ

させてもいい、女同士の妖しい関係とか、華やかなパーティーとか、日本の幽霊にない

華やかな妖艶さがかもし出されているのに・・・。


流浪の民の囁き


この映画、低予算で短期間撮影で仕上げたものらしいが、それでもゴシック・ホラーの

持つ幻想的エロチシズムが随所に滲んで、バーバラの妖艶な魅力は充分に発揮されている。

その上、妖しいレスビアン的女同士の「湿気のある妖しい雰囲気」とか、ラストのどんでん返し

とか、怖い映画のエッセンスは、存分に注ぎ込まれている。


流浪の民の囁き


http://www.youtube.com/watch?v=B9hnlSC3mSI&feature=player_embedded
「亡霊の復讐」 六十五年未公開作


この映画も、バーバラの魅力でもって成り立つ映画。

殺される姉と妹を演じて、善悪を演じているもの。

もっともマッド・サイエンシストの夫に飽きたらぬ妻の不倫という汚れで殺され、

亡霊となって現われたり、精神病に追い込まれる妹の狂気に苛まれる表情

とか、何よりの恐怖に引きつる演技は健在・・・。


流浪の民の囁き-バーバラ001


もっとも不貞を働いた妻と、財産を狙う夫と家政婦への復讐って、

矛盾する動機を抱えたまま、そこに違和感を覚えると「逆恨み」

とも取れてしまうが、二役の苛めに苛まれる妹役も加味すると

やはり、バーバラに頼った、いや当て込んだ映画とは、こんなもの

という感想も出て来る・・・。



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http://www.youtube.com/watch?v=ZyHQEG9Qz50&feature=related

「ヒッチコック博士の恐ろしい秘密」 六十二年未公開作


狂気の夫に苛まれる新妻役らしい・・・。  未見。




流浪の民の囁き


ここらまでは、その妖艶な表情と、苛められ恐れおののく表情に

惹き付けられる魅力が漂い、なんともその大きな目を見開く表情は

ホラーに欠かせないものと認識出来る・・・。



流浪の民の囁き


http://www.youtube.com/watch?v=kMYSOsyBwcM&feature=player_embedded
「ゴースト」 六十三年未公開作


上の「ヒッチコック博士」の続編的なもの・・・。 未見。

流浪の民の囁き


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http://www.youtube.com/watch?v=54GI1yiYoEc&feature=related

「テラー・クリチャー・フロム・グレーブ」 六十五年未公開作


ゾンビものらしく思わせぶりな演出のみの・・・。といっても未見です。



流浪の民の囁き


海外サイトで拾ったものだが、ヌードも披露したのだろうか。


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流浪の民の囁き


http://www.youtube.com/watch?v=r6PI13Tus8U&feature=related

「悪魔の宴」 六十八年未公開作


往年のホラー俳優を使った、当時大流行のゴーゴー・ムービののりで

被り物をしているバーバラ、幻覚から生み出される悪魔・・・。

その容姿が下のものだが、これって誰でも、いや誰だか分からない。

何もバーバラでなくとも良かった配役・・・。



流浪の民の囁き


あのアーネスト・ボーグナインも羊の悪魔張りに、被り物をしていたが

あちらではこういった滑稽な被り物でも恐怖を感じるのだろうか。



流浪の民の囁き

ホラーの世界も、スプラッタものへと、より残虐で生々しい描写へと・・・。

にしても、クリストファ・リー、ボーリス・カーロフを当て込んで、その上

バーバラは被り物をさせられて・・・。

幻聴・幻覚、そして悪魔払いに悪魔の創造図は、やはり滑稽である。


にしてもホラーで有名になっても、その他の作品には恵まれないのは

なんだか・・・、この後も「ピラニア」や後に「羊たちの沈黙」を監督する

ジョナサン・デミの初監督作品に出ているが、それらは少々がっかりさせ

られるものばかりで、なんとも時の経過は恐ろしい・・・。


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